第17話「5スロのアイムジャグラーを朝イチからですね!」

末尾5の日の土曜日に恵那(えな)博士と、太一(たいち)くんは、ユニバースⅢにアイムジャグラーを打ちに来ました。5スロです。台が取れなことはないでしょうが、念のために朝イチの入場抽選を受けます。まずは、くじびきの入場券抽選のための整理券をもらいます。もらったのは、二人を含めて全員で5人でした。


「あの人は4円パチンコだね。あの人は、店に入った後でしばらくしたら帰るだろうね。もう一人は分からないけど、狙いがかぶっても、5スロのアイムジャグラーは4台あるから、並んで打てそうだね」


博士は、土日に抽選を受けて入る常連の顔は、なんとなく覚えています。覚えてない人は、5スロコーナーで見た覚えがないので、20スロ狙いじゃないかと博士は予想しますが、5スロの日には、20スロのメイン機種とのレイアウト変更が行われ、普段は20スロでしか打てない台が5スロで打てるので、それを狙っている人かもしれません。


そして、9時30分になり、店員さんが抽選整理券を配りに来ました。スーツを着ているので正社員の方でしょう。


「今日は、5名なので、このまま入場券で良いですか?」


特に反対する人はなくて、なんとなく店の前に着いていた順に入場券が配られました。狙い台が重なりそうな時は、緊張感が走ります。博士は3番、太一くんは4番でした。


「私の方が先だから、着いてきたらいいよ」


「よろしくお願いします。先生」


博士は、前日に用意したメモをスマホで確認したり、ジャグラーの目押しの話をしながら、開店時間の10時を待ちました。店内から、ラジオ体操の音楽が流れ、続いて店員さん達の声だしが始まりました。


「おはようございます!ありがとうございます!おはようございます!」


あと、5分で開店です。


「この数分間が好きなんだ。血が冷えるって言うかさ。狙ってる台がとれるかな?とか、勝てるかな?とか、設定ツモれるかな?とか、色んなことを考えてさ」


博士は、静かに話します。太一くんも、自分のパチスロデビューをワクワクしていました。10時になり、二人で並んで5スロコーナーに向かいました。1番で入場した老人は、4円パチンコの海物語コーナーに着席しました。2番目に入場した人は、パチンココーナー、パチスロコーナーを歩き回ってたようですが、気付かないうちに店の外に出て行ったようです。


3番、4番で入場した博士と太一くんは、5スロのアイムジャグラーに行きました。レイアウト変更ということで、一番の推し機種の小説の甲賀忍法帖のアニメ作品をモチーフとした、あの人気の台が20スロから5スロに1台移動し、計3台となってました。5番で入場した人は、20スロのジャグラーコーナーに着席したようです。


博士は、スマホのメモを見ながら、4台並んだアイムジャグラーの出目を確認しています。


「うん。この台とこの台だけ、出目が変わってるね。太一くん、じゃあ、今日はこの2台を打とう」


博士は、前日夜に5スロのジャグラーの閉店前の出目をメモっていたようです。ジャグラーは、ガックンチェックという設定変更判別があります。出目が変わっているということは、その判別の対策が行われた可能性があると、博士は考えます。角から3、4番目の台を並び打ち。


「じゃあ、とにかく回して行こう。今日は貯玉無制限だから、私の貯玉でやっていこう」


「あざまーす」


博士は、会員カードをサンドに入れ、暗証番号を押しました。「1960」とデジタルが表示されましたが、これはカンスト状態です。博士は、1万枚を越える5スロの貯メダルを持っています。再プレイのボタンを押すと、メダルが200枚ザラザラと出てきて、デジタルの表示は1920となりました。続いて、太一くんの分のメダルも出します。


「メダルは3枚ですよね?」


「そうだよ、マックスベット」


太一くんはメダルを入れ、レバーを叩きました。三列に並んでいるブドウやサイ、7やピエロ、チェリーなどが回りだしました。いよいよ、太一くんのパチスロ人生がスタートしました。博士は、鞄の中から、小さな黒い機械を二つ取り出しました。パチスロデビュー戦、はてさて二人は勝てるでしょうか?

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