第3話 辺境の村、村長は女性

 辺境の村へと歩く途中で犬に角が生えた動物に出くわした。僕は前世でも易筋経えっきんぎょうを行っていたから、道で拾った杖代わりの木の棒で牽制しながらお経を唱えてみたんだ。


「オンカカカビサンマエイソワカ」


 すると、その犬がキュゥーンと鳴きながら光の粒になって消えたんだ。消えた後には3枚の硬貨のようなモノと赤いビー玉サイズの石が落ちていたからソレを拾って袈裟袋に入れた。


 結局村の入口にたどり着くまでに、合計8頭の犬を昇天させた。

 硬貨はその時によって1枚だったり、一番多くて5枚だったりしたけど、赤い石は毎回落ちていたんだ。


 村の入口には槍を持って革の鎧を着た人が二人いて、僕を見て止まれと言ったから素直に僕は止まった。


「ふむ、見かけない顔だな。どこから来たんだ?」


 僕は前から考えていた話をした。


「防塞都市から西にある村に住んでいたんですけど、成人と共に両親が亡くなって仕事を求めて都市に行ったら、この村なら働き手を求めていると聞いたので訪ねてきたんです」


「おう、そうか。組合登録は済んでるのか?」


「いえ、それもこちらでした方が手続きも簡単に済むと聞いて……」


「まったく、都市の組合の奴らときたら、仕事する気がないな」


 ごめんなさい、都市の組合の職員さん。でもここは僕がスムーズにこの村に入る為にワルモノになって下さい。僕は心の中で謝った。


「まあ、良いか。名前は何て言うんだ? 俺はこの村の衛兵でゴーグだ。コッチは弟のグーゴだ」


 うん、この世界のネーミングセンスを垣間見た気がする。


「僕は光雲と言います」


「コーウンか、それじゃ俺に付いてきてくれ。先ずは村長の所に案内するよ」


 そう言ってゴーグさんが歩きだしたので、グーゴさんに会釈して僕もついて歩いた。


「この村はまだ開拓中でな。人が多いほど助かるから、コーウンも歓迎されると思うぞ」


 歩きながらゴーグさんが教えてくれた。途中にある建物を指差して、ここが組合だから後で来て登録しておくようにと言われた。


 そして、村長宅に着いたようだ。ゴーグさんが、扉を叩いて呼んでくれた。


「村長、入村希望者が来たぞ。面接してやってくれ」


「はーい、直ぐに行きますねー」


 奥から女性の声が聞こえた。村長さんって女性なんだね。そう思っていたら扉が開いて僕よりも背が10cm以上低い、眼鏡をかけたショートカットの可愛らしい女の子が現れた。


「初めまして。私が開拓中のこの村の村長でマイヤ・ロードレストです。よろしくね」


「光雲と言います。仕事を求めてやって来ました。受け入れて頂けますか?」


「えーと、コーウンくんは何が得意なのかな?」


 ここでも僕は予め用意していた答えを返した。


「以前住んでた村では両親と一緒に魔物討伐をしていました」


 僕の返事にゴーグさんが、


「おいおい、その華奢な体で本当か?」


 とビックリして聞いてきた。ソコで僕はゴーグさんに、


「はい、本当です。こう見えて力も強いんですよ。ゴーグさん、その槍をしっかり握ってて下さいね」


 と言ってゴーグさんが両手でしっかり持ったのを確認してから、槍を片手で持ってヒョイっとゴーグさんを持ち上げた。


「ヒョエー、コーウンくん。凄い力持ちですー!」


 マイヤさんが声を上げて、ゴーグさんも目を見開いて固まっている。


 実は悪いけどゴーグさんのステータスを見させて貰った。すると、僕の半分以下の数値が並んでいたんだ。数値が全てじゃないだろうけど、それでも僕はこの世界ではかなり強い方だと確信したんだ。


   

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