第211話 Only my love(11)
「え~? マジ、引越し~~?」
「みたいよ。 もう決めたとかいって。 早いよね~~、やること。」
「てか。 一緒に棲むとかそういう選択はなかったわけ?」
「そこまでは。 レイコ先生も慎重な人やから。 いきなりそんなことしないって、」
「また泉川がひとりで盛り上がってんちゃうのん? だいたいあいつ家事ができるわけでもないのに、彼女のなんの役に立てんねん、」
「そばにいたいだけじゃないですか? ほんとまっしぐらな人ですから、」
事業部のみんなも
いつものように勝手に噂をした。
「・・引越し。 また手伝いましょうか?」
玉田は遠慮がちに彼に言ったが
「え? ああ、いいって。 今度の土曜はレイちゃんが午後から休めるってゆーから手伝ってもらうし! おまえの手を煩わすことないって!」
「あ・・そーっスか、」
気が抜けた。
「でも、今の部屋の荷物をまとめるのが大変そうですよね、」
「それは引越し屋さんに丸投げして頼んであるから。 今はほんっと便利だよな~~、」
もう泉川はこれから訪れる幸せな生活で
ルンルンだった。
だったら
前の時も引越し屋さんに丸投げで頼んでくれたらよかったのに・・
玉田の不満など全くわかっていなかった。
「これで全部ですか? よくまとまりましたね・・」
引越し先のマンションに手伝いにやってきた怜子は少し驚いたように言った。
「うん。 ほんっとプロだよね。 こんなにコンパクトにまとめてくれて。」
泉川はニッコリと笑った。
「じゃあ、これはこっちに運びますね、」
怜子がダンボールを持とうとすると、
「もー、そんな重いのはいいから。」
「え、でも・・」
「前よりは。 少し広いのねえ・・」
泉川はその声にギクっとして、おそるおそる振り返った。
いつの間にかに玄関が開けられていて、母がそこに立っていた。
「おっ・・オフクロ!」
「今日、引越しなんて一言も言わないんだから。 康平さんには言ったのに、あたしやお父さんに言わないなんて。 」
まさか
いきなり母が現れると思わなかった。
この展開に怜子も一瞬呆然として立ちすくんでしまった。
泉川の母はニッコリ笑って
「初めまして。 貴彦の母でございます。」
いや
この笑顔を素直に受け取っていいものか。
泉川のスパコンはまたスゴイ速さで起動し始めた。
「に、西森怜子と申します。 初めまして・・」
怜子も戸惑いながら頭を下げた。
あ~~~~、
なんっかスゴイ
スゴイ
ヤな予感!!!
泉川は母の笑顔にそう思った。
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