4月12日 残念な探偵

 探偵は容疑者全員を洋館の食堂に集めて推理を繰り広げようとしていた。

「それではこれから私の推理を披露しようと思います。しばし、ご清聴ください。昨日の首吊りの死体、あれは自殺なんかではありません。」

 するとシェフはかぶっていた帽子を取り、テーブルに置いてから立ち上がった。

「犯人は私です。私がやりました」

「え」

 突然の自白に探偵は唖然として口を開けたまま、目を丸くした。

「実はアリバイ工作をしていました。彼女が亡くなった時間、私は皆さんと一緒に食堂にいました。ですが、途中でアップルパイを厨房に取りに行くと言って席を外したことがあったでしょう? 実はあの時に犯行をしました。

 実は厨房は彼女のいた部屋の真上に当たるんです。事前に紅茶に睡眠薬を混ぜて彼女を眠らせておきました。輪を作ったロープを彼女の首にかけ、部屋の中央にある照明の接続部にかけました。そして窓からロープを垂らし、厨房へとつなぎます。後はロープを引っ張れば自殺に見せかけた殺人の完成というわけです。ちなみにロープは二本使います。一本は照明と首をつなぐロープです。二本目のロープは輪の状態にして、照明部分にかかっている一本目のロープを通すように設置します。こうすることで犯行が終わった後、切ってしまえば二本目のロープを回収することができるというわけです。

 以前から彼女と食事のことで口論になりまして、日に日に苛立ちが積もっていったんです。本当に取り返しのつかないことをしてしまいました。申し訳ありません。

 探偵さん、お話を遮ってすみませんでした。続けていただいて結構です」

「ええと……あの、トリックから何から何まで全部話してもうてるやん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る