第214話 Only my love(14)
「もうほんとにこの子ったらね。 一人っ子でわがままに育っちゃったもんですから。 」
近所の和食屋に入った3人だったが
ほとんど泉川の母がしゃべっている状態であった。
「でも、とっても頑張ってらっしゃいます。 あたしも励まされますし、」
怜子はそんな母の話をにこやかに聞いていた。
本当に清楚で美しくて、品があって、所作も申し分ない彼女に
泉川の母は嬉しそうに頷いていた。
そのとき怜子の携帯が鳴った。
「あ・・すみません。 失礼します、」
彼女は席を外した。
それを見て
「あのさあ。 おれらまだ付き合い始めたばっかなんだよね。 あんまり根掘り葉掘り聞いたりとか、やめてくれる??」
一気に不満を母にぶつけた。
「え、別にそんなにしつこく聞いてないじゃない・・」
母は不服そうに言った。
「そんなことより。 あんなステキなお嬢さん、どうして紹介してくれないの?」
それは
最もなんだけど。
「紹介って。 いや、ほんとにね。 まだまだ・・オフクロとかに紹介するとか、そんなんじゃなくて、」
結婚を一度失敗している彼女に
ヘンなプレッシャーを与えてはいけないと思っていた。
「・・おれは。 真剣に考えてるけど。 でも・・まだ、」
泉川はうつむいた。
そこに怜子が戻って来た。
「すみません、」
「病院から? 大丈夫?」
と気にすると
「病院からでしたけど。 大丈夫です。 まだ研修中の若い先生がいるもんですから。 細かく指示をしてあげて、」
怜子はにっこり笑った。
「ほんと。 大変なんですねえ。」
泉川の母は真剣に頷いた。
その後も母の不用意な発言がないように神経質に見張っていて
トイレも行けないうちに無事食事は終わった。
「んじゃあ。 おれ彼女送ってくから、」
「え、あたしはいいです。 お母さまを送ってさしあげてください、」
怜子はそう言ったが
これ以上貴重な二人の時間を邪魔されたくなくて
「タクシーで。」
泉川は無理やり母の手に5千円札を握らせた。
「もう、なんなのよ・・この子は・・」
母は呆れていた。
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