第18話「設定判別のためにブドウを数えるんだよ?」
「ブドウを数えればいいんですね!」
初めてのアイムジャグラーを打ち始めた太一(たいち)くん。恵那(えな)博士から手渡されたカチカチ君を手に元気よく言います。
「そうだよ」
「あ!ブドウが揃いました!三つですね!」
「いや、ブドウが3つ並んだのを1回としてカウントすればいいんだよ」
そんな話をしながら、アイムジャグラーを並び打ち。博士の夢が一つ叶いました。後は、結果が出れば、なお良いのですが。
「なかなか、当たりませんね。天井とかもないんですよね」
「そうだね。まあ、仮に設定6だとしても、当たる確率は128分の1くらいだからね。まあ、気長に行こう」
「128ってことは、海物語のアグネスラムの奴よりも重いんですね」
「そうだね。設定6かどうかも、分からないけどね」
アイムジャグラーは、メダル50枚で、だいたい40Gくらい回ります。それぞれ200枚の持ちメダルは、徐々に減っていきます。メダルが減っていくと、博士は寂しい気持ちになります。
「右リールにバーが止まるように狙うんだよ。そうすると、チェリーをこぼさないからね」
「分かりました!」
そうは言いながら、慣れない初めてのパチスロ。バーじゃなくて、7がリール内に止まることもしばしばです。狙ったタイミングで止められてないということです。7がリール内に止まった時は、チェリーをこぼしているかもしれません。また、右リールに7が止まりました。
「あちゃ~、またミスっちゃいました……」
そう言いながら、左リールを押して、ボタンを話した直後のことです。
「ガコッ!」
と音がなり、筐体の右側にあるGoGoランプが『ペカ』りました。ボーナスが当たったのです。太一くんは、突然に鳴った大きな音にビックリして、ぴょんと跳ねました。隣に座っていた博士も、ぴょんと跳ねました。
「あ、当たりました!」
「そうだね。じゃあ、7を揃えよう」
「は、博士やってくださいよ」
「どうしても揃えられない場合は、やってあげるよ」
「分かりました」
太一くんはマックスベットボタンを押して、レバーを叩こうとしたのを、博士が寸前で止めました。
「太一くん、7を揃える時は1ベットだよ?」
ジャグラーは、メダル3枚で1ゲームですが、ボーナスが当選して7図柄を揃える時は、メダル1枚で出来ます。太一くんはマックスベットを押してますが、慌てることなかれ、ペイアウトボタンを押せば3枚が払い戻されるます。その後に改めて、メダルを1枚を入れれば問題ありません。メダルを1枚入れて、改めてレバーを叩きます。
太一くんは、顔を上下に動かして、7を止めようと必死です。リールは何周も回っています。実は約40秒が経過すると、自動でリールは止まってしまうのですが、プレッシャーになるので博士は黙っていました。右リールを止めると、上段に7が止まりました。続いて、中リールにも7が揃いました。あとは、左リールに7とバーの塊を狙えば、ボーナス図柄が揃います。
「えい!」
太一くんは左リールを狙いましたが、タイミングを間違えたのか、ボーナス図柄は枠内に止まりませんでした。が、ブドウが揃い8枚の払い出しがありました。
「もうかったね。じゃあ、もう一度やってみよう」
「……はい」
太一くんは脂汗を流しています。リプレイが揃ったり、2度、3度失敗した後に、なんとか揃えることができました。枠内に7が3つ並びました。
「おめでとう。ビッグボーナス」
「ありがとうございます。レギュラーじゃなくて良かったです」
アイムジャグラーは、約252枚獲得のビッグボーナスと約96枚のレギュラーボーナスで出玉を増やします。それぞれに設定差がありますが、レギュラーボーナスの方が設定1で約439分の1、設定6で約255分の1と設定差が大きいです。ですので、レギュラーボーナスが出現した方が、設定には期待できるのですが、太一くんの人生初ボーナスを祝いました。ファンファーレのようなBGMが流れる中、ボーナスを消化します。最後の払い出しが終わり、BGMも止まりました。
「あ、でも、レギュラーの方が設定差大きいんですよね」
太一くんは言いました。博士は、太一くんに伝えたことが、ちゃんと伝わっていたことが、嬉しかったです。出玉がのまれる前に、ボーナスをひけたので、しばらくは追加投資は必要なさそうです。先に、博士のメダルがなくなりましたから、太一くんの残りのメダルを半分貰いましたが、それもなくなりそうです。
「うーん、仕方がない追加投資か」
博士は再プレイボタンを押して、二人あわせて投資600枚目となるメダルを出しました。その間に、太一くんは、レギュラーボーナスを引いたりして、なんとか持ちメダルで繋いでおりました。
「なかなか、当たりませんね」
太一くんは言いました。博士は、朝一から約300ゲームでノーボーナスです。
「設定1ってことですかね?」
「そうとは限らないよ。約99分の1の海物語のアグネスラムのやつも、遊タイムは通常時299回転で設定されてるだろ?このジャグラーは設定6でも、約130分の1とかだから、300ゲームくらい余裕でハマるよ」
「なるほど」
「分かってるんだけど、当たらないのは辛いね。この200枚で当たって欲しいんだけど……」
博士は、チェリー狙いでトントントンとリールを止めます。右リールにチェリーが止まりました。中リール中段には、バーが止まりました。博士は「うっ」と小さい息をもらした後に、太一くんに話しかけました。
「太一くん、ペカるよ」
太一くんが、博士の方を向いた後に、博士は左リールを止めて、十分に間をとって、台に念を送ったりしてから、ボタンから指を放しました。
ペカ。
「本当だ!?」
博士の予言通りにGoGoランプはペカりました。「パチスロとは、生命の輝く瞬間である」という言葉は、博士が後に世の中に広める言葉ですが、その瞬間が中リール中段にバーが止まった瞬間だったのです。
博士は、メダル1枚を入れて、中リールから7を止めて、ボーナス図柄を揃えました。7、7、バー。レギュラーボーナスです。設定差のあるボーナスですが、博士は、複雑な表情でした。
「なんだかんだで、私は出玉が好きなんだね。設定の安心感よりもね」
「メダル増えたら、楽しいですもんね」
様々なドラマが生まれましたが、まだ開店から1時間もたっておりません。博士と、太一くんのアイムジャグラーは、まだまだ始まったばかりです。
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