第10話 真夜中の訪問者

 ボオオン


 汽船の寄港を知らせる汽笛が遠くに響いていた。汽船そのものをまだ見たことのないアキラにとって、静かで重々しいその音の調べは、何かとても貴重なもののように思われることがある。


 時刻は午前1時を少し回っていた。


 ベッドに横たわり、幾度か目を閉じて意識を暗闇のなかに埋没させようとしたが、昼間に聞いたハリルの話が頭からなかなか離れようとしなかった。様々な思いが頭の中をぐるぐると巡り、これからのことを考えようとするたびに不安な想いが駆られていたのである。


 でも、とりあえず無事なら、それで・・・いい・・・よな・・・


 考え疲れたせいなのか、そんな風に思えるようになってきたアキラは、うす暗いまどろみが少しだけ自身の中に増してきて、ようやく眠りに落ちかけようとしていた。


 ガラッ!


 突然、入り口の扉の開く音がした。アキラははっとして入り口の方に目を凝らした。部屋の中には、ベッドのそばで足下を照らすローライトによるわずかな光しかなかった。


 だれだ?


 こんな夜更けに来る者がいるとすれば、夜勤担当の看護師か医師ぐらいしか思いつかなかったが、なにか様子が変だった。


「どなたですか?」


 思わず呼びかけたとたん、人影が二つに割れた。二つの影はゆっくりとアキラに近づいてきて、ローライトの明かりで足下からその姿を露わにした。


「ハリルさん!?」


 そこには白いスーツ姿のハリルと、その隣に見知らぬ若い女性が立っていた。


「ハリルさん、どうしてこんな時間に? いやそれより無事でよかった。ねえ、ハリルさん・・・ハリルさん?」


 なんとも言えない違和感がアキラを襲った。底の見えない深い谷間のような隔絶たる何かが、目の前のハリルとの間に存在していた。


「お前が、アキラ・ルドリードか」


 ハリルさんじゃない!? その声を聞いた瞬間、それまでの違和感が吹き飛んだ。アキラはこれまでハリルにフルネームで呼ばれたことはなく、さらにその声色は、アキラの知るハリルのものとは全然違うものだった。これらの事実は、アキラにとって、たとえ外観がハリルという奇妙な足かせがあったとしても、目の前にいる人物がハリル本人ではないと認識するには十分だった。


「だ、誰だ?」


「ほう、状況判断が早いな。少しは期待できそうだ」


「ふざけるな!」


「ふふ、そうあわてるな。私の声に聞き覚えはないか? どうだ?」


「声だと?」


 実はアキラはすでに記憶を探っていた。聞き覚えというよりも、その声の印象に通じるような感じを、否応なく威圧されるその感覚を、昔どこかで浴びせられたことがあるような気がしていた。


(どこだ? 一体どこで・・・)


「ポップ様、あと10分ほどで看護師が巡回してきます」


 隣にいるスーツ姿の若い女性が、偽のハリルに話しかけた。


「ポップ?・・・そうだ、その声は、ポップ、ポップ・フランクスター!」


「ご名答」


「あんたがポップ・フランクスターだって? どういうことだ?」


「アキラ・ルドリードよ、今お前の目の前にいるのは、ハリル・ボンボルブを模してつくられた遠隔操作型のダミーロボットだ」


「ロボット!?」


 暗くて見えにくいところもあったが、それをロボットと呼ぶにはかなりの抵抗があった。実際それは、背格好といった一見した外観だけでなく、髪の毛、肌の色、シミ、しわなどの細部に至るまで、かなりリアルに再現されていたのである。


「ふふ、まあすぐには納得できまい。私は今、ある場所にいる。そしてそこからハリルのロボットを遠隔操作している」


 ポップの言うとおり、容易に信じられることではなかったが、偽物のハリルがいるとすればつじつまが合うこともあった。


「今回の事故の説明をしたのはあんたか?」


「そうだ」


「なぜ嘘の説明を?」


「嘘?」


「俺は瓦礫の下敷きになったんだじゃない。怪人に襲われたんだ。でも俺をこんな目に合わせたのは他の奴だが」


「・・・」


「それはそれとして、ハリルさんは? ハリルさんはどうしたんだ?」


「ハリルなら私のそばにいる。ミランダ、彼にグラスを」


「分かりました」


 若い女性は、鞄からスマートグラスを取り出すと、それをアキラに手渡した。


「これは?」


「眼鏡をかけるように普通にかけてくればいい。こちら側の現実空間の映像とすでにつながっている」


 言われるとおりにグラスをかけると、メタリックな色彩を基調とした室内の光景が身の回り全体に広がり、視界の中央にジーパン姿のポップがいた。


「ここは?」


「”セクション・ロバーズ””ADCの中枢を担う場所だ。ここには選りすぐられた者しか出入りすることはできない。いわゆる極秘の施設だが、皮肉混じりに”ねぐら”とか呼んでいる者もいる」


 ねぐら? その言い方とはおよそ不釣り合いなサイバーパンク的な雰囲気がかなり色濃く漂っていた。


「フフ、いかにもっていう感じだろ? だがこれはこのフロアの一形態にすぎない。とりあえず今は情報の収集と分析をするアナリシス形態といったところか」


 フロアの形態? ポップの言っていることがよくわからないアキラは、その部屋の様子をもっと観察しようと、とりあえずぐるりと一回りしてみた。


(あれ?)


