第9話 水晶の煉獄で 魔法使いの呟き

其処にあるのは 無数の血が飛び散り 部屋中をあちら、こちらと染めている事と・・


首のない胴体と斬り落とされた巨人族の王の首・・

他にも護衛の兵士に悪行を知られた巨人族の王の弟の死体と赤い血の跡だけだった


「どこに? 火竜王(サラマンデイア)様!」不安そうに声を上げ続けるアルテイシア


「私たち、私達のアーシュ様 愛する愛しい私の王さま あの子、エイルも待っています

貴方の妹テイ、テイだって・・私たちの王様ああ!」アルテイシアが悲鳴のような声で

泣き叫ぶ


アーシュは別の場所に跳ばされていた

気を失っていたが 無数の水晶に貫かれた激しい痛みで気が付いて 目を覚ますアーシュ


ほとんど光のない場所 闇の中・・

廻りには多数の美しい無数の水晶群 洞窟の奥深い場所 不思議な水晶のせいで

ほの暗くやや明るい 全くの暗闇では無かった

アーシュの身体は何本もの水晶に貫かれて、その水晶に少し斜めに立った状態でいた


倒れかけているアーシュの身体を皮肉な事に貫いた水晶が支えていた


外そうと身体を動かそうとするが まるで力が入らない

だが、まるで動けない 水晶に貫かれたまま 


「くっ、くそう!」アーシュ 身体と口元からは血が流れてはずっと止まらない


「くくっ、どうですか動けないでしょう?それは私が作った魔法の水晶・・」


身体は倒れて、それに胸から血を流して、その胸を手で押さえながら上半身だけ起こして 

魔法使いは言う


「じわじわとですね ぜひ、その激痛の苦しみをじっくり味わってください」


「何年か、長い時間かけて、その水晶は 貴方の身体を貫きながら

その命を奪う・・もだえ苦しみ続けてください 黒の王」「奪い尽くすから はははっ」


「貴方が力尽きて、それから私が貴方の命と魔力を奪い終えてから

魔法の水晶は私の身体を復活させ・・貴方の焔の力も貰いうける」


「ああ、テインタル王女に彫りこんだ呪いの入れ墨 

あれも同じ効果があるからなのですよ」


「少しずつですけれどね・・彼女は気がつかないが」「ゆっくりとですが そう、少しずつゆっくりと」


「彼女は あの麗しい黒の王女 王アージェントと正妃アリアンの娘 

黒の王女、火焔の王女は

テインタル王女は私にその魔力と寿命を奪われていたのだよ そう、彼女は気がつかない」

「あと十年足らずで テインタル王女は・・死ぬ運命・・」


「・・実に素晴らしいですね、さすがは純粋な血を持つ火竜王(サラマンデイア)、

火焔の王女」 


アーシュを見ながら、あざけるようにせせら笑う

「貴方なら もっと早く死んだでしょうね だって、そうでしょう?」

その問いかけが面白くなかったのか、嫌な顔をしてアーシュは魔法使いを睨みつけた


「母親は 魔力のないただの人族・・半分は魔力などない人族だから」


「テインタル王女の場合はもっと早く死ぬはずだったが・・

とても長く、長く、時間がかかった」


「・・貴方が殺してくれれば 手間がはぶけて良かったのに」

「何故、殺さなかったのですか? どうせ邪魔だったでしょう?

安心して王位につくのにも?」「王位を保つ為にも殺すべきなのに?」


アーシュは魔法使いのその言葉に黙って睨むままだった

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