第199話 For keeps(19)

「・・いやなら。 逃げてください、」



激しく抱きしめた勢いで、彼女をソファに押し倒してしまった。



でも



やっぱり自信がなくて。



彼女の本当の気持ちが知りたくて。



そんな風に言ってしまった。



「泉川さん・・」



怜子は彼を下から見つめた。



そして



ふと微笑んで、小さく首を振った。



最初は彼の気持ちに戸惑うばかりだったけど



いつのころからか



本当に素直で真っ直ぐな彼のことを


いつも



いつも



気持ちのどこかで想うようになった。



人を愛することは



理屈ではなく



もう自分の思うままの気持ちだけなのだ・・。







クーラーが効いてるんだか効いてないんだかわからないくらい西日がきつくて。



カーテンを閉めても夏の日差しが容赦なく照りつけているのがわかるほどだった。




「ん・・」



汗が額に伝わるほど



激しく彼女を抱いた。




この前の時とは



全然違って



もう心から彼女を欲している自分を、受け入れてくれている気持ちをヒシヒシと感じて。



潤んだ瞳で



「好き・・」



彼女がそうつぶやいてくれた時

涙が出そうだった。



こんなに


こんなに



人を好きになったことなんかなかった。



彼女と出会ってから今日まで



一度も気持ちが離れたことはなかった。




彼女が結婚しているとわかった時も



心のどこかでは



もう彼女しかいないって自分の中で決めていたから。



そして



こんなにも女性をいとおしく愛したことも



なかった。



彼女の手を探り当てて



指をひとつひとつ絡めるように握りしめた。



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