 一回りして再びポップの正面にきたはずなのに、どこがとは言えないが、その背景がさっきまで見ていたものとは少しだけ違っているように見えた。


 ポップの言う通りなら、ここはリアルな部屋の光景を映し出しているだけのはず。部屋の様子が一瞬で変わるなんてことはありえない。


(ただの錯覚か?) 


 そう思いなおしてアキラは部屋の壁の一部を凝視した。


「えっ?」


 少しづつだが、壁はその形状を変えていた。いや、壁だけじゃなく、床、天井、そして室内に配備されたなんらかの計器や装置に至るまでのすべてが、まるで呼吸をする生き物のように、独特のリズムでうねうねとする感じを伴っていた。


 なんなんだここは? 薄気味悪い、鬱蒼とした何かがアキラの全身にはりついたような気がした。どう説明したらよいかわからないある種の息苦しさがアキラの胸を締め上げた。


「こ、こんな部屋のことなどどうでもいい。俺が知りたいのはハリルさんがどうししているかだ」


「ハリルか・・・いいだろう会わせてやる。この部屋をメディカルモードへ!」


 ハリルがそう叫ぶと、部屋全体が一瞬で真っ白となり、設備や装置が次々とその形状をヌルヌルと変えていった。いかにも最新の医療設備を備えているといわんばかりに、いや実際にそうであるかもしれないが、近未来的な清潔感が広がっていった。


 中央部分にある卵形のカプセルがすぐに目に付いた。カプセルは全部で5つあり、それぞれが平面視で正五角形の頂点部分に配置されているようだった。


 ウイイイン


 カプセルが回転してアキラの前を順に通り過ぎてゆく。おそらくそれはベッドのようなものなのだろう。全体が半透明なガラスで覆われており、白いシートによって形作られた人ひとりが横になれるくらいのくぼみの中に、枕を模した段差が設けられていた。


 ウイイ・・・ン


 3番目に回ってきたカプセルが、アキラの前で止まった。


「うっ」


 そのカプセルの中には、何者かが全裸で横たわっていた。その者は、全身が褐色化しており、かなりやせ細っていた。口にはマスク、そしてその細い腕や脚にはすでにいくつものチューブが備え付けられており、息も絶え絶えで、なんとか命をつないでいるという感じだった。


「だれだ?・・・ま、まさか!?」


「そうだ。これが今のハリルだ」


「うそだ! こんなのハリルさんじゃない!」


「嘘ではない、まぎれもなくハリルだ」


「いいや別人だ。ハリルさんがピアスなどするものか」


 カプセルの中にいる者をよく見ると、たしかに右の鼻腔に なピアスと、左の耳たぶに のピアスがあった。


「なに? あっ、間違えた」


 カプセルがさらにもう一つ移動した。


「さあ、今度こそ本物のハリルだ」


「え? こ、これが、今のハリルさん?」


 その者は前の者と同様に全身が褐色でかなりやせ細ってはいたが、その者を見た瞬間にアキラはそれがハリルだと分かった。


「な、なぜこんな姿に?」


 ハリルと怪人との戦いを見ていたアキラにとって、それはかなり異様な光景だった。自身と同じように、打撲による外傷を負ったハリルの姿を想像していたのである。


「ギグボールの酷使による身体機能の異常低下だ。ハリルはモブとの戦いで、限界までその力を使ってしまった。今はその反動がハリルの身体に重くのしかかっている。回復するには少なくとも半年、経過によっては1年以上かかるかもしれない」


「半年から一年!?」


 ギグボールという、どこかで聞いたことがある言葉に反応しかけたが、ハリルの容態は、そんなことをすぐに消し飛ばしてアキラを激しく動揺させた。


「それで完全に回復できればいいが、今の状態から判断してなんらかの後遺症が残る可能性が高い。おそらく彼はもう我が社で働くことはできないだろう」


「もう働けない? そんな、なぜこんなことに」


「なぜこんなことにだと? まるで他人事だな。こうなってしまった原因の一端は間違いなく君にあるのだよ」


「お、俺の責任!?」


「そうだ。君はさっき私に言ったね。なぜ偽の説明をしたのかと。確かに私は、君らがモブに襲われたことについては一切触れなかった」


 ハリルを横目にしながら、アキラは軽くうなずいた。


「だが、君が我が社の規約に違反したことは事実であり、問題はそこにあるのだ」


「規約?」


「そうだ、研修で教わらなかったか? 危険な場面に遭遇したときには、すぐにその場から離れることを。そしてすみやかに責任者に知らせて、その指示に従うということを。もちろん現場でもハリルがさんざん注意を促していたはずだ。にもかかわらず君は逃げなかった。なぜだ?」


