第20話「甲賀忍法帖の一過性の期待値だよ?」

「アイムジャグラーはノーマルタイプ。この甲賀忍法帖は、ATタイプ。期待値もあるから、この2台を打って帰ろうか?」


5スロコーナーに2台並ぶ、山田風太郎原作の小説『甲賀忍法帖』をコミカライズし、さらにアニメ化された作品を題材としたパチスロ台の前で、恵那(えな)博士は、太一(たいち)くんに言いました。


「期待値ってことは、天井が近いということですか?」


天井とは、パチンコの遊タイムと同様の仕組みですが、パチスロの天井は機種によって様々です。


「そうだね。詳しい説明はまたするけど、この台は有利区間521G経過でBC3スルー。こっちの台は、有利区間353G経過でBC2スルー。どっちも期待値はプラスだから、今後の勉強のために打って帰ろうよ」


「せっかく勝ってるのに、メダル減っちゃわないですか?」


「まあ、運が悪かったら二人で700枚くらい減るかな?運が悪かったらね」


「期待値プラスってことは、勝つ可能性の方が高いんですよね?」


「そうだね。ヒキが強ければ1000枚くらい増えるかも?」


「……やりますか」


勝っている間に帰りたいというのは、遊技者の永遠のテーマと言えるかもしれません。しかし、勝っていようが負けていようが、期待値を追うってことが、長期的に見て勝ちに繋がるという意見が支配的です。


太一くんは、初めて甲賀忍法帖の台を遊技します。ジャグラーと違い通常時に目押しは必要ありません。BCや、BTと言われるATに当たった場合は、押し順ナビに従う必要がありますが、ジャグラーと違って、目押しができなくても損しない仕様なので、パチスロ初心者でも楽しめる台だと思います。


博士と太一くんは、それぞれ台に座りました。ノリ打ちしていますが、太一くんに有利区間521Gの台、天井に近い方の台を譲りました。


甲賀忍法帖では、通常時有利区間800G経過で、ATであるBTに当選期待度の高い同色BCに当選します。天井期待値は200G程度からプラスなのですが、博士は400Gぐらいから狙っています。


今回は、期待値ハイエナの意味もありますが、末尾5の日に甲賀忍法帖に設定は使われるのか?という調査でもあります。もしも、高設定が期待できるなら、今後5の日に狙ってみるのも、良いかもしれません。


「ま、巻物が揃いましたよ!」


初めて打つ甲賀忍法帖に太一くんは大興奮。ジャグラーと違い、液晶表示によるアニメーション演出が行われます。残念ながら、朧という女性キャラのしゃっくりは止まらなかったようです。太一くんの台は、天井まで約280G。一喜一憂しながら、遊技を続けます。


「しゃっくりは止まらないし、お茶をこぼしまくるし、なんなんですか?この女の人」


太一くんは、巻物で表示されるチャンスリプレイや、チェリーが3つ表示される強チェリーなどを重ねますが、なかなかBCに当選しなくて、イライラします。


「まあまあ、天井までもう少しだから、頑張って」


そんなことを言いながら、博士も遊技を続けていると、夕方ステージでチャンスリプレイを引き、デブが妖艶なくノ一に抱きついた結果、異色BCに当選しました。


「おっ!当たりですか!?」


「そうだね。肝心なのは、BTに入るかだけどね」


BC当選時に状態やモードを参照してBT突入抽選が行われます。非当選であっても、BC15G間にも成立役によって突入抽選が行われます。博士は、弦之助BCを選択しましたが、伊賀忍者を撃破することはできなく、BTは非突入でした。太一くんは残念そうな顔をしましたが、「こんなもんこんなもん」と言いながら、博士も残念でした。


持ちメダルを減らしながら、徐々に天井が近づいてきました。太一くんは、強チェリーを引いた後、夕方ステージに移行し、その後に共通ベルを引きました。そして、薬師寺天膳が登場する吉田宿ステージに移行したのが、有利区間791Gでした。


「これはいいね。良いヒキだよ太一くん」


吉田宿ステージで、内部状態が超高確だったら、その状態で800Gを踏んだら、同色BCからのBT突入が優遇されます。


「ほ、本当ですか!?」


緊張しながら、太一くんは800Gを踏みました。あれだけ止まらなかった朧のしゃっくりが止まり、赤同色BCに当選しました。今回も、弦之助BCを選択します。


「忍者倒せたら、BTなんですよね?」


「そうだね」


15Gの間に、伊賀忍者を倒した人数で期待値が表現されます。1000人撃破できればBT確定です。


伊賀忍者が襲いかかってくる演出が何度も表示され、徐々に撃破人数が増えていきます。4度目の撃破演出には、赤いチャンスアップエフェクトがかかり、甲賀弦之介が忍者の群れを倒しました。そして、液晶には……。


『444人撃破!』


と、表示されました。


「ゾロ目だ!これ、良いヤツですか!?」


太一くんは、博士に聞きました。博士は、スマホのカメラアプリを起ち上げて、太一くんの液晶画面を記念撮影しました。


444人とはどういう意味だったのでしょうか?ヒントは、設定濃厚演出です。

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