第2話 ここは何処ですか?

 僧侶が意識を取り戻した。そこで違和感に気がつく。

 己の両手を使って頭、体、足をペタペタ触って感触を確かめる。


「えっと、アレ? 魂魄こんぱくだったよね。何故か肉体の感触が鮮明なんだけど…… それにここは何処だろう?」


 僧侶が立っている場所は見渡す限りの草原で、道らしきモノが草原のど真ん中を通っている。


 そこに僧侶の頭に【声】が響いた。


『光雲、聞こえますか? 私は地蔵菩薩です。そなたにこの世界をすくって貰いたいのです。そなたの慈悲深い心でどうか世界の脅威を取り除いて下さい。頼みましたよ』


 それだけで声は聞こえなくなった。僧侶光雲は思った。


「いや、あのお地蔵さま、もう少し説明とかあっても良いかと思うんですけど…… それと僕の名前が【光雲こううん】なのは決定事項ですかね?」


 問いかけても返事は帰ってこなかった。何故なら地蔵菩薩は訪ねてきた観音菩薩とお茶ティータイムに入ってしまったから。


 返事が帰ってこないので諦めた光雲(名前も諦めた)は、その場で一言呟いた。


「ステータス」


「おっ! 出た!」


 そう、光雲は齢八十五歳からラノベにはまり、弟子に買ってきて貰っては読んでいたのだ。

 ソコでダメ元で唱えてみたら出てきたようだ。


 名前 光雲こううん

 年齢 十五歳

 性別 男

 職業 大性阿闍梨

 生命 195/195

 仏気 35,000/35,000

 錬度 1

 腕力 25

 体力 20

 速力 50

 技力 100

 気力 5,000

 魅力 10,000

 性力 100,000,000 

 技能 お経 袈裟袋けさぶくろ 觀調かんちょう


 うーんと唸る光雲。色々と悩む所があるようだ。


「名前、性別は問題無し。年齢は若返ったようだから、まあ良いよね。一つ目の問題、職業だ。大【聖】阿闍梨が大【性】阿闍梨になってるけどどういう事なんだろう? 二つ目の問題、生命と仏気の数値の違いが大きい。そして、三つ目の問題、技能が分からない。お経はまあ良いとして二つが分からないなあ……」


 そして、目の前にあるウインドウを指で触った時に、説明が表示された。


【大性阿闍梨】

 前世で一度も性行為を行わなかった為に今世では前世で貯まった性力を解放出来るようになった阿闍梨。


「うん、やっぱり意味が分からないや……」


 そのまま技能をタッチした光雲。


【お経】

 人に仇なす存在を無力化出来る。大性阿闍梨の経だと高位の魔族も一発昇天。1お経、100仏気消費。

 魅力が高ければ女人にょにん一発性天しょうてんする。1お経、5,000仏気消費。


【袈裟袋】

 作務衣の懐に実装してある袋で、仏気が高ければ高いほど大きく多く入れる事が出来る。

 仏気1,000で1キロ立方メートル収納出来る。時間停止使用時は、1時間使用で500仏気を消費。


【觀調】

 見たモノを調べて結果を表示する。


「うん、考えたら負けだ。取り敢えず人に会いたいから道らしいのを進もう。右に進むか左に進むか……」


 で、右を良く見てたらウインドウに


 辺境の村が5キロ先にあります。と出た。


 それならと左を觀る光雲。


 防塞都市が50キロ先にあります。と出た。


 都市に入る前にこの世界の事を、少しでも騒ぎにならない様に知りたいと思った光雲は、迷わず右に進み始めた。







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