第11話 Biginning(11)

なんじゃ、こいつ。



いきなり・・



志藤は眉間に皺を寄せたが



彼が何かに迷っているような悩んでいるような



そんな気がしたので



「・・女って。 わがままやんか、」



ワインに少し口をつけて落ち着いて言った。




「え、」



泉川は彼を見た。



「優しい人が好き~って言っておきながら、優しすぎると『物足りない』って言うし。 ガンガン引っ張っていってくれる人が好き~って言っておきながら、それだって自分の思うようにいかなくなると離れていくし。 んじゃあいったいどないしたらええねん!って。」



するといきなり彼は目を輝かせて



「そう! そうなんですよ! ホント女ってわかんないですよね!」



非常に感銘を受けてしまったようで張り切ってそう言われた。



「だから。 そんな女に合わせていくのって面倒やんか。 そうすっと、自分についてこれへん女にはそこでバイバイやし。 とりあえず性的処理すんならテキトーにナンパしてればいいし、」



灰皿にタバコの灰を落とした。



「やっぱ志藤さんだよな~。 そう言ってくれると思いましたよ、」



彼は満足そうにウンウンとうなずく。




婚約者に死なれてからは



もう女を愛することが億劫で



いや



本気でイヤになり。




客観的にしか見れなくなった。



ひとりの『人間』としてではなく



自分が自由にできる『人形』くらいにしか思えなかった。






「でも。 『彼女』はそやなかった。」



志藤はタバコの吸殻を灰皿に押し付けた。



「・・白川さんのことですか?」



「女性のかわいさとか愛らしさとか、健気さとか、奥ゆかしさとか。 全てを持ってる子で。 あったかくてホッとできて。 あ~、これが『愛』やって。 心からそう思えた。 わがままなんか・・・いや自分のことは二の次で人の気持ちも思いやれる子やったし。 あ、こんな子っておるんやって。 めっちゃ目が覚めたっていうか。 おれのがわがままやから。 自分のものにしたいって思ったら、絶対に手に入れたいって、」



志藤はふっと笑った。



泉川は彼の話をジッと聞き



「は~~。 カッコいいなァ。」



大きなため息をついて額に手をやった。



「あ?」



「羨ましいです。 ほんっと。 そうやって遊び倒しておきながら、そんないい奥さんゲットできて!」



まった・・



そうやってサラっと失礼な事を平気で言うし。



志藤は少し呆れたあと、何だかおかしくなって堪えるように笑ってしまった。




「頑張りますよ! おれ。 絶対に最高の女手に入れますから! 今までの女はおれの良さがわかんなかったんだ! この世には絶対におれじゃなきゃって女がいるはずですからね!」



めっちゃポジティブシンキング・・


また笑ってしまった。


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