1月11日 年賀状

 僕と彼女が年賀状のやり取りを始めてからかれこれ十年近く経つ。当然、途中でやり取りが絶えそうになることもあった。こちらが年賀状を送って、彼女の方が後から送ってくるパターン。その逆もしかりだ。SNSの普及に伴い、年賀状のやり取り自体もだんだんと減ってしまっているが、不思議にも彼女のとのやり取りは継続しているのだった。

 ただいずれの年も彼女からの年賀状は三が日はおろか、成人の日もとうに過ぎて一月の下旬くらいにようやく送られてくるのだった。ひどいときには二月に送られてくることもある。同じ高校に通っていた頃には学校で直接手渡してきたこともあった。友人からは「今の何? もしかしてラブレター?」なんて茶化すように聞かれたが、「ただの年賀状だ」と答えたらそれはそれでかなり大笑いされたのだった。

 マイペースな彼女のことだ。他の人から年賀状が続々と送られてきてそこでようやく作成に取り掛かるのだろう。なおかつ正月はこたつでヤドカリの生態模倣をしているそうだ。そうなると必然的に年賀状を出すのが遅れてしまうというわけなのだろう。全くだらしがない。

 しかし、今年は違う。成人の日の翌日に年賀状が送られてきたのだった。まだ一月の中旬だ。こんな珍しいこともあるのかと目を丸くしたものだ。

 それから数日が過ぎて、年賀はがきのお年玉くじの当せん発表の日となった。一等はそれなりに良い金額だ。そうそう当たるわけがないだろうと、さほど期待はしていなかったのだが、意外も意外。なんと一等の当せん番号と彼女が送ってきた年賀はがきの番号が一致していたのだった。今年はなかなかいい運を持っている。

 早速、郵便局へ赴いて引き換えてもらうことにした。

「申し訳ありませんが、この年賀はがきは引き換えを行えません」

「え、そうなんですか? 当たっているはずなんですが」

 見間違いかと思って当せん番号と年賀はがきの番号を何度も確認した。当たっているのは間違いないはずだ。

「ええ、確かに三等が当たっているようですが――」

「三等? いや一等ですよ?」

 何を言っているのだろうこの郵便局の職員は。そんなことを思っていると端的に説明してくれたのだった。

「去年の年賀はがきの引き換えは既に終了しております。申し訳ありません」

 ここでようやく気がついた。だらしのない彼女は去年の分の年賀状を今さら送ってきたのか。

 そうなると今年の年賀状はいつ届くのだろう。もう笑うしかない。

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