第21話「今度は朝イチから20スロで甲賀忍法帖を打ちましょう!」

「設定4以上確定演出だね」


太一(たいち)くんがハイエナした甲賀忍法帖の台で、BC中に『444人撃破』の演出が出ました。恵那(えな)博士は『確定』という言葉を使いましたが、雑誌や動画などでは『濃厚』という言葉が使われます。なぜか『確定』という表現を、業界は使わないようです。


「ほ、本当ですか!?」


太一くんは喜びました。人生初のBT。甲賀忍者と伊賀忍者が戦います。甲賀忍者の勝利は、BTシナリオの継続率と、BC、ストックで決まり、勝てば勝つほどにメダルが増え、ストーリーが進行します。12戦目に到達するか、有利区間天井、2400枚の枚数天井に近づけば、エンディングとなります。


博士は、自分の台の通常時を回しながら、「2台並んで4を使うことはあるのか?」と考えます。そして、通常時800Gに達する前に、夕方ステージの赤異色BC中に『222人撃破』の演出が発生しました。


「博士もBTですか?やりましたね」


「魔少年BT」


「222人撃破ってことは、設定2確定ですか?」


「いや、設定2以上が確定だね。2とは限らないよ」


「そうですか。魔少年BTってなんですか?」


「え?ああ、うん。なんでもないんだ」


博士は、モゴモゴいいました。太一くんのBTは、BCを引かなくても継続率だけで続いているようなので、もしかしたら、良いシナリオが選ばれているのかもしれません。


博士の台は、BCを引きながら続いていますが、プラス100枚程度になったところで終了しました。BT終了画面でサブ液晶をタッチすると、朧が「何かが起こる予感がします」と言いました。次回通常時のモード示唆ですが、良いモードが選ばれているかもしれません。


太一くんもBTを伸ばしていますし、閉店時間まで余裕もありますし、設定2以上は確定しているので、今後の勉強のために、博士は続行することにしました。


一方、太一くんはBTを順調に伸ばして、12戦目の途中で、筐体中央の約物がバキーンと光りました。


「な、なんですか!?」


「エンディングだね。おめでとう」


天井からのBTだったので、有利区間1500Gの天井が来たようです。エンディング専用のアニメーション演出が始まり、甲賀忍法帖の結末が描かれます。初めて見る太一くんは、泣いてしまいましたし、博士も涙ぐんで見ていました。


BT終了画面となり、出玉は1500枚弱で、約1100枚ほどプラスです。サブ液晶をタッチすると、甲賀弦之介が「怪しき気配じゃ」と言いました。こちらも、良いモードの示唆です。設定4以上も出ていますし、博士の勧めで続行することにしました。


その間に、博士もBTに突入して、追加でプラス300枚程度の出玉を得て、サブ液晶で甲賀弦之介が「出立の準備じゃ」とデフォルト台詞が出たので、そこで終了としました。博士が打つ前までの履歴も参照して、設定2だろうという結論を得ました。


太一くんは、続行後にすぐにBTに突入して、BCなども絡めて順調に伸ばしていました。博士は、他コーナーの様子見てました。BTはエンディングまでは行きませんでしたが、さらにプラス1300枚弱となりました。これで終了かと思われましたが、一応、サブ液晶をタッチしました。


「怪しき気配じゃ」


時間は21時10分でした。有利区間1500G、通常時800Gなどを考えると、閉店時間とギリギリのタイミングと思えましたが、続行することにしました。すると、BTにはすぐに突入し、あれよあれよと伸びていきました。差枚は完全にプラスです。後は、閉店時間までに取りきれるかの勝負となりました。


朧チャンスから祝言モードに突入し、13戦目は越えて、ストックの数は分かりません。とにかく後は、ぶん回すだけです。約物がバキーンと発光し、本日2度目のエンディングです。2400枚完走です。


「良い話ですけど、1日2回見るのは、なんか、あれですね」


22時35分にエンディングは終了し、サブ液晶を押すと「出立」でした。大慌てでメダルを店員さんに渡しました。最終的に二人で約6900枚でした。投資は貯玉から600枚。差枚は6300枚。博士は、貯玉しようかな?と思いましたが、さすがに店員さんがヒくのじゃないか?と思い、交換しました。大景品6個、小景品2個でした。端玉は貯玉しました。


ホタルの光が流れる店内を出て、景品交換所の箱の中に特殊景品を入れます。そうすると、しわしわの手が諭吉と小銭を渡してくれました。博士は、この手のことを「天使の手」と心の中で呼んでおります。


「今日はノリ打ちってことだったから、折半で良いかい?甲賀忍法帖は太一くんが頑張ってくれたけど」


「期待値の多い方の台を譲ってくれたのは博士ですし、ノリ打ちですからね。はんぶんこしましょう」


博士は、財布から樋口を一枚出し、諭吉と一緒に太一くんに渡し、その上に200円を置きました。すると太一くんは、野口を3人博士に渡しました。


「投資の600枚は、博士の貯玉ですからね」


出会った頃の太一くんは、お金の計算も曖昧だったのですが、パチンコ・パチスロの期待値を追っている中で、しっかりと計算をするようになりました。


「勝つって嬉しいですね。でも、これが20スロだったら……」


「そうだね。それを考えてしまうね」


「アイムジャグラーに比べると、甲賀忍法帖は速いですね」


「まあ、太一くんのヒキがやばかったよ」


二人は、身体に残る熱をじんわりと感じながら、ユニバースⅢの駐車場を後にしました。設定4以上濃厚演出が出たり得る物がありました。5スロ推し日に設定4を使う。店内の看板告知には意味がある。二人は知りました。


パチスロが終わった後に、わいわいと話しながら帰る。博士の夢が、一つ叶いました。スロ友、博士がずっと欲しかったものです。


明日は、日曜日なので、博士の家で打ち上げをすることにしました。次回、宴回……かもしれませんね。

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