第24話「狙いは末尾33だよ?」

ユニバースⅢは、3月3日が年一の特日です。太一(たいち)くんは、入場番号13番で入店しました。狙うは、バジリスク絆2です。


恵那(えな)博士は57番で入店です。狙いは、ファンキージャグラー2です。


2人とも角台、あるいは末尾3の台を狙います。また、絆2、ファンキージャグラー2ともに、末尾33の台が含まれます。3月3日だから、末尾3、33を狙う。そういう作戦です。


太一くんがバジリスク絆2の島に向かうと、633番台は既にスマホが置かれて、台確保済でした。太一くんは、踵を返し、すぐに角台の636番台に座り、ユニメモを開始し、博士の入場を待ちました。


博士は、絆2の角台に太一くんが座っているのを横目で確認しつつ、ジャグラーコーナーに向かいました。マイジャグラー全8台は埋まり、既にブン回し大勢に入っています。そして、狙いのファンキージャグラー733番台を確保できました。店員さんがファンキー寄りに立っているように思えた気がしました。


博士も下皿にスマホを置き、太一くんと合流しました。残りの入場が続いてますが、博士と太一くんは、それぞれのコーナーを眺めます。絆2、番長ゼロなどのAT機人気機種のコーナーは満席です。


ジャグラーコーナーは、マイジャグラー5、ファンキージャグラー2は満席ですが、Sアイムジャグラーは、まだ空席がありました。バラエティーも、中央通路寄りの台は埋まってましたが、けっこう空き台があります。5スロコーナーは、スカスカです。3月3日でも、バラエティーは期待できないというのは、バレているのかもしれません。


4円パチンココーナーも軽く確認すると、エヴァンゲリオン15が満席になってました。抽選入場した人で、パチンコに向かった人も、そこそこいるのかもしれません。


状況を確認して、二人はそれぞれのパチスロに向かいます。太一くんの隣の台は、すでにバジリスクチャンス(BC)が当たっていました。


博士は、ファンキージャグラー2の確保台に座りました。慎重に1ゲーム目を回します。ガックンしたように思えます。ガックンして、設定変更期待度が高まって良かったと思ったのと思ったのと同時に、太一くんと合流する前に、両隣のガックンを確認しておけば良かったと思いました。


改めて両隣の人を確認すると、カチカチ君を使っています。ガックンしたかは見ていませんが、ブドウなどをカウントする人が打っているということは、おそらく、ガックンしたのじゃないかと思われます。


「ジャグラーは目の前の数字よりも根拠」


博士の好きなパチスロ演者の言葉を思い出して、遊技を開始します。会員カードを入れて、再プレイ可能の50枚を払い出します。最初の50枚でボーナスが当たることはなく、福沢諭吉さんの登場です。


「さらば諭吉」


パチスロユーチューバーの言葉を思い出しながら、サンドに1万円札を吸い込ませました。貸出ボタンを押して、本日2000円目の投資が始まります。


一方、太一くんもバジリスク絆2の遊技を開始しました。小役のカウントなどはユニメモがやってくれますが、BC当選ごとの推定される状態(通常・高確・超高確)と、当選契機(チャンスリプレイ、強チェリーなど)をスマホにメモしました。


何よりも大事なのは、通常時のモードアップです。設定6であれば、チャンス目以外の外れでもモードアップ抽選をしています。だから、チャンス目を見逃さないように注意して遊技しています。


ジャグラーは、いわゆる設定示唆演出はありません。バジリスク絆2は、設定を特定する演出があります。しかし、どちらも最初の800ゲーム程度では、設定推測はできない機種だと、博士と太一くんは考えます。


「さらば諭吉」


太一くんが最初の有利区間を遊技している間に、博士は諭吉2枚目を投入しました。貯玉50枚と1万円分の460枚が消えました。46枚貸しは、野口が溶けるのが早いな……と1000円46枚スロの怖さを久しぶりに体感しました。


カチカチ君とデータ機の数字を見比べて、ブドウ確率を確認しますが、まだ判断できる数値ではありません。周辺の台を確認します。それぞれボーナスを引いていますが、まだ開始500ゲーム弱なので飛び抜けた台はありません。ただ、ノーボーナスなのは博士だけでした。


「投資2万円を越すと、人は狂い始める」


博士が常々思っていることです。一万円が溶けた状態は、狂気まで50%と言えるかもしれません。気分転換も兼ねて、スロットコーナーの状況を見て回ることにしました。


一時間程度では、まだ状況は分かりません。ただ、ジャグラーコーナーでの一番のヒキ弱は、博士かもしれません。バラエティにも稼働がついてきています。メイン機種が並ぶAT機コーナーは、太一くんも含めてフル稼働の状態です。絆2や番長ゼロをブン回している様子は、5号機時代と遜色ないように思えます。


エヴァンゲリオン15の島を回って、景品カウンターの前を横切り、絆2の角台に座っている太一くんに話しかけました。


「調子良さそうだね」


「あ、博士。そうですね。今のところBTはハマってないですね」


太一くんは、ATであるBTを消化中でした。


「博士はどうですか?」


「投資50枚と一万円でノーボーナス。厳しいね」


「あちゃー。でもまだ。投資510枚ってことですよね。僕も投資6000円分なんで、そんなに変わりませんね」


投資枚数で言えば大きな差はありませんが、博士は一度も大当たりを引いてないので、精神的な部分は大きく違いました。


「まあ、まだ全体の傾向とか見えないし、自分の読み筋を信じて、もうちょっと頑張ってみるよ」


「うす」


状況確認を終え、博士は自分の台に戻り、現金投資1万1000円目を開始しました。6号機ジャグラーのビッグボーナスは約250枚。もう1ビッグで取り返せない領域になってます。できればそろそろ持ち玉遊技をしたい。レギュラーでも良いから、とにかく当たってほしい。そんな風に思って、レバーを叩きます。


