⑤きゅうくらりん/いよわ


タイトル:きゅうくらりん

作詞作曲:いよわ

イラスト:同上

動画制作:同上

https://www.nicovideo.jp/watch/sm39257413

https://www.youtube.com/watch?v=2b1IexhKPz4



 今年一気に頭角を現したボーカルは、「音楽同位体 可不」だと言い切っても過言ではないはずです。

 無料で、しかもまるで人間のように歌唱してくれるソフトウェアのNEUTRINOは、昨年東北きりたんの音源、通称AIきりたんとして一躍話題となりました。歌声の精巧さは瞬く間に評判となった反面、オリジナル曲のヒットにはあまり恵まれませんでした。可不はAI音源のニューフェイスとして波に乗れましたが、声の元となったバーチャルシンガー花譜の知名度よりも、デモソングを断続的に投稿している話題性が注目するべき要因ではないかと個人的に思います。

 VOCALOID5があまり浸透せず、長らく新音源も出ていないこと、AI音源の台頭も重なり、新たに可不でDTMを始めた人を見たのも少なくありませんでした。別項目でも述べましたが、既にVOCALOID一強の時代から脱却したことの証左かもしれません。


 今年の日本レコード大賞にて特別賞を受賞したAdoに提供した楽曲『うっせぇわ』がメガヒットとなったsyudouの『キュートなカノジョ』、ボカコレ2020冬のルーキーランキングで1位の座に輝き、今最も勢いづいている柊マグネタイトの『マーシャル・マキシマイザー』など、既にニコニコ動画でもミリオンヒットを複数排出しています。上記2曲と同じく、可不のデモソングの一角であったのがこちらの一曲です。


 氏はボカコレ2020冬の楽曲ランキング5位に輝いた実績の持ち主ですが、それ以上に特記すべきなのは、一度耳にしたら印象付けられる「飽和」「過剰性」でしょう。

 『きゅうくらりん』では恋する少女の内面よろしく、転げ回わりながらふらふらよれよれするイントロが、なにより印象的です。

 人間ではないからこその高速歌唱や、演奏を前提としないどんちゃんトラックなど、ボカロにおける「飽和」や「過剰性」は多かれど、千鳥足のまま踊るような、一歩間違えれば破綻してしまう様がラスサビまで力尽きずに駆け抜けるのですから、他に類を見ない感嘆が漏れ出ます。氏自らが描いたMVも実にキュート。唯一無二の世界観を目から耳から楽しめます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る