第16話 書き取り欄には、じょうしゃとせきさい、と書いてください。漢字がわからなければ、ひらがなでも構いません
ガタン、カーン…
後部座席で我が見たものは、沢畠がクランクの2個目が曲がり切れず、黄色いポールに接触している場面だった。
縁石に乗り上げたとしても、そのままバックで仕切り直せば少しの減点で済む。
しかし、ポールに車体が触れてしまうと一発アウトだと、教官から聞いていた。
前田「…はい。そのままバックして続けてください」
沢畠「はい…」
修了検定の筆記のため、夜遅くまで勉強し、朝4時から勉強を始めていた沢畠は、睡眠不足でふらついていた。
本来なら当たらなかったクランクのポールに、当たってしまったのだ。
(これではもう、このあとノーミスでも不合格になるだろう)
(筆記の対策で前日から頑張ったとしても、実技が合格しなければ次には進めない)
(この世界線では不合格で2日遅れることになる)
「|時間の飛躍(リープオブタイム)!」
ブワッ
世界が暗転し、時間がゆっくりと動き出す。
ポール接触後の世界線から、巻き戻すようにクランク突入前まで動きが戻った。
前田「次、1番右折でクランク入ってください」
(はぁ、はぁ。たった数十秒を戻すだけで、これだけ人間の体に負担がかかるのか)
(ウリエル…君が…)
「さ、沢畠、クランクはゆっくり慎重に。おちついて」
沢畠「!? …はい」
うつらうつらしていた沢畠がハッと気づいたように意識を取り戻し、ハンドルを握る。
2個目のクランクはポールに接触することなく、抜ける事ができた。
(これで、一人の男の悲しみを救ったのだな…)
気持ち悪さと吐き気、強烈な睡魔のような状態に陥った。ふらついて倒れそうだが、必死に体を支えている。
前田「はい、2番に寄せて停車してください」
前田「エンジン止めて下さい。はい、実技は以上になります。受付で合格発表するので、待っていてください」
沢畠「ありがとうございました」
「無事に合格できそうだな」
沢畠「途中に意識が飛びそうになって、織江さんの一言で助かりました。ありがとうございます」
「なに、気にするな。悲しい別の未来は見たくなかったのでな」
待つこと20分。
前田「はい、3人合格です。次に筆記試験に入ります。2階の第4教室で待っていてください」
「まあ当然だな」
11時前。
前田「それでは筆記試験を始めます。時間は30分。25分経過するまでは退室できます」
我は昨日今日で満点様というアプリを使って何度も練習してきた。苦手な問題も、似た問題を解いて対策した。あとは集中力を保って30分やりきるだけだ。
前田「書き取り欄には、じょうしゃとせきさい、と書いてください。漢字がわからなければ、ひらがなでも構いません。右の問題番号枠には、先ほどお渡しした問題の左上の番号を転記してください」
前田「それでは始めてください。11時2分開始ですので、退室は27分まで、テスト修了は32分となります」
ペラリ…
(ん?)
5. 車に乗って帰る友人に、お酒をすすめた
13. 運転に自信があったので、運転規則に従わなくてもよい
過去2回の模試よりも、難易度が下がっていないか!?
合宿免許卒業まで、あと8日
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