第50回 長編小説の仕上げ方 その5(名前論)

 今日は名前のつけ方についてお話します。


「名前? そんなのテキトーでいいじゃん」


 そんな声が聞こえてきそうですね。


 たしかにテキトーでもいいのかもしれません。でも意外とこだわる事にもメリットがあるのですよ。


 こだわり方は人それぞれでいいと思います。


 例えば、人気漫画のドラゴンボールですと、あるカテゴリとか家族ごとにテーマがあって、そのテーマにそった名前がついています。


 ドラゴンボールをご存じない方はこちらをご覧ください。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%AB



 まずはサイヤ人。野菜を逆さまに読んでますね。そしてサイヤ人(純粋サイヤ人)は全員野菜の名前を使っているのです。


 主人公の孫悟空の正式名称はカカロット。これはニンジンの英語キャロットをもじったものだそうです。


 そして、カカロットの実の兄はラディッツ。大根の英語、ラディッシュから。ラディッツはちょっとかわいそうなくらい影が薄いですね。


 悟空とラディッツの父、バーダックはゴボウの英語です。


 ベジータはベジタブルから、ナッパは菜っ葉から。ブロリーはブロッコリーという感じです。


 それからブルマ一家。トランクスにブラ。みんな下着ですね。サイヤ人と地球人のハーフは野菜の名前が使われていません。悟空の息子、悟飯と悟天もそうですね。



 さて、わざわざドラゴンボールを持ち出したのは理由があります。単にこの漫画が好きだからだけではないのです。


 おそらく、作者である鳥山明自身がキャラクターの混同を起こしているであろうというエピソードがあります。


 それは、悟空がラスボスの魔人ブウを倒した時の以下の話です。この時に元気玉という必殺技を使うのですが、この技はたくさんの人から気を少しづつもらいます。


 その中に、人造人間17号というアンドロイドがいました。彼は一度も悟空に会った事がないのです。なのにかなり親しいかのようなセリフを言っていた、というシーンがあります。


 まあ、描かれていない所で親しくなった、というように好意的に解釈する事も出来ますけどね。私は好意的にとりました。


 とはいえ、なるべくならばこういう事は避けたいです。


 そこでどうするか。私は、まずモデルが居れば、その人の名前を特定できない程度に変えて使っています。


 例えば、長編小説「ひとり遊びの華と罠~俺がセックス出来なくなった甘く切ない理由」では、ヒロインの蛭間楓と、智也の性のメンター荒木博、楓の妹・蛭間千早にはモデルがいます。


 そして、楓以外の2人は、ほぼそのまんまのキャラの人物です。


 楓だけある特定の人物ではなく、数人いる人物の長所をミックスさせたキャラで、名前は中核となる人物を変えて使っています。


 この方法のメリットは、特に登場人物が多い時に実感します。


 人物やキャラクターの混同をしにくいのです。


「そんな事しないよ」というくらい記憶力のいい人にはどうでも良い話かもしれませんが、私は良く人の名前を忘れてしまいます。


 リアルでもそうですから、ましてや小説の登場人物、それも脇役だと忘れてしまう事がけっこうあるのです。


 なので、モデルと似た名前で紐づけする事により、この混乱をかなり防ぐ事が出来ました。


 なにせ、名前を使うたびごとに顔が思い浮かんで来るからです。


 変え方にも自分だけに分かる法則性を持たせています。例えば山→川にするとか。

例 山田一郎 → 川畑三朗

(あくまでも例えです)



 さて、モデルが居ない場合、つまり全くの架空人物はどうするか。タレント等の有名人をもじってます。例えば100人斬りの遊び人、浜田健人はお笑いの浜ちゃんから苗字を、俳優の山崎賢人から名前をもらって、漢字を変えて組み合わせました。


 あと自分自身をモデルとした場合も、下手すると友人等に特定される可能性がありますので、全く関連性のない名前を使います。


 例えば、主人公の広瀬智也は私自身がモデルで、この名前は女優の広瀬すずの苗字と、俳優の中村倫也から名前をもらって、漢字を変えて組み合わせました。


 みなさんも登場人物の名前、こだわってみませんか。


 意外と楽しいですよ~


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。


 次の第51回は再び「火口のふたり」の秘密に迫ります。お楽しみに。

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