第2話 アキラ
僕の名前はアキラ・ルドリード、17歳、牡牛座、血液型はO型。
僕は今、ADCで働いている。仕事が激務で超ブラックと揶揄されるあの会社だ。
ブラック企業と知っててなぜADCを選んだのかって?
理由は簡単、中卒の僕を雇ってくれた唯一の大企業だったから。
家が貧乏すぎて、高校には行けなかった。断っておくけど両親は今も健在、二人とも元気に働いている。
家が貧乏なのは、僕が5歳の頃、父さんがとんでもない借金を背負わされたから。
父さんは当時、従業員が10人くらいの小規模な工務店を経営していて、ビル、道路、橋などのインフラを整備する大手建設会社の下請けをしていた。
国全体の人口が減少して空き家や空室が増えて、建築業そのものがふるわない状況下で、父さんは、なんとか途切れずに仕事をもらえるようにと、ときには下請けの下請けのような形で割に合わない仕事をしながら、それでもなんとかやりくりしていた。
そんなあるとき、父さんの工務店が一部関わって建てたあるビルの壁の中から大量の
父さんたちが建築したのは基礎部分と床で、瓦礫の見つかった壁は別の工務店の担当していた。しかし、その公務店はすでに解散していて責任者の行方も分からなくなっていた。結局、そのときフロア全体の現場監督を任されていた父さんが、不当廃棄の全責任を負わされることになってしまった。
建て替え費用などの賠償金額は、軽く一億ギルを超え、父さんの工務店は破産した。
その後、元々左官職人だった父さんは、いわゆる「かべ屋さん」として、今も残る多額の借金を返すために、母さんと一緒に働いている。
そうしたことがあってから、僕は、近所の人たちから「かべ屋の息子」と呼ばれるようになった。
かべ屋の子はかべ屋。
どうせ息子も父親の後を継ぐんだろ。
貧乏なかべ屋の息子に他に何ができる。
カベヤの息子って言われるたびに、周りからそんな陰口が聞こえてくるみたいで、まあ実際そうだったのかもしれないけれど、大人たちのそういう身勝手な冷たさみたいなものを、幼い頃の僕は、少しづつでも飲み込んでいかなくてはならなかった。
父さんには悪いけど、今のところ後を継ぐつもりはない。父さんもそれでいいと言ってくれている。
父さん、そして母さんも、僕に高校に行くことを強く薦めたけれど、これ以上両親の負担を増やしたくなかった。僕は両親のことが大好きだし、僕のためにこれ以上無理して身体を壊すようなことになるのは絶対に嫌だった。
家族は4人。僕より3つ年下の妹、ジュンがいる。妹も中学を卒業したら働きたいと言っているが、そんなことは僕が絶対にさせない。もちろん学歴が全てじゃないとは思うけど、それでもやっぱりあいつには進学してもらいたい。高校、そしてできれば大学にも。もったいないんだ、あいつは僕より頭が良いから。
僕が働いて妹の学費を稼ぐ。それが一番いいんだ。でもこういうのって、やっぱ恩着せがましいのかなあ……
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