第五十七話 皇都血戦 33 Side Galeon
耳を劈く稲妻の様に、鉄筋で補強されたコンクリートが爆砕する音が響く。
俺は叩き壊したコンクリートの粉塵煙が晴れぬうちから、煙を突き破って飛び出し、周囲を睥睨する。
「ヒュウ。コイツは壮観だぜ」
左右に陳列される様に、全高凡そ五メテル程の
数えるのも面倒だが、たしかに八十機居ると言われれば、あぁ、そのくれーはいんだろうな。と思う感じだ。
整備をしていたのか、整備兵らしき連中が俺の姿を見つけると、蜘蛛の子を散らすが如く、一目散に逃げ去って行く。
「さて、お仕事お仕事」
俺は手近な起源兵が居並ぶ列に向けて、愛剣に『脆弱』を付与し、胴体の部分で真っ二つにする様に切り払う。
「おおラァァァァ!!」
『脆弱』が十分に機能し、起源兵の装甲はまるでバターに熱したナイフを入れるように、ずっぱりと切断される。
これなら、思ったよりは時間を掛けずにブッ壊せそうだと、心の中で思いながらも、時間が限られているのはわかっている為、手を止めずに次々に破壊していく。
駆動状態にはないからか、爆発も炎上もする気配は無い。
俺の身の丈程もある愛剣は、刃も長い。如何に起源兵が巨体でも、二メテル近くある愛剣の刃で、操縦席周りを裂断されれば、使い物にはならないだろう。
「オラオラオラオラァァァァ!!!!」
刃を振り抜き、次の機体へと一足で跳び、また機体を両断する。これを繰り返し、もはや二十機は破壊した頃。
けたましい発砲音と共に発射された銃弾が俺の太腿を掠り、地面に穴を穿ち突き刺さった。
「出てきやがったか」
「あれが工作員か……!? いや待て『荒獅子』だと……!?」
ハン、一目でバレるたぁ俺も有名になったもんだ。
「あばよ!!」
俺は破壊してきた列と、反対側に鎮座している起源兵を斬りつけ破壊すると、脇目もふらずに一直線に正面の入り口を目指し走り出す。
「逃げたぞ!! 誰か扉を閉めろ!!!」
「ハッ! そこは逃がすな、撃て! の方が良いだろうが」
俺は機甲師団の団員に、皮肉を言いながらもダッシュする。
実際は撃ってくるものと、シャッターの様に上下に開閉する鋼鉄の扉を操作する者と、 二手に分かれていたが。
俺は全力疾走しているにも関わらず、俺の背を狙いそれなりの精度で弾丸が飛んでくる。
ヴェンダー程の腕はねェ様だが、団員全員がこのレベルの狙撃手っていうのは中々のモンだろう。
ま、人間辞めてる様なのばっかしか居ねぇ、紅の黎明の連中からしたら、大した事ねェのかも知れねぇが。
だが、疾走する俺を他所に、俺が入り口を出る前に鋼鉄の扉が、落ち始める。
「チ……間に合いそうにねぇな」
このまま走っても、ギリギリ間に合わない様なタイミングで鉄扉が降りてくる。
「ま、降りても、ぶっ壊しゃあいいだけの話だわなぁ!!」
俺は大剣を前に突き出す様に構え、昔の重騎兵が槍を持って突撃する様に、鉄扉に突撃する。
「『脆弱』ァ!!」
脆弱の異能を剣と身体全身に纏い突撃する。
俺にとっては決め手としている技だ。銀嶺のネーチャンには、簡単に躱されちまったが。
「ブチ爆ぜろコラァァァァ!!!」
奇剣の鋒が分厚い鉄板に突き刺さった瞬間、大口径の砲弾が激突し爆発したかのように、盛大に鉄扉がひしゃげ、大穴が開く。
俺はその勢いのまま走り抜け、殺到する銃弾から逃れる様に、積み上げられたコンテナの裏手に滑り込む。
起源兵を何機ブッ壊したかは、まともには数えちゃいねぇが、二十以上はイケた筈だ。
最低限のノルマは、イケたんじゃねぇか……。
格納庫の方からは慌ただしく、起源兵の駆動音と警報が鳴り出した。
だが、ぶっ壊れた入口扉から最初に飛び出して来たのは、狙撃銃やアサルトライフルを携えた歩兵達だった。
――おそらく、ありゃ俺がブッ壊した起源兵の操者共だろうな。
格納庫を襲撃されりゃ、普通は他の機体もやられねぇ様に、操者は乗り込むだろう。
だが、乗るモンがぶっ壊れたヤツは、生身で戦闘に貢献するしかねぇのが戦争だ。
きょろきょろと、首を動かし俺の姿を探しているであろう歩兵は、突如、音も無く飛来した複数の弾丸に両肩と膝を同時に撃ち抜かれ、銃を落としながら崩れ落ちた。
「……やっぱ、アメぇな。
ヴェンダーはやはり、機甲師団員を殺さず、戦闘不能にしている。
生殺与奪の権限は、常に強者に持たされる。だから、アイツがそういう選択をするってのは、アイツの権利でもある。
――この場での強者は、アイツだからだ。
「荒獅子か……? いや、他に狙撃手がいるぞ!! 相当な腕だ!! 無闇に表に出るな! ゥッ!!?」
警戒を呼び掛ける奴が居たが、ソイツも両肩と両膝を撃ち抜かれ崩れ落ちる。
――相変わらず、エゲツねぇ精度と速射技術だ。それに、いくら紅の黎明で造られた銃が高性能とはいえ、夜間での狙撃でこの精度ってのは、やっぱ異常だ。
「う……ぐ……」
四肢を撃ち抜かれ、地を這う機甲師団員は苦痛の呻きを出しながらも、意識を失ってはいないみてぇだ。
ここに居たら、出撃の邪魔だと理解し、イモ虫みてぇになりながらも、被弾した全員が入り口の前から退避すると、俺がブチ抜いた扉を破壊して起源兵がぞろぞろと出撃してきた。
「……さぁて、これからが、本番ってヤツだな」
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