After the hero's attacks

K助

第1話 プロローグ

 悪者とヒーローとの闘い。


 それは、いつの時代も常に存在する。


 なぜ彼らは争うのか?


 それが彼らの宿命だから?


 神がそれを定めたとでも?


 そんな愚かしい取り決めを一体なぜ?


 いいや、違う、きっと・・・


 とにかく、彼らは、時代と共にその態様を変えながら、今もなお、終わりなき闘いを繰り広げている。


 普通の人々が暮らす平凡な日常において、その闘いは突如勃発する。


 とんでもない熱量をもつ目映い光線が飛び交い、キックやパンチといった素手による攻撃にさえ、通常ではあり得ないほどの恐るべきパワーが込められている。


 彼らは闘いの場を選ばない。不幸にも街の中で闘いが始まった場合、長い年月と共に多くの人々の手によって築き上げられてきた建物や道路(インフラ)は、容赦なく無惨に破壊され、瓦礫の山と化す。


 だが彼らに損害賠償請求することは叶わない。


 悪者である以上、当然ながらそんなものには応じるはずもなく、そもそも彼らはヒーローたちの手によってすでに滅ぼされている。


 それならヒーローたちは? 正義の見方である彼らなら応じてくれるのでは? 


 しかしそうした期待はこれまですべて裏切られてきた。彼らは闘いを終えると、


「みんな、また会おう!」


 このお決まりのセリフを最後に、大抵はそのまま行方がつかめなくなる。


 結局、人々は自腹を切らされる。道路や公共施設などのインフラを修理・整備する場合は税金が投入されるが、個人持ちの建物に関してはその所有者が費用を捻出しなければならない。


 しかし、そうしてやっとのことで建物やインフラを復旧させた頃、新たな悪の組織とヒーローとが突如姿を現し、不毛な闘いを始めるのだ。


 一体何のために彼らは闘いを繰り返すのか? そしてなぜ社会は彼らの闘いを容認せざるを得ないのか?


 正義の味方ヒーローという概念が生まれて約半世紀を経た今をもってなお、人々はこの疑問に対する答えを見い出せてはいない。


 そうした中、ある一人のおとこが行動を起こした。


 その漢の名前は、ポップ・フランクスターという。ポップは、5人の仲間たちと共に有限会社「アンツ・デュエル」を立ち上げた。


 アンツ・デュエルは、創業当初から莫大な利益を上げた。才覚あるポップの舵取りのもと、利潤が利潤を生み出し、その規模はみるみる大きくなり、数年で株式上場を果たした。そして、設立から10年を経た今、アンツ・デュエルは、ADC(Ant's Duel Corp.それぞれの頭文字を取ってエーディーシーと呼ぶ)として、世界にその名を馳せる大企業へと成長した。


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