第209話 Only my love(9)

「ほんとは。 前から接待ゴルフの約束していて・・大事なスポンサーさんと、」



泉川は本当のことを怜子に言った。



「え?」



「それ、忘れてて。 したら・・佐屋さんが代わってくれるって言うんで、甘えちゃって・・」



やっぱりウソをつけなかった。



「やっぱり。 無責任なことはできないなって。 今、レイちゃんに話してたら、すっげー恥ずかしくなって・・」



「貴彦さん、」



「レイちゃんとデートしたいけど。 やっぱ・・佐屋さんに迷惑かけるわけにいかないから。 そっち行くわ、」



ため息をついた。



怜子はフッと笑って



「・・別に。 最後のチャンスってわけじゃないですから。 本当にあたしがお休みを取れなくて、申し訳ないなって思うんだけど。  日曜日、何時ごろ帰れそうなんですか?」



「え・・たぶんラウンドの後、食事もするから。 でも朝からだから8時くらいには戻るつもりだけど、」



「じゃあ。 またあたしが貴彦さんのお部屋に行きます。 お掃除とかも・・よかったらしておきます、」



一転して



「え! ほんとに!」



ものすごいテンションが上がった。



「まあ・・寝室の方はやらないでおきますけど。 見ちゃいけないものがたくさんありそうだし、」



怜子はクスリと笑った。



「や・・! ほんっと! そんなにもないって! ほんと!」



やっぱり



これはこれで



本当に嬉しい。




泉川は一転して張り切って接待ゴルフをこなしていた。



帰ったら怜子が待っていてくれるのかと思うと張り切らざるをえない状況で。




怜子も掃除をしたり洗濯をしたり、食事の仕度をしたりと



久しぶりに主婦のような気持ちになっていた。



そして夕方5時ごろ。



怜子の携帯が鳴った。



「はい。 西森です。 ハイ、ハイ・・。」



神妙な顔で頷いた。




泉川はもうその後の食事もそこそこに



口先男の実力をいかんなく発揮し、スポンサーのご機嫌を損なわないように



それでいて早めに帰れるように操作した。



は~~~、ようやく帰れる!!



予定より早く7時には帰宅できそうだった。



ルンルン気分で部屋の鍵を開けて



「ただいま~~!」


と、勢いよくドアを開けたが。



真っ暗だった。



???



不思議に思い電気をつけると



テーブルには軽めの食事と置手紙がしてあった。



『急に病院から電話があって、担当の子が喘息の激しい発作を起こしたそうです。 貴彦さんの携帯に何度か電話をしたのですが繋がらなかったので、申し訳ないですが帰ります。 本当にゴメンナサイ・・』



きれいな字で



そう書かれていた。



慌てて携帯を取り出してチェックすると



5時ごろから5度くらい電話をくれたようだった。



携帯を閉じて


ふうっとひとつため息をついた。

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