第208話 Only my love(8)

志藤がいなくなったあと、そんな様子を見ていた香織は



「あたし。 代わりに行ってあげよっか?」



泉川に言った。



「へ・・???」



驚いて彼女を見た。



「あたし。 田舎の父親や叔父がゴルフ好きだったから。 たまに行ってたし。 コースだって何回か出たことあるし。 まあ、足手まといにならないかとも思うけど、」



「ね・・姐さん・・」



泉川の目はみるみる潤んで。



「せっかくの貴重なデートなんでしょ。 別に今度奢ってくれればいいし、」



ガバっと彼女の手を握って



「ほんっと! 感謝します!!!  もう何でも奢りますから!!!」



ぶんぶんと振り回した。



「ほんっとにもう・・」


香織も呆れて苦笑いをしてしまった。




「ね、どこに行く? 行きたいところでいいから。 車もあるし、」



泉川は夜、怜子に電話をした。



「え、あたしはどこでも。 貴彦さんのほうがきっといろいろ知ってるでしょうし、」



「どうしよっかなあ・・」



泉川はもう嬉しくてそれが体中からあふれ出て来ていた。



「貴彦さんも忙しいのに。 無理にあたしに合わせてくれたんじゃないですか?」



その言葉に



ドキンとした。



「い、いや。 そういうことは・・。」



良心がズキズキした。



「それならいいんですけど。 本当にあたしが時間の読めない仕事なばっかりに。」



「そんなこと。 おれは子供たちのために頑張ってるレイちゃんを見ているのが好きなんだ、」



自分でその言葉を言った後




おれ



自分から



『ゴルフなら喜んで行きますよ。 ま、おれが本気出しちゃうと大変だから適当にやっておきますけど、』



なんて言っておいて。





ものすごい自責の念にとらわれた。



黙り込んでしまった彼に



「どうか、したんですか。」



怜子は不思議に思って声をかけた。




「おれ・・、」



「え?」



「ごめん、やっぱ・・」



小さな声でつぶやくように言った。


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