 それはまさしくポップの言うとおりだった。研修でのことはさておき、仕事を始める前には必ずといっていいほど、ハリルはチーム全員にそうした注意を呼びかけていた。ただ、危険な場面について具体的な説明は一切なく、またこれまでそうした状況に遭遇しこともなかった。だからそれはいわゆる社交辞令的なもので、要するに現場では気を抜かずに仕事をしろという意味だと、アキラはそう解釈していた。


「確かに俺は、逃げろというハリルさんの指示に従わずにハリルさんの元に戻った。でもそれは、ハリルさんを助けるために・・・」


「ハリルを助けるため? 違うな、君はそのときこう思ったのだ。自分ならモブキャラくらい簡単に倒せると」


 ギクリとした。アキラは、心の中をポップに深くえぐられたような気がした。


「だが、実際に戦ってみるとモブは想像以上に強かった。君は驚いたはずだ。そしてそのときになってようやくハリルの言葉の本当の意味を悟ったのだ。違うか?」


 アキラは一言も言い返すことができなかった。怪人がモブキャラだと分かったとき、ある種の慢心がアキラの中に生じていたことをポップは見抜いていた。そして、慢心していたことを隠すために、ハリルを助けるためなどという薄っぺらな大義名分をアキラが用意していることも。


「ふつうの人間にモブは倒せない。モブを倒せるのはヒーローだけだ。だからこそ君は逃げるべきだったのだ。逆に逃げてさえいれば、君とハリルもこれほどの重傷を負わずにすんでいただろう。君を逃がした後で、ハリルもその場からすぐに離れる予定だった。ロバースの足手まといにならんようにな」


「ロバース?」


「そう、君をそんな目に会わせた者はそのうちの一人だ」


 あのときの、あいつが? そのとき現場に現れた黒人女性の姿が、はっきりと思い出されてきた。彼女の、冷たく鋭く光る紺碧の瞳が、アキラの脳裏に突き刺さるように残っていた。


「モブを倒せるのはヒーローだけ。さきほど私はそう言ったが、実は例外がある。それがロバースだ。特殊な訓練を受けた精鋭たちで構成されている」


 ヒーロー以外にモブキャラを倒すことのできる存在、ロバース。アキラとの戦いでモブはもうほとんど虫の息だったとはいえ、確かにあのときアキラの前に現れたロバースは、そのモブを跡形もなく一瞬で消し去っていた。


「彼らは我が社の基幹事業を担う圧倒的な稼ぎ頭だ。スーパーエリートと言っていいだろう」


 ポップの話を聞いている間、これまで自分の身に起きた様々な出来事が、アキラの中でようやく整理されつつあった。そうして自分の立場が飲み込めるようになるにつれて、ハリルに対する後悔の想いがいっそう強くなった。


 自分が余計なことをしたばかりに、ハリルは今、瀕死の状態におかれている。そう思うと、アキラは、いても立ってもいられなくなった。浅はかで弱くてちっぽけな自分が、抵抗しようのない大きな波や強風に煽られて霞んで消えてしまいそうだった。


「俺はどうすればいいんだ」


「どうすればいいかだと? そんなことは決まっている。君はクビだ」


「ク、クビ!?」


「ああそうだ。我が社に関する君の記憶の一切を消去してそのままお払い箱さ」


 クビか・・・それはアキラにとって当然受け入れられるべき言葉のような気がした。ただ、そうとは思いつつも、単なるクビという処分だけで今回の事件に対する自分の責任が果たされてしまうことが情けなかった。


「ハリルさんには、もう会えないのですね」


「本当に解雇されたのならな」


「え?」


 それは予想に反する言葉だった。突っぱねられると思っていた空気が、何か奇妙な含みを持つものに変わった。


「私は今、一介のローディにすぎない君に対し、たとえバーチャルとはいえ、限られた者しか出入りすることができない我が社の特殊施設に招き入れ、しかも我が社の超機密事項まで話したのだ。それが何を意味するものか、わかるか?」


 それは、なにかぼんやりとした違和感をアキラに生じさせていたことだった。今までの自分とはまったく関係のない事柄が、順を追って整然と説明されていくことになんとなく不思議な感じを覚えていた。


