第2話 初めてのスキル
マークは俺と同じように裏切られて大怪我を負ったんだな。
まずは状況を把握だ。
片腕は千切れ、足の骨は折られ、片目も見えない。
まさに満身創痍だ。
薄目で俺をこんなにしたオークを観察する。
マークから千切った腕をむしゃむしゃ食ってやがる。
まずはステータスだ。
「ステータス」
俺は小声で呟いた。
──────────────
名前:マーク(ヒロシ・ザセキ)
魔力:124/124
攻撃:18
防御:15
知力:20
器用:22
瞬発:17
スキル:記憶 スプレッドシート
──────────────
マークの知識によれば魔力は100が平均だ。
パラメーターも20が平均。
マークは平凡だったようだ。
記憶スキルはマークの物でスプレッドシートが俺のスキルだ。
記憶スキルがあったので座学はマークが学園でトップ。
それが原因でザケルに目を付けられたらしい。
とりあえず、やれる事をやってみる。
「スプレッドシート」
脳内に能力が展開された。
│A│B│C│D│E│F│
─+─+─+─+─+─+─+
1│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
2│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
3│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
4│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
5│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
6│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
まさしく表計算だな。
この表計算は、これだけだと分からない人は全く分からない。
ABCDEF……と並んでいるのが列。
123456……と並んでいるのが行。
│A│B│C│D│E│F│
─+─+─+─+─+─+─+
1│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
2│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
3│ │ │ │あ│ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
4│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
5│ │い│ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
6│ │ │ │ │ │ │
─+─+─+─+─+─+─+
『あ』が入っている所はセルと言うんだがD3と呼ぶ。
『い』はB5だ。
本格的に設定してみるぞ。
│A │B │
─+───+───+
1│魔力 │124│
─+───+───+
魔力という項目を設定したらB1に124という数値が勝手に入った。
普通は自分で124という数値を入れないといけない。
便利なんだか、不便なんだか。
A1は表題だ。
タグの類だと思っておけば良い。
B1は魔力の数値。
ちなみにこうしても良い。
│A │
─+───+
1│魔力 │
─+───+
2│124│
─+───+
さて、治療だ。
│A │B │
─+────+───+
1│使用魔力│100│
─+────+───+
2│回復魔法│=B1│
─+────+───+
これでどうだ。
B2にある数式の説明をすると、『B2=B1』だから『B2=100』になる。
回復魔法が実行され、痛みがさっきよりましになった。
血が止まったが、完治には程遠い。
痛みの原因であるオークと俺の目があった。
俺が呼吸しているのが分かったに違いない。
オークは俺の千切れた腕を食べながら、なんだこいつまだ生きているのかという目で見ている。
駄目だ、死んだな。
もう詰みだろ。
いいや、償いをするんだ。
俺と同じ報われぬ魂を救うんだ。
頑張れよ俺。
魔力はもう24しかない。
それがなんだ。
足掻いてやる。
│A │B │
─+────+───+
1│使用魔力│ 1│
─+────+───+
2│火魔法 │=B1│
─+────+───+
魔法が実行され蝋燭ほどの炎が出て消える。
これじゃ飛ばないのか。
じゃこうだ。
│A │B │
─+────+───────+
1│使用魔力│ 10│
─+────+───────+
2│火魔法 │=B1*0.8│
─+────+───────+
3│魔法速度│=B1*0.2│
─+────+───────+
握り拳ほどの火球がのろのろと飛んで行く。
距離が近い事もあって、オークの胴体に当たり少し焦がした。
「ぐおぉぉぉ」
オークが少し怯んでいる。
今のうちに打開策を。
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