第13話「小銭を捨てるなんてすごいバカですね!」
「ちょっと前に小銭を捨てる彼氏の話がネットでバズったのを知っているかい?」
「いや、知らないですね。そんな人いるんですか?」
今日も夕方に少し期待値拾いをしたあと、恵那(えな)博士と太一(たいち)くんは、人生のこととか、パチンコ・パチスロに関して語り合ってました。博士は、小銭が邪魔だから捨てる小金持ちというネットの逸話を話し出しました。
「お金を捨てるって、どこに捨てるんですか?」
「ゴミ箱にだよ」
「うへ。もったいない」
「まあ、ネットの話だから実話かどうかは分からないけどね。それでね、そのゴミ箱が実は、○○に繋がっていたら…?なんて大喜利的な小説を考えたりしたんだけど」
「んー……?北朝鮮とか?」
「実は、祖国に送金してましたって訳か」
その他には、SDGsの妖精がいるとか、子ども食堂につながっているとか、過激派が床下にまで穴を掘って小銭を資金源にしているとか、様々なアイデアが出ましたが、話が脱線していることに気付きました。いや、博士はゴミ箱が何かに繋がっていたら面白いのじゃないか?というアイデアを、誰かに話したかったのかもしれません。
「太一くんは、100円、200円をゴミ箱に捨てることなんて、もちろんないよね?」
「まあ、レシートとか捨ててる時に、間違ってゴミ箱に入ることがありますけど、ちゃんと拾いますよ」
ようやく本来の話に戻ってきました。めちゃくちゃボンボンの東京の売れない芸人が財布がかさばるから、小銭を道端にバラまくなんて話もありましたが、普通の感覚の人なら、お金は捨てないと思います。
「博士の言いたいことは分かりますよ。パチンコ・パチスロだと捨てる人がいるって話ですよね?たまーに、パチンコだと3、4玉残して帰っちゃってる人いますもんね」
「パチスロでも、クレジットを残して帰る人がいるね。見ていると、そもそも払い出しボタンを知らない人もいるみたいだ」
「払い出しボタンってなんですか?」
「自動販売機で言うと、おつりのボタンだね」
「え、それ知らないとどうなるんですか?」
「筐体には最大50枚がクレジットとして入るんだけど、使い切ってから帰ることになるね。20スロなら1000円。5スロなら、250円かな」
「払い出しボタンって、そんなに難しいんですか?」
「いや、メーカーによって様々だけど、難しくはないね。ただ『ここを押すとクレジットが払い出されます』みたいな日本語の説明はしてないかな」
「じゃあ、分かりづらいってことですね」
「そうかもね。ただ、『OUT』とか『PAYOUT』とかは、書いてあるけどね」
「難しいじゃないですか」
クレジットを払い出さないで惰性で使ったり、もしくは残して帰るというのも「小銭を捨てる」と言えるかもしれませんが、博士が話したいのは、また別のことでした。
「まあ、払い出しボタンを知らないってのは、あれだけど、一応パチスロをしていて、その50枚で当たることもあるだろうか、捨てるってのは、ちょっと違うかな」
「そうですね」
「太一くんは、お菓子を捨てたりするかな?」
「捨てませんよ。もったいないですし」
「でも、景品交換所とかには、けっこう捨ててあるね。お菓子」
「ああ、ありますね。端玉のお菓子ですよね、あれ」
「あれも、小銭を捨ててるようなもんだね。ユニバースⅢの特殊景品は200円、1000円、5000円だから、端玉は最大で199円になる。だから、お菓子捨ててる人は、199円分のお菓子を捨ててるのかもしれない」
「もったいないですね。なんで、捨てちゃうかな」
「まあ、食べたくないお菓子はいらないってことだろうけど。太一くん、私の言いたいことは、もう分かるのじゃないかな?」
前置きが長くなりましたが、皆さんも分かるのじゃないかと思います。
「貯玉、ですね」
「そのとおり」
「まあ、そうじゃないかと思ってましたよ。食べないお菓子を貰うよりも、貯玉して次の投資にした方がいいって話ですよね」
「そうだね。貯玉するかしないかで、どれくらい違うか分かるかい?」
「んー…まあ、毎回、100円とか、多くてだいたい200円損するとかですかね?」
「ここ2年の私のパチンコ・パチスロの収支をスプレッドシートでまとめてみたんだけど、2年間で合計232回、貯玉と交換をしていたんだよ」
「だとすると……仮に1回で100円分の端玉を貯玉してとしたら、2年で2万3200円くらいですか」
「貯玉して帰った日も多いけど、仮に232回交換して帰ったとしたら、そうなるね」
出会った頃に比べると、太一くんの計算能力が高まっているように思えて、博士は少し嬉しくなりました。
「1年で1万1600円。うーん、多いような、少ないような?」
「でも、わざわざ1万円捨てる人もいないよね?でも、パチンコ・パチスロだと捨てちゃう人がいるんだよね」
「まあ、雑な人が多いんじゃないですか」
「その雑な人のおかげで勝ててるから、雑な人にも、ありがたい気持ちはあるのだけどね」
雑な人、ばんざい。博士が、今日伝えたかったことは、貯玉の大切さでした。太一くんも、1パチとかでの期待値稼働をしていたので、貯玉の大切さは知っていました。以前、1円パチンコ1万円勝負をした時に、太一くんは会員カードを作っていませんでした。
「なぜ、会員カードを作らなかったのか?」と博士が聞いてみると、「書類に記入するのがめんどくさかったですし、会員カードを作ると、やめられなくなるのじゃないか?と思ったから」だと、太一くんは言いました。
博士が伝えたかったことは、会員カードを作って貯玉するだけで損しなくなる……そんな話でした。これを読まれた方で、会員カードを作ってない方は、すぐに会員カードを作りましょう。博士と太一くんとの、約束ですよ?
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