第202話 Only my love(2)
「はっ・・???」
怜子はいきなりその質問にびっくりした。
「もうさあ、なんかあったんかなあって。 みんなそればっかり気になっちゃって!」
南がそれを聞くためにここまでやって来たのかと思うと
自分たちのことがそんなに彼らの中で気にされていたことだということに
驚いて
そして
おかしくなってきた。
怜子は笑いをこらえながら
「・・はい。 そうですね。 そういうことになりました、」
と、正直に答えた。
南はぱあああっと明るい顔になって
「え! ほんまに~~?? や~~、レイコ先生の口から聞けたらほんまやんなあ! あたしさあ、またいずみんが一人で舞い上がってるだけかもしれへんとか、思っちゃって! いちおう確かめないとアカンって思ってたから!」
と一気にまくし立てた。
「一人で舞い上がるって・・」
怜子は意味がわからず首をかしげた。
「いずみんってばね、いっつもいっつもレイコ先生にちょっとでも近づくと勝手に自分の都合がいいように考えちゃって! ほんまに盛り上がったり落ち込んだり大変やったんやもん。 そのたんびにあたしたちも振り回されてさあ、」
南はおかしそうに笑ったが
怜子は自分の言動でそんなにも彼を振り回していたのか、と少し胸が痛かった。
「でも。 どうしちゃったの? 急に。 ほら、離婚してからずうっと特に進展なかったのに、」
「・・あたしももう当分恋なんかしたくないって思ってましたから。 傷つくのが怖かったし。 今からこんなこと言うのもなんですけど、・・前の夫も結婚するまでは本当に優しくて。 思いやりもあって。 あたしのやりたいことも応援してくれて。 でも・・結婚になったときに彼の両親に反対されてしまって。 たぶんウチが北海道の田舎で酪農をやっていたことが気に入らなかったんだと思いますけど。 それから義両親の顔色ばかりを伺うようになってしまって。 彼、変わってしまったので。 どんなに好きな人でも一緒にいたらこうなってしまうって、それが怖くて。」
怜子は本当の気持ちを南に話した。
「そっかあ。」
彼女が本当につらい思いをしてきたことを知った。
「泉川さんのことは正直最初はこれ以上近づいて欲しくないって思っていて。 でもそう思えば思うほど・・なんていうか彼という人を見ていて、『ああ、こんな風に生きられたらどんなにいいだろうか、』って彼のことが羨ましく思えました。 あたしが小児科医としてもう一度頑張ろうと思えたのも泉川さんの仕事に対する真面目な思いがきっかけだったかもしれません。 離婚のことはあたしたちの問題ですから。 彼には関係ないですけど、」
そんなに前から泉川のことを特別に思っていたことを知って南は少し驚いた。
「思われることはイヤじゃなかったです。 ただ・・だんだんと彼のその気持ちに甘えて、都合のいいように振り回してしまったのかもしれないって気づいて、自分がイヤになってしまったこともあります。 それでも泉川さんは変わらずにあたしのことを支えるように見守ってくれていて。 いつの間にかすごく安心できる存在になっていたんだなあって。 お父さまが倒れられて、彼もたくさん悩んだようですけど、やっぱり事業部での仕事をすごくすごく大切に思っていて。 ああ、本当に素晴らしい方だって、いつの間に思うようになりました。」
南はもう感動さえした。
周りから見たら全然進展していないように思えていた時間も
たぶん彼ら二人の間には二人だけの『絆』があって。
「やっぱり好きだなと思う人とは一緒にいたいって。 側にいたいって。 恋愛は怖いって思っていたけど、あたしの心の中ではもう彼にずっと頼っていたんだなって・・実感しましたから。」
怜子は明るくそう言った。
「そやなあ。 言葉や態度やなくて。 もう一緒にいたいだけやもんな。」
南はウンウンと頷いた。
「いずみんは・・まあ、ほんまに育ちがいいって言うか。 ちょっとそれが鼻につく感じもあるんやけど、根はすっごい素直っていうか。 まあ、めっちゃ愛されて育ったんやろなあってことがにじみ出てる人やから。 正直、レイコ先生に出会う前の彼はもう・・1週間に10回は合コン行ってたんちゃうかってくらい、遊び倒してたんやけど。 でも、レイコ先生を好きになってからの彼はほんまに変わったもん。 いっつも志藤ちゃんと話してる。 こんなに一途やったんや~~って。 びっくりするくらい。」
南は頬杖をついて怜子を笑顔で見やった。
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