異世界転生したらきっと全てうまくいく。

村雨雅鬼

異世界転生したらきっと全てうまくいく。

今日も学校では金をむしられ(これ絶対恐喝罪)、オーダーをミスってバイトの店長にドヤされ、模試の結果が悪すぎて親にも泣かれたし、推しのライブのチケットも売り切れで買えなかったけど、私はあんまり気にしていない。


異世界転生したらきっと全てうまくいくからだ。


なぜ異世界とか転生を信じるのかというと、前世で私は高位魔導士だったからだ。

記憶がある。掲示板に書き込んだら設定乙、って言われた。でも記憶ってニアリーイコール設定じゃん。

私は王国中の魔導士の中から選抜され(正確に言うと、応募すらしなかったのに、どうしてもと乞われて参加した)、勇者のパーティに加わって、魔王討伐に貢献した。貢献した、というのは謙虚な言い方で、ぶっちゃけ、私が立役者だった。勇者は強いけど生真面目で不器用で、私みたいな助っ人がいないとちょっとダメなタイプだ(推しとよく似てる)。顔も良かった。

私は強い。最高Lv.67あった。上限はLv.100だけど、魔導士の平均Lvなんて30超えないし、俺TUEEEEのチート級主人公なんかよりは伸び代ある方が絶対に面白い。ポテンシャルあるから、来世ではLv.80くらいまでは狙える。なぜかというと、実は魔の始祖の末裔だからだ。私の中にはとんでもない暗黒魔術が宿っていて、フルに力を解放したらLvなんてカンストする。だけど自分でも制御できないから、絶対にそんなことはしない。人間は本能的に魔物を恐れ、忌み嫌うから、みんな私に馴染もうとしないし、私も今だに人間を避けている。思いがけず周りの人間を傷つけたくないし(そういえば、前世では、小さい頃に力を暴走させて母親を死に追いやっていた)。秘密を打ち明けた相手は勇者だけだった。

結局、魔王は倒せたけど、戦いで負傷した私は国に戻ることなく息を引き取ることになる。最後に見た光景は勇者の泣き顔だ。他メンバーが卒業した時の推しの泣き顔とそっくりだった。


私は全然不幸じゃない。うっかり間違えて魔法なんて存在しないこの世界に落っこちてきたけど、次は必ず異世界に行く。

もしかしたら他にも色んな世界があって、転生するたびに寄り道が必要で、数えきれない輪廻を繰り返すのかもしれないけれど、いつかはきっと大当たりを引ける。宝くじの期待値だってゼロじゃないんだ(でも買わない。円よりGが欲しい)。

高い場所って苦手だし、一歩踏み出すのははちょっとだけ怖いけど、そんなものは必要経費。ほんのちょっぴり勇気を出せば、私は私がいるべき場所に戻れる。


掲示板に書き込んだら返信があった。異世界転生してもLv.1のスライムかもしれないじゃん?別名経験値、勇者に虐殺される運命。寿命10分。妄想マジ乙。(てかスライムってどうやって生まれるの?分裂?)


でも、大丈夫。次がある。

異世界転生したらきっと全て(いずれ)うまくいく。



だから明日こそ、私は飛ぶんだ。

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異世界転生したらきっと全てうまくいく。 村雨雅鬼 @masaki_murasame

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