「君がまだ我が社で働く意志があるなら、一度だけチャンスを与える」


「チャンス? 俺はまだADCに居られるのか?」


「それは君次第だ。ただ断っておくが、もう君にローディの仕事をやらせるつもりはない」


「ローディじゃない? でも、今の俺にできることなんか他にないんじゃ」


「そうかもな。だがとりあえず君には特殊訓練を受けてもらう。もし君がその訓練に耐えられたのなら、私は君を再雇用しよう」


「特殊訓練・・・それってまさか」


「そう、君にはロバースの訓練を受けてもらう」


 ロバースの訓練を受ける? 状況を整理できないアキラに、さきほどポップが言ったスーパーエリートという言葉が急浮上してきた。


「待ってくれ、高校すらでていない俺が、そんなスーパーエリートなんかになれるはずはない」


「全く関係がないとまでは言わないが、あえて学歴にこだわる理由はない。必要なのは優れた知性だ。実際、君にはその才覚があるかもしれない」


「俺にそんなものがあるなんて、どうしてわかる?」


「コンペの結果がそれを裏付けている。ただ、ここまで話をした限りで、君が我々を驚かせるほどの傑出した知性の持ち主だとは正直思えないのだが・・・」


「コンペ?」


「月ほど前に催された「ストーリー予測コンペティション」のことだよ。君も応募しただろ? 詳しいことはこれから秘書のミランダが話す。もうグラスははずしてくれたまえ」


 アキラは、スマートグラスをはずすと、ハリルロボットの隣に佇む女性の方に向き直った。改めて見るその女性は、糸のような細いフレームをもつ小さな丸眼鏡をかけていた。


「初めまして。秘書のです」


「ああ、どうも、アキラ・ルドリードです」


 視線を女性に向けたまま、アキラは軽く会釈をした。女性は、眼鏡のブリッジを右手の中指ですっとわずかに押し上げた後、左手に持つタブレットの画面の上に右手を素早く滑らせた。


「先月開催された「ストーリー予測コンペティション」のアキラ・ルドリードさんの成績です。リアリティ3.3、キャラクター設定5.6、オリジナリティ4.3、ファンタジー性5.7、エンタメ性5.8で、我が社で設定した評価項目はいずれも平均レベルを下回っており注目すべきものはありません。しかし、ストーリー相同率は98.7%でコンペ参加者全体で最高点を出しています」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。あんたたち、さっきから何を言っているんだ? コンペ? 成績? 一体なんのことだ? 俺はそんなものに参加した覚えはない」


「なに? 参加していないだと?」


 ポップ(ハリルロボット)が秘書の方に顔を見合わせた。


「いいえポップ様、この方は確かにコンペに参加しております。このとおり、コンペの運営サイトに彼がログインしたことは事実です」

 

 秘書は、タブレットの画面をハリルロボットの方に向けた。


「なるほど、確かに」


 ポップは秘書からタブレットを渡してもらうと、その画面をアキラに見せた。


「君は参加していないというが、我々のもつデータには、君がネットを介してコンペに参加した記録がしっかり残されている」


 アキラは提示されたタブレットを軽く払いのけて言った。


「ネットから参加した? いや、俺はそんなことしていない。きっと誰かが俺になりすましたんだ」


「それはありえない」


「ありえない? でもIDやパスワードなんて、ハッキングされて流出することだってあるだろ」


「では聞くが、君は、我が社で使用する自分のパスワードやIDを知っているのか?」


「いや、知らないよ」


「それはそうだろう。なぜならそんなものは存在しないからだ。君がそういったものを我が社で使用したことは一度もないはずだ」


「そういえば・・・」


 ローディの主な仕事は外の現場での力仕事だが、社内メールやスケジュールの確認などを行うのにPC端末を操作する必要があるので、ローディの全員に小型のラップトップが配布されている。


 今まで特に気にしていなかったが、アキラに配布されたラップトップは、アキラが電源を入れるとすぐに使えるようになっていた。IDやパスワードを打ち込むことなく使用できるのであるが、なぜかアキラ以外の人間には一切使用することができないのである。


「我が社では個人を特定する文字表記は一切使用していない。なぜならその者自体がその役目を果たしているからだ」


「俺そのものがパスワード?」


「そのとおりだ」


 自分で言っておきながら、アキラはその意味を全く理解することができなかった。その様子を察したポップは説明をさらに続けた。


「我が社では社員全員の疑似人格AIを構成してサイバー空間に存在させてある。つまり、我が社のサーバーにおけるサイバー空間には、もうひとりの君が存在しているのだ」


「もうひとりの俺?」


「そう、例えば、君が我が社のPCを使用するとき、ユーザーが君かどうかを君の疑似人格が判定する。顔の画像や指紋はもちろんだが、キーをタッチするときの圧力やスピード、癖なども参照しながら、君の疑似人格が、ユーザーは君であると判定しない限り、そのPCを使用することはできない」


