掌編小説・『大晦日』

夢美瑠瑠

掌編小説・『大晦日』

(これは、2019年の12月31日にアメブロに投稿したものです)


掌編小説・『大晦日』



大晦日のカウントダウンが始まっていた。


 人々は声高らかに、寧ろ何も考えずに、熱狂祝賀ムードにシンクロして、数字の連呼に唱和していた。


 一見平和な、晴れがましい光景だった。


「フアイブ、フォー、スリー、ツー…」


 花火が打ち上げられるのを待ち構えていた。


 が、この時に、例の「終末時計」が、この「カウントダウン」にシンクロし始めているのを、誰も気が付かなかった。

 これがいわゆる「シンクロニシティ」の実例かもしれなかった。

「…ワン、ゼロ!」


 人々の歓声を打ち消すようにして、「終末の音」が響き始めた。

 全てがブラックアウトして、破局が訪れ、巷は阿鼻叫喚の様相を呈し始めた。

 「新年」がどんどん「感染」していくとともに破滅の連鎖が地球上を覆いつくして、やがて完全に人類は死滅した。


 癌細胞は切除されたのだ。


 しかし後には生き物たちの楽園が再構築されるはずだった…



<了>

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