第10回 イニシエーション・ラブ
「イニシエーションラブ」は恋愛小説ですが、本編に仕掛けられているどんでん返しによりミステリーとも言われており、第58回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門候補作となりました。作者は乾くるみ。
俳優の松田翔太の主演で映画化されています。ヒロインは元AKB48の前田敦子。ネタバレがありますので未読の
松田翔太と言えば、名バイプレイヤーでしかもカメレオンのように違うキャラを醸しだす演技派です。ドラマ「花より団子」の西門のようにカッコイイ男を演じたかと思えば、ドラマ「家売る女」の留守堂のように怪しい男を演じる事も。とても同じ人とは思えません。
前田敦子と言えば、女優よりもAKB48のイメージが強いと思いますが、この映画でははまり役なのか、なかなか熱演していましたね。ドラマ「伝説のお母さん」では主演していました。
タイトルからして「なんとなくクリスタル」のようなお話をイメージしていましたが、いい意味で予想とかなり違いました。イニシエーションとは「通過儀礼」の事です。
全体の中ではごくわずかですが、とにかくエッチシーンが秀逸。童貞のはずの主人公はとてもそう思えないくらい上手い。洋服の脱がせ方なんて負けそうです。
そしてヒロインは自称処女で、恥ずかしがり屋ぶりがとても上手い。いや~役者ですな。実は処女どころかもう一人の彼氏とやりまくって妊娠・中絶までしていたというのに。あまり過激ではありませんがすごくそそられます。
初めのうちヒロインは、かなり一途な良い娘だと思っていました。まんまと作者にはめられた訳です。
この小説のキスの描写は本当に素晴らしい。私はキスが大好きです。(嫌いな人はいないと思いますが)キスはけっこう過激にリアルに表現しても多分大丈夫だと思いますが、けっこう書くのが難しいです。セックスシーンより難しい。すごく参考になりますね。
ヒロインは主人公の事を「たっくん」と呼びます。これは重要な伏線です。なにせ主人公の名前は夕樹ですので、夕の字がカタカナのタに似ているからという理由は不自然過ぎます。
1度目に読んだ時には全く気付きませんでした。(と言うか気付く人は相当鋭い。名探偵になれます)
なんともう一人の彼と同じ呼び方です。もう一人の彼の名前は辰也。だから「たっくん」です。これが判明するのが最後から2行目。
なにかの拍子に別の彼の名前を呼んだりしないように、用意周到に仕掛けた事のようです。このようにかなりあざと可愛くないキャラが彼女の正体。
大きくなった男性自身の描写がありますが全然いやらしくない。作者は女性のような名前ですが男性です。女性にはなかなか分からない、大きくなった男性のアソコの感覚がうまく表現されています。
それにしてもヒロインは役者ですね。自然に胸を隠したり。困惑と怯えの表情を作れるとは。
恥ずかしがるフリがすごい。身体をピクンとさせるなんて演技が出来ます。今すぐ女優になれますね。
それでもやはり、隠しきれない経験豊富さが所々に出てきてますね。処女で男の首に手を回すなんてなかなか出来ないでしょう。
女性の胸を触れるサービスのお店について「そういう店がある」なんて事を知っているのも処女らしくないですね。なのに「初めて」なんて言いながら声を震わせるとか出来るとは。女の人って怖い。この人だけか。
翳りのようなものという表現が素晴らしい。かなり毛深いのでしょうか。ここでも明かりを消す事をお願いし、恥ずかしがり屋の処女感を醸し出しています。
ヒロインに注目していると作者のトリックに引っ掛かりやすいと思います。主人公に注目していれば、前半のA面編と、後半のB面編では全く異なるキャラで、別人だと言う事に気づくでしょう。
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「イニシエーションラブ」まで読んでいただきありがとうございました。
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よろしければ、私の代表作「妻の代わりに僕が赤ちゃん産みますっっ!! ~妊娠中の妻と旦那の体が入れ替わってしまったら? 例え命を落としても、この人の子を産みたい」もお読みいただけると嬉しいです。
https://kakuyomu.jp/works/16816927860596649713
次の第11回は、「僕は明日、昨日のきみとデートする」の秘密に迫ります。
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