「へえーなるほど、そんな仕掛けになっていたのか」


「ネットを介して外部から我が社のシステムにログインする場合は、いくつかの質問がサイト上に表示される。それらの質問に対する入力操作と、答えた内容とが、疑似人格によって本人のものかどうかが判定される」


「なんだ、結構簡単そうじゃないか。入力操作なんて大した違いはないと思うし、要するに、その質問に対して俺が答えそうなことを答えればいいんだろ」


「理屈的にはそのとおりだ。だが、さきほども言ったが、入力の仕方や速さは人によって異なる。そしてもちろん、文脈や文体にもその人間の所作以上に個人差が出る。つまり「癖」がある」


「癖?」


「そう。そしてここでいう「癖」とは、本人が自覚しているものだけでなく、本人すらも気が付いていないものも含んでいる。癖というものは、その人間の性格、いや人生そのものをかなり色濃く反映しているものだ。だから「他人の癖」をどんなに正確に真似ようとしても、必ず自分の「癖」を混成させてしまうことになる。つまり、自分以外の人間の「癖」を完全に真似ることはほぼ不可能といえる。事実、この認証システムがエラーを起こす確率は数千万分の1%もない」


「数字のことは俺にはよくわからない。だが、俺になりすましてそのコンペに応募した奴がいることだけは確かだ。俺は絶対に参加していない」


「どうも埒があかないな。それでは仮に、応募した者が君じゃないとして、君になりすませるような人物に心当たりはないか? 君のことをよく知っている人物なら、あるいはもしかすると」


「心当たりって、そんな奴のことなんか・・・あっ」


「どうした?」


「・・・ジュン、かもしれない」


「ジュン? 誰だ、その人物は?」


「俺の妹さ」


「君の妹? なぜそう思う?」


「一緒に暮らしているから当たり前のことかもしれないけど、あいつは俺のことをよく知っているし、それに俺なんかよりずっと頭がいいんだ」


「ほーう」


 コンペに応募した人物が妹のジュンだとしたら・・・。アキラはその可能性を探り始めた。すると、そもそもアキラがそのコンペのことを耳にするのは今が初めてではないことに気が付いた。


(そうだよ。俺はコンペのことをすでに知ってるぞ。なぜだ?)


 なかなか直接的には思い出すことができないアキラは、それならばと、コンペが催された頃の自分について思い返してみた。


(コンペは今から2ヶ月ほど前、その頃は確か本社で健診があって・・・うー・・・ん? そうか、あのときだ)


 アキラはADC本社に健康診断に行ったときのことを思い出した。ミランダ医師のもとに向かう途中、廊下ですれ違ったクロエが、持ち運んでいたチラシの束から一枚落ちたこと、そしてアキラが拾い上げたそのチラシにコンペのことが記載されていたことを。


(あのチラシは、ゴミ箱が近くに見当たらなかったから、とりあえず作業着のズボンのポケットの中に入れたんだ。その作業着は、家に帰ってからそのままジュンに渡して洗濯してもらって・・・そうか、そういうことか)


 あまりよく考えもせずに、アキラは思い浮かんだ推論を口にした。


「たぶん、妹のジュンが俺に内緒でコンペに応募したんだ。あいつは頭がいいくせに、茶目っ気が強いっていうか、いたずら好きのところがあって、俺をびっくりさせるつもりでやったんだと思う」


「いたずら好きとかそんなレベルの話ではないんだがな。もし君の言うことが本当なら、我が社にとってコードレッド(非常事態)とも言える重大な事件が起きたことになる」


 重大事件!? その言葉にアキラは少しだけ怯んだ。思わぬ障害が、何も知らないジュンの身に突如ふりかかろうとしているかのように思えたのだ。


「あ、あくまでも可能性の話さ。ジュンじゃないかもしれない」


 アキラの言葉を無視してポップは秘書のほうに向き直った。


「ミランダ」


「はい、もうすぐです」


 その秘書は、右手の人差し指を右のこめかみに当てるようなポーズで目を閉じていた。


「確認が取れました。アキラ・ルドリードの名前でコンペのサイトにログインしたPC端末は、メリルストリート3498にあります」


「メリルストリート3498!? それって俺の家じゃんか」


「やはりそうか。ミランダ、ログインがあった日時にアキラ・ルドリードはどこにいた?」


「少々お待ちください・・・その時間に、アキラ・ルドリードはショッピングモールのカールインフィニティ通りを西の方角に歩いています」


「なっ!? なんでそんなことがわかるんだ?」


 その秘書の言うとおり、その日は日曜日で、アキラは気晴らしにショッピングモールを散歩していた。自分に対するハリルの態度が変わってしまったことに苛立っていたのである。


