第215話 Only my love(15)
「ごめんね。 ほんっとおしゃべりなおばちゃんで・・」
ようやく二人になって彼女を家まで送って行く途中、泉川は彼女の顔色をうかがいながら言ってしまった。
「いいえ。」
怜子はにっこり笑った。
「なんかね。 ほんっとつきあってる子がいると連れてこい、連れてこいってうるさくて。 んで、紹介するといろいろ文句ばっかで・・」
と言ってからハッとして
「や! レイちゃんはほんっと申し分ない人だから! さっきオフクロもいいお嬢さんだって・・ほめてたし、」
と、慌てて言った。
怜子はクスっと笑って
「それだけ、貴彦さんのことを心配されているんです。 いいお母さまです、」
いつものように穏やかに言った。
今は
静かにこうしてつきあっていきたい。
泉川は並んで歩きながらそう思っていた。
そして、ふっと手が触れたのでそっと彼女の手を握った。
怜子はハッとして彼を見た。
恥ずかしいのか目を逸らしたままの彼にフッと微笑む。
さっそく。
泉川の母は怜子のことを父や叔父たちに話をしてしまい
「ね~~~、一度ウチに連れてらっしゃいよ。 お父さんたちも会いたいって、ぜひに。」
母からしつこい電話があった。
「だから! もうほっといてって。 全然そんな段階じゃないよ。」
カンベンして欲しかった。
「だって、貴彦はあの人のこと真剣に考えてるんでしょう? あなたの口からそんな言葉、聞いたの初めてだし。 もう31でしょう? 若くもないんだからあちらだって『そういうこと』前提でつきあってるんじゃないの?」
『そういうこと』
は
もちろん
『結婚』だ。
「彼女は。 今は仕事に頑張りたいって思ってる。 おれもそれを応援したいと思ってるから。」
建前のような言い訳をした。
「結婚しても頑張れるじゃない。 まあ、大変な仕事だとは思うけど。 スーニャがすごーく慣れてたし。 そんなに浅い間柄でもないんでしょ、」
母にそんなことを言われて
「だ、だから! そんなの関係ないし!」
赤面してしまった。
だんだん息苦しくなってきた。
もう
彼女以外の女性と恋をしたいとも思わない。
このままずっと同じ人生を歩いていきたいと思う。
でも。
彼女は果たしてそんなことまで考えているだろうか。
それに
結婚に失敗して、すごく慎重になっているはずだし。
前のダンナの親にもたぶん圧力掛けられて。
本当に苦しい思いをしてきただろうし。
それを考えるとウチの親の期待だって
重いに決まってる。
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