1月24日 おまもり

 私は周りからコレクターと呼ばれるほどに多くのおまもりを持っている。病気にかかった時には病気平癒のおまもりで無事快復することができた。これからも元気でいられるように健康祈願のおまもりを手に入れたら、ひどい風邪や病気にかかることもなくなった。交通安全のおまもりのおかげで事故を起こしたこともなければその被害者となったこともない。千客万来のおまもりと商売繁盛おまもりのおかげで私の勤める洋菓子店はいつもお客さんで賑わっている。

 私の人生はおまもりでできているといっても過言ではないかもしれない。今日もまた新たなおまもりを授かるために神社へと向かっていた。一礼してから鳥居をくぐる。そして参道を歩いていく。お参りをしてから社務所に伺おうと思っていたが、途中で呼び止められた。

「すみません。以前にお渡ししたおまもりですが……」

 神主の方だった。大きな神社というわけでもないため覚えていてくれたのだろう。この方から以前に恋愛成就のおまもりをいただいたのだった。このおまもりのおかげで今は素敵な人に出会えて、その関係は今でも継続している。

「ええ、その節はありがとうございました。このおまもりのおかげで――」

「どうも間違ったおまもりを渡してしまったようで」

「えっ、そうなんですか?」

 全く気づいていなかった。おまもりコレクターとしてこんなことに気づかないとはコレクター失格じゃないか。

 カバンにつけてあったおまもりを確認してみると確かに違った。

 安産祈願と書かれていた。

 さすがに妊娠すらしていないのにいくらなんでも少々気が早すぎる。

「申し訳ありませんでした。すぐに交換いたしますのでお待ちください」

 あまりに神主の方が申し訳なさそうに謝るのでむしろこちらが申し訳なくなってしまう。

「いえ、大丈夫ですよ。これはこれでいただきます。おまもりの先取りということにします」

「そうですか。でしたらいいのですが」

 私は心の奥底で本当は気づいていた。おまもりのおかげと口では言ってはいたけれども、実はおまもり自体が何か幸福を引き寄せてきたり不幸から遠ざけてくれたりしているわけではないことを。おまもりを所持することで前向きな気持ちになり、結果として良い方向に物事をとらえることができているからだ。もらったおまもりが間違っていても恋愛成就できたのはこういうことからなのかもしれない。

 でも、これでいい。おまもりで安心して、ポジティブに考えて幸せに生きていられるのならそれでいい。私はお参りの帰りに社務所で新たなおまもりをまた購入するのだった。

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