「町中に設置してある監視カメラの映像データをミランダに分析させた。こう見えて実はミランダは人間ではない。最新のスーペアリアAIをもつヒューマノイドだ。だがこのことはくれぐれも秘密にしておくように。この事実をもし他の誰かに話してしまったら、おそらく君はミランダによって速やかに抹殺されることになるだろう」


「えっ!?」


 ミランダは眼鏡をはずして、鋭く薄い笑みをアキラの方に向けた。それは、アキラを一瞬ぞっとさせるような奇妙な微笑だった。そして、どこかゆったりとした面もちでアキラに質問した。


「アキラ・ルドリードさん、あなたの家にある端末をあなた以外に操作できる人物は?」


「お、俺以外で? たぶん、妹なら・・・」


「ご両親である可能性は?」


「いや、それはないと思う。家にあるPC端末は俺が持っている一台だけだし、父さんと母さんはおそらく俺のPCには触れたことすらないと思う」


 それを聞くとミランダは、ポップの方に向き直って大きくうなずいた。


「ジュン・ルドリード、現在市内の公立高校に通う高校1年生です。成績は・・・これまで5回行われた全国一斉共通模試では、常に上位3パーセントに入っています。しかし、学校での成績は、Bプラスで特に注目すべき点はありません」


「ふーん、今の学校ではその実力を隠しているようだな。その方が周りとのコミュニケーションがうまく行くとか、いろいろあるのだろう」


「どういたしましょう?」


「不確定な要素はまだあるが、コンペに応募した人物は彼女とみてほぼ間違いはあるまい。後は君に任せるよミランダ、彼女を存分に鍛えあげてくれ」


「わかりました」


「な、なんだよ鍛え上げるって? 妹を一体どうするつもりだ!?」


「決まっているだろ。君の妹を立派なロバースに育て上げるんだ」


「なんだと? 妹はまだ高校生なんだぞ、そんなことできるわけない」


「もちろん、今すぐにADCで働いてもらうわけじゃない。まあ、今にわかる」


「お前ら、本気で俺の妹に関わるつもりか!? そんな勝手なことはさせないぞ」


「安心したまえ、手荒な真似は一切しない。それに、ロバースになるか否かは、あくまでも君の妹さん自身が決めることだ。まあ、おそらくそうなると思うがな」


「なんだと? 妹をなめるなよ。あいつはやるときはやるんだ。金や権力で強引なことをしようとしたって無駄だぜ」


「そうか、それはますます楽しみだ。一応断っておくが、そもそも私は金や権力、そういう外圧でもって何かをするつもりなど微塵ももっていない。自分の持つ本当の力に気が付いた人間には、そんなものは全く意味をなさないからな」


 ジュンにしてやられたという悔しそうな感じではなく、むしろ奇妙な自信にあふれるポップの言葉に、アキラはなにも言い返すことができなかった。


 堰を切ったようにミランダが言葉を次いだ。


「ポップ様、ここ来た私たちの目的は達成されたと判断しますが。いかがですか」


「そうだな。君の目当てとする人物が、アキラ・ルドリードではなく、妹の方だったというのは予想外だったがな」


「おっしゃるとおりです」


「ミランダ、君はもう帰って休んでくれたまえ。私はまだアキラ君と話したいことがあるんだ」


 勿論、アンドロイドであるミランダの身体を休ませる必要性などほとんどない。しかし、普段からポップは、ミランダをあくまでも人間の女性の秘書として扱っている。アンドロイドであることを秘密にしているわけだからポップがそうするのは当然のこととも言えるが、たとえそうする必要がない状況でも、ポップがミランダに対する接し方を変えることはない。


 ミランダのような超高性能アンドロイドは、そうした”気遣い”というものを、それが仮になんらかの矛盾や非合理な側面を含むものであったとしても、けして反駁することなく素直に受け入れるようになってきている。


「わかりました。それではポップ様、お気をつけて」


 そう言うとミランダは、胸のポケットから眼鏡をとりだし、すっと顔にかけた。髪の毛を手櫛ですばやく整えると、ポップを置いて部屋を出て行った。


(俺に話? そうか、結局俺はクビだもんな)


 ポップらの探していた人物が実は妹のジュンだということが判明した以上、アキラはもう何の関係もなく、つまりロバースになるという先ほどの話は事実上白紙になったことは容易に想像することができた。


「アキラ・ルドリードよ、君の父親はたしか元左官職人で、今は工務店を経営している。母親もその従業員のひとりとして、その経営を支えている。多額の借金を返すために今も二人で懸命に働いている。そうだね?」


