第216話 Only my love(16)
「来週の日曜日。 すみれの誕生日なのよ~~。 みんなでお祝いしてあげたいから。 あなたもいらっしゃいよ、」
母からミエミエのしつこい電話があった。
「や・・別に。 すみれはおれがいなくても大きくなるし。 遠慮しておきます・・」
ほとほと疲れていた。
「そんなこと言わないで。 ほら~~。 西森さんも連れてらっしゃいな、」
それを言われることもわかっていた。
「だからっ! 彼女をおじさんたちにも紹介してどーしようって言うんだっつーの!」
「今までだったら。 まんざらでもないように彼女連れてきてたクセに、」
母に痛いところを突かれた。
「いや。 だから彼女のことは本気だし。 おれだって慎重になるよ。 ほんっと先走ってフラれたらどうしてくれるんだっ!」
思わず本音を言ってしまった。
「平気よ~。 ほら気楽に。 普通のパーティーだと思って!」
って!
子供の誕生日会だろーがっ!
何がパーティーだっつーの!!
心で思いっきりつっこんだ。
「とにかく! おれは行ったとしても! 彼女は連れていかないからな!」
鼻息荒くそう言って電話を切った。
ほんっと
しつけ~~~~・・
ほっとけっつーの。
疲れてベッドに横になってしまった。
「うん、今度の日曜はね。 なんか知らんけど。 隣に住んでるイトコの娘の3歳の誕生日でね。 実家に行くことになっちゃってさ。 ほんっとバカバカしい、」
泉川は怜子との電話でグチってしまった。
「でも。 家族の仲がよくて。 いいですよね。 うらやましい、」
「羨ましくなんかないって。 オフクロは張り切っちゃうし・・」
この前の電話のことを思い出し、疲れたように顔に手を当てた。
「張り切るって?」
「だから。 レイちゃんを連れて来い、だとかさ・・」
思わず漏らしてしまった。
「え・・」
怜子の驚いた声に我に返った。
彼女が黙ってしまったので、慌てて
「だから、別に来ることないし。 おれは断っておいたから、」
先回りしてそう言った。
しかし
怜子はジッと何かを考えているようだった。
「・・あたしでよければ。 お伺いします、」
そしてそう言った。
「え? いいの・・?」
その答えには泉川が驚いた。
「・・ええ。」
怜子は何かを決心したようだったが
「ほんとに! 気を遣うことなんかひとつもないから! あの・・オヤジも細かいこと言う人じゃないし。 叔父さんも。 従兄弟の康平は・・まあ、おれとは双子の兄弟みたいな感じだし、」
泉川は実家に来て親や親戚に会ってくれるという怜子の言葉が嬉しくて
ついつい浮かれてしまった。
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