第198話 For keeps(18)

何だかもう



感動してしまって



頭がボーっとしてきた。



スーニャは怜子のおみやげのカゴに入った座布団にちょこっと身体を預けたが、すぐにふいっと飛び出してしまった。



「イマイチ。 気に入らなかったかしら、」



怜子は笑った。



「スーニャって・・どういう意味か知ってますか、」




泉川はボソっと彼女に言った。



「え? 意味?」



怜子は髪をかきあげて彼を見た。



「・・インドのサンスクリット語でね。『空』とか・・『無』とか。 そう『ゼロ』みたいな意味です、」



「そうなんですかあ、」



彼女は屈託ない笑顔を見せた。



「・・『ゼロ』・・『レイ』、」




続けてそうつぶやくように言った。



「え・・」



初めて



その『意味』に気づいた彼女は少し驚いたように彼を見つめた。



スーニャは部屋を一回りして、そのカゴに戻ってきた。



そして丸くなってお昼寝を始めた。




「・・ずっと。 あなたのことを・・思ってた、」






今日



ここに彼女が来てくれると聞いたときから



何だか今までと空気が違うんじゃないか、と感じていた。



勘違い野郎の自分でも



それだけはうっすらと感じていた。





そっと彼女の背中に手をやった。



あれから



彼女に触れることさえも



ためらって。



でも



今は何も考えずに彼女の身体に触れた。



優しく彼女を引き寄せて



自然にキスをした。




触れるようなキスをしたら



硝子が粉々に割れてしまったかのように、気持ちが決壊した。



今度は怜子をぎゅっと抱きしめて、狂おしいほどのキスをした。




そして



彼女の手がそっと自分の背中に回った時に





全てを受け入れてくれた気がした。


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