「え? ああ、そうですけど」


 なぜポップがそれを知っている? 不意を付かれたアキラだったが、できるかぎり平静を装うようにした。


「実は、コンペ以前に、君のことはいろいろと調べさせてもらっていた。複数の人間が君に関心を寄せていて、その者たちからいろいろと報告を受けていた」


「俺に関心?・・・それってもしかしてハリルさん?」


「そのとおり、ハリルもその中の一人だ」


「ハリルさんがなぜ?」


「ハリルには、ローディのマネージャーという仕事とは別に、ある特別任務が課せられていた」


「特別任務?」


「ロバースに採用できそうな人材の発掘、それがハリルに課せられたもう一つの仕事だった」


「ロバースだって!?」


「そう、実はハリルは、君をロバースに推薦しようと考えていた」


「まさか」


「嘘ではない。ハリルは君の身体能力の高さをかなり評価していた。特に君のスタミナとパワーには目を見張るものがあると」


「スタミナとパワーって、俺は別に何か特別なことをした覚えはないし、そもそもなぜ、ハリルさんはそんな任務を?」


「ハリルが元ロバースだと言ったら?」


「え?」


「今から5年ほど前、ハリルはロバースの一人として働いていた。だからロバースの事情をよく知っている。もちろん、その適性についてもな」


 ハリルがロバースの一員であったことを聞くと、過去に一瞬疑問に思ったが、そのまま放置して埋没しかけていたものが、アキラの中で再びその姿を現した。それは、ハリルがモブと戦っているときのことだった。あのときのハリルの動きは、確かに普通とは違うものだった。


「ハリルも、君の家庭の事情のことは知っていたのだろう?」


「ええ、いろいろと相談させてもらっていました」


「ローディからロバースになるには、少なくとも3年はローディとして働かなければならないのだが、君の場合は、ハリルの強い推薦もあって、それが一年に短縮された。それがどういうことかわかるだろ? ハリルは君にチャンスを与えようとしていたんだ」


「俺にチャンスを?」


「そうだ。底辺社員から抜け出すチャンスをだ。そして特に君の場合、君らの人生を狂わせた者たちから、その代償を奪い返すチャンスをな!」


 なんだか話が脇に逸れているような気がする中、アキラ自身そんな風に思ったことは一度もないが、ポップの言う底辺社員とはローディのことを意味するものだということはすぐに分かった。しかし・・・


「俺の人生を狂わせた者って」


「君だけじゃない。君のご両親と妹、君ら家族は、奴らに人生を狂わされた被害者なのだ。奴らとはもちろん、あのヒーローのくそったれどもだ!」


 くそったれって、ポップから発せられたその言葉は、今し方にわかに口をついて出てきたのものではなく、これまで何度も使用され、古されたきたような感じを含んでいた。


「ヒーローたちが俺たち家族の人生を狂わせた? 何を言ってる? 少なくとも俺は、これまで彼らに関わったことなど一度もない」


「ほんとにそうかな? ならば聞くが、君の父親はなぜ多額の借金を背負わされているんだね?」


「そ、それは親父がちょっとついていなかっただけで」


「ちょっとついていなかった? ハハ、君もずいぶんとお人好しなんだな」


「なんだと?」


「はっきり言おう。君の父親ははめられたんだ。ブローカーと悪徳建設業者たちにね」


「どういうことだ?」


「ヒーローたちが戦った後には、ほとんどの場合、その強さに応じた量のゴミ(瓦礫)が生じる。現在では、その瓦礫の処理のほとんどを我が社が引き受けているが、我が社が設立される以前は、その瓦礫処理を産廃業者が行っていた。つまり、国や自治体が、税金を使って産廃業者に処を委託していたんだ」


 ふーん。ポールの話には知らない単語がちらほら出現したが、アキラにも、その意味内容はなんとなく分かった。


「初めのうちはうまくいっていた。だが、ヒーローたちがあちこちに出現して、しかも奴らはどんどん強くなるから、戦いの後に出る瓦礫の量が大幅に増加して処理が追いつかなくなってきて、産廃業者らはブローカーを介して建築業者に処理をまわすようになった。建物から生じた瓦礫なら建物に返してしまえばいい、そうすれば捨て場所の確保と処理の手間が省ける。そう考えて、産廃業者らは建築業者を巻き込み始巻き込み始めたんだ」


 建設業者という単語が出てきたとき、不快な思いがアキラの胸中をよぎった。父親のあの事件以来、アキラは、建設業者に対して、ある種の嫌悪感を覚えるようになっていた。


「その結果、建築中の建物の内部に瓦礫を不法投棄する事例が続発したんだ。良い儲け話だよな。建築業者らは、まず自分たちで建てたビルを売る。それでもって、ヒーローたちがこれを破壊すると、その瓦礫を使ってまたビルを建てて売る。ゴミ処理とビル建築の両方で金が入るという仕組みだ」


「でも、瓦礫でビルが建てられるのなら、別にそれでもいいんじゃないのか?」


「もちろん、我が社が実施してるように、瓦礫に相応の処理をして新たな建材として再生すれば問題はない。だが、ほとんどの建築業者は、そんな莫大なコストのかかる処理などほとんどしない。たとえどんな危険物質が含まれていようが、奴らは瓦礫(ゴミ)をそのまま基礎や外壁の中に埋め隠してきたんだ」


