第213話 Only my love(13)

「前は・・って今はどこの病院にお勤めで?」



母の追及は手を緩めない。




「この近くの桜小児病院です。」



怜子が答えると




「え、桜小児病院って・・都内で一番設備の整っている小児科専門病院で。 前にすみれがインフルエンザの時につれていったところじゃない?」



母はもう70だというのに



本当に頭の回転が速かった。



「あ~~~、まあ。」



泉川はバツが悪そうに頷いた。




「あ~~、そう。 そういうことだったの。 そう~~、」




ものすごく


ものすごく




いろんなことの辻褄を合わせているような母の相槌が疎ましい。




「小児科のお医者さんじゃあ、お忙しいでしょうねえ・・」



母のおしゃべりが止まらなかったので




「ほら。 もういいから。 台所頼む、」




泉川は小さなダンボールを母に手渡した。




彼女のための引越しであることがモロバレで



恥ずかしかった。




あ~~あ。



レイちゃんと二人でベタベタと片づけをしたかったのに。



ほんっと



読めてねーな。




我が母ながら



恨めしい。




だいたい片付いたので



「ねえ、せっかくだし。 これからお食事ご一緒しません? もう6時すぎたし。 よろしいでしょ?」



母が怜子に言った。



「え・・あ、」



彼女が戸惑った表情をしたので



「ほら、彼女。 忙しいしさあ。 いきなりそんな、」



泉川はやんわりと拒否した。



「え、どうして? 今日はお休みなんでしょう? そんなに長い時間じゃないし。 ね?」



その強引な誘いに



「・・ハイ、」



怜子は静かに微笑んで頷いた。





もー・・



彼女いろんなことでナーバスになってるのに



このオバハンは余計なことを言い出さないだろうなあ・・



泉川は心配で心配で食事どころではなかった。


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