「さらば諭吉」


残念ながら投資2万円と50枚でボーナスは当たりませんでした。三人目の諭吉をサンドに吸い込ませ、博士は思いました。投資枚数は970枚。開始753ゲームでノーボーナス。ジャグラーを打っていれば起こりうるハマりですが、設定1でも合算は180分の1くらい。仮に眼の前の台が設定1だとしても、4倍ハマりくらいしています。だとしても、なぜ3月3日の今日なのか?博士の頭の中は、期待値と関係のないことが駆け巡ります。貸出ボタンを押すか押さないか迷っていると、太一くんがやってきました。


「どうですか博士。あっ……」


太一くんはノーボーナスのデータ機を見て、気まずい空気が流れます。


「いやー…なかなか、厳しいね」


博士の声はかすれていました。


「ちょっと、店の外で作戦会議をしましょう」


太一くんは、下皿に博士のカチカチ君を移動させて、腕を引っ張って、店の外に出ました。外は晴れていて、店内の濃密なパチンコ・パチスロの空気とは別世界のようでした。


「状況はどうだい?」


外の空気を吸って、博士は冷静さを取り戻したようです。


「222人撃破が出たので設定2以上は濃厚になりました」


「なるほど。今日であることを考えると期待できるね」


「博士はキツそうですね?」


「そうだね。とにかくペカらない。ブドウは、悪くないんだけど、まだ押し引きに使えるほどの試行数じゃないね」


「店内の傾向はどうですか?絆2は、僕の台も含めて、こぜ6の台は分からないですね。朝イチ座った人が台移動してましたが、すぐに埋まりましたね」


「ジャグラーも、まだ分からないね。ひき強の人はいるけど、飛び抜けた台もないような気がするし、末尾3や特定末尾が強い気もしないね。そして、私の台は全然ペカらない」


「僕は222人が出たので続けますが、博士は状況の変化待ちで食事休憩を挟んだらどうですか?」


『状況の変化待ち』という言葉は、博士と太一くんが尊敬するパチスロ演者がよく使う言葉です。博士は末尾33を狙っていましたが、他の末尾33台が強いのかどうか?博士のペカらないジャグラーを続けるか、辞めるか、目の前の数値以外の情報を得るために、一度遊技を止めて、他の台が動くのを待つ作戦です。


ユニバースⅢでは、店員さんに食事休憩を伝えると、40分間の台を確保することが出来ます。休憩を伝えないで、長時間台を開けていると、空き台として整理されることがあるので、注意が必要です。


「そうだね。ちょっと早いけど休憩をさせて貰うよ」


博士は733番台に戻り、呼び出しボタンを押しました。店員さんがやってくると、両手を口元に持っていき、ご飯をかっこむようなジェスチャーをしました。店員さんは、その意図を汲み取り「食事休憩は40分ですので、お願いします」と言い、データ機の表示を「休憩中」に切り替えました。


博士は会員カードを抜き取り、併設されているカフェの休憩コーナーに座り、ファンタグレープを飲みました。ジャグラーを打つ時はファンタと決めております。ファンタを飲みながら、データ閲覧サービスのサイトセブンで、ジャグラーのデータを見てみましたが、傾向などは、まだ見えて来ないように思えました。


しかし、冷静さを取り戻すことが出来たのは、太一くんのおかげでしょう。太一くんがいなければ、年一日に狙いのファンキージャグラー2で朝イチ3万円溶かすという作者と同じ羽目になっていたかもしれません。


休憩コーナーで15分休んだ後に、残りの25分は店内のパチスロを見て回ることにしました。末尾3は強いのか?末尾33は強いのか?そのような観点です。


メイン機種、ジャグラー、バラエティ、5スロなどを見て回りますが、末尾3が強いという雰囲気はありません。そして、末尾33はファンキージャグラー2と絆2のみです。そして、絆2の33番台は空き台になってました。博士は当日の履歴を確認しますが、高設定を予感されるそれではなさそうです。


そして、733番台のファンキージャグラー2を見て、この台が空き台になっていたとしたら、自分は打ちたいのか?という観点で見たところ、答えはノーでした。逆に隣台の732番台は調子良くボーナスが当たっていて、空き台になれば打ちたいと思える合算でした。


753ゲームでノーボーナスの台が必ずしも低設定とは限りませんが、末尾3、33の傾向が見えない以上、打ち続ける根拠は弱くなったと言えます。まだ休憩時間は残り5分ほどありましたが、店員さんに休憩終了の意思を伝え、台を解放して、博士は次の台を求めて放浪することにしました。


「しばらく、期待値台を探すか、後ヅモを狙うよ」


博士は、太一くんに伝えました。


「了解です。エナれそうな台を見つけたら、メダル使ってくださいね」


太一くんは、持ちメダルが1000枚以上ありそうです。ユニバースⅢのルールでは、二人まで出玉共有がOKです。


太一くんの絆2は調子がよくて、博士はエナ拾いです。博士は、バラエティコーナーに1台だけある魔法少女まどかマギカ前後編の220ゲームやめの台を見つけました。期待値的にはプラスの台です。


太一くんと相談して、太一くんの出玉を一箱もらいました。600枚弱でしょうか。博士は、本日2台目の台を打ち始めます。


二人の3月3日のパチスロは、まだ始まったばかりです。

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