「まさか親父も、そいつらみたいに不正をしていたっていうのか?」


「いや、それはちがうな。これは私の推測だが、おそらく君のお父さんにも瓦礫の不正処理の誘いはあったと思う。大手の建築会社はそういうヨゴレ仕事をやりたがらない。もしバレたら社名に傷がつくからな。だからほとんどが下請けの中小企業や個人経営の工務店なんかがやることになる。ヒーローどもがいる限り仕事はいくらでもあるから、仲間を増やせばより大きな仕事を受けやすくなる。だが、君の父親は、それらの誘いを全て断っていたんだろう。それをよく思わない一部の業者が、わざと不正が発覚しやすい施工をして、君の父親にその責任をなすりつけたんだ。クズどもが考えそうなことだよ」


「そ、そんな」


 職人気質が強くて、気マジメで無口。そんな父親の普段の面影が、ポップの話を裏付けているように思えて、行き場のないの怒りが、アキラの中でふつふつと噴き上げてくるようだった。


「どうだアキラ、激しい憤りを覚えるだろ? だが君のその怒りを向けるべきクズ業者らは今はもうほとんど存在しない。私が奴らから仕事を奪って徹底的に潰してきたからな。しかしその一方、君の両親は未だに多額の借金に苦しんでいる。理不尽だよな? だがもし、君の怒りをぶつけるべく相手が他にもいるとしたら?」


「他にって、まさかヒーローたちのことか?」


「そのとおり。そもそも奴らがいなければ君の父親もそんなことに巻き込まれずに済んだはずだ。ヒーローたちが現れてからずっと、我々は奴らの尻拭いを余儀なくされてきた。そう、なぜかほとんど表沙汰にならないが、君たちのような被害者は他にも大勢いる」


 ヒーローたちがいなければ、か。ポップの言うことをそのまま鵜呑みにするということではないが、それでも、マジメさだけが取り柄の父親がなぜそんな不祥事に巻き込まれたのか、モヤついていた疑問に対する答えを得たような気がした。


「ポップ、俺はどうすればいい? どうすれば父さんと母さんを助けられる?」


「君ら家族はな、その未来を奴らに奪われたんだ。そう、未来をね。奪われたのなら取り返すしかない」


「取り返す? どうやって?」


「それを可能にするのがロバースだ。取り返したいのなら、君もロバースになるしかない。どうする? やるか、やらないか。君自身が決めるんだ」


「俺がロバースに・・・」


 アキラはロバースの具体的な仕事内容をまだ知らない。しかし、「スーパーエリート」と称されるロバースに対して、気後れよりもむしろ強い憧れのようなものを感じ始めていた。


「ロバースの仕事って、やはりかなり危険なのか?」


「勿論だ。でなければハリルだって今のような状況にはなっていない。はっきり言おう、ロバースに命の保証はない。自分の身は自分で守らなければならない」


「そうか・・・わかった。やるよ」


「ほう? 決断が早いな」


「ああ、危ないってことが始めから分かっていればそれなりの覚悟はできるさ」


「ご両親には相談しなくていいのか?」


「相談?」


 今回の事故を受けて、父さんと母さんはきっとかなり心配しているだろう。今の時点ですでに仕事を辞めてほしいとさえ言ってくるかもしれない。ましてやロバースの相談などしたら、確実にそう言われて絶対に止められる。結局のところ俺はまだ未成年だから親の意向を無視することはできない。もしそう言われたら、たぶん従ってしまうだろう。


「親には一切知らせない。秘密だ。もしバレたら辞める」


 なぜか今、俺はロバースの仕事をやってみたいと思っている。危険であることは肌身に感じて分かっているはずなのに。勿論、父さんと母さんを楽にしてあげたい、そしてハリルさんにも会って謝りたい。そういう理由はあるけれど、本当のところはよく分からない。正直、エリートといわれる存在になってみたいっていうのはある。だけど、それだけじゃない気もする。ただ少なくとも復讐とかじゃないことだけは言える。だって俺は、建築業者やヒーローたちに対して、確かに一時的な怒りを覚えたけれども、ポップに言われるほどのはげしい恨みや辛みを抱いているわけではない。


「そうか。ならば、とりあえずここを退院して、なおも気が変わらなければ私のもとに来るがいい」


「わかった。俺は行くよ。必ず」


「話は以上だ。私はこれで失敬する」


 そう言ったとたん、ハリルロボットの眼光がなにか穏やかなものになったような気がした。ロボットは、するりと向きを変えてドアから部屋を出て行った。


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After the hero's attacks K助 @kkjmd

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