第10話 水晶の煉獄
「あと十年足らずで テインタル王女は・・死ぬ運命・・」
「・・実に素晴らしいですね、さすがは純粋な血を持つ火竜王(サラマンデイア)、
火焔の王女」
アーシュを見ながら、あざけるようにせせら笑う
「貴方なら もっと早く死んだでしょうね だって、そうでしょう?」
その問いかけが面白くなかったのか、嫌な顔をしてアーシュは魔法使いを睨みつけた
「母親は 魔力のないただの人族・・半分は魔力などない人族だから」
「テインタル王女の場合はもっと早く死ぬはずだったが・・
とても長く、長く、時間がかかった」
「・・貴方が殺してくれれば 手間がはぶけて良かったのに」
「何故、殺さなかったのですか? どうせ邪魔だったでしょう?
安心して王位につくのにも?」「王位を保つ為にも殺すべきなのに?」
アーシュは魔法使いのその言葉に黙って睨むままだった
「私たちの操り人形だったテインタル王女ですよ
そうではないですか?幾度も貴方や貴方の妻、第一王妃エイルの命を狙い傷つけた」
「そう、当時はエイル、エルトニア姫は貴方の婚約者でしたか?」
「ああ、異母兄妹だから婚姻も出来たか・・あのナデア王が王妃の娘、異母妹エルテアと
結ばれて 火焔のアジェンダ王や水の王女シルフニア王女を産んだから ふふっ」
「遠く離れて、貴方は人質として敵国で暮らしていたがテインタル王女にも
恋しく思う深い情があったという訳ですか?」
「・・貴様」アーシュの焔の赤い瞳が 怒りで輝く
「ふふふ、お前はアーシュ その身体では身動きも出来ず
動けまい・・火竜王(サラマンデイア)」魔法使い
「二人の火竜王の魔力か 血族婚、近親婚で蓄えて続けていた、その莫大な魔力・・」
アーシュの身体に突き刺さる幾つかの水晶の穂先
「うう・・」激しい痛みに口から苦痛の声が漏れる
「痛いでしょう、とても激しい激痛ですよね」
「あと、その状態で 不死身に近い身体とはいえ、持ちこたえられない」
にいいいと不気味な笑みを浮かべる魔法使い
「再生能力、それでも数年しか持たない・・しかも半分は人族である貴方」
笑い出す魔法使い
「貴方はその魔法の水晶に貫かれたままだ、寿命と魔力は無くなる・・奪われる」
「癒しの呪文は効かないですよ 黒の王 火竜王(サラマンデイア)」
「一人では 動く事も出来ないですからね 誰もこの場所は わからない・・」
「私は復活するのです そう復活するあはははっ」そう言い残して 魔法使いは倒れて・・
身体はチリとなり 血塗れのローブだけが残された
アーシュは 動こうと何度も試みるが 動かない まるで駄目だった
何度も癒しの呪文、回復の呪文を唱えても、まるで効かない 癒せなかった
水晶を破壊する魔法の呪文も効かない ヒビ一つ入らない
まったく効果ないのだ 呪文の詠唱の声だけが残るだけ 暗い洞窟の中で木霊するだけだった
「うおおおっ!」深い底なし沼の絶望にアーシュの絶叫、悲鳴が響く
痛みに気を失う
それからとても長い・・長い時間が流れてゆく
その間 ずっと 呪文や身体を動かす事を試すが、それは徒労に終わった
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