第十七章 思考と言葉
いよいよTTTとの開戦まで一週間となった。ここまで来たらいかに戦闘当日にピークを合わせるか、それだけだ。今更何が出来るわけでもない、調子を合わせるだけ。強いて言えばナショナル教育プログラムの見直しぐらい。ここはひとつ、テキストを開いてみるか。
最初は白紙同然だったこのテキストも今や辞書の様にびっしりと学んだことが書き記されている。そして俺が今まで見てきたどの教科書よりも分かりやすく、そして内容が濃い。よくできたもので索引まで付いてやがる。今見直すとしたらどの項目だろうか。やっぱりトレーニングの原理原則だろうな。TTTには完全に欠落している概念と言ってもいい。トレーニングは目的が必ず先立つ。とりあえずトレーニングをしてみたいという場合はそれ自体が目的だから別に何をしてもいいわけだが、明確な目標があるにも拘らず金太郎飴みたいなトレーニングメニューを提供するなんて愚の骨頂だ。今の俺にはそれがよく分かる。変な身体の使い方をすれば人型戦闘機の扱い方が下手になるし、やたらと疲労してしまう。特異性の原理、やはりこれに尽きるよな。トレーニング効果はやったようにしか現れないという話。意味がないトレーニングとか間違っているトレーニングというのは本質的には存在しない。結果が出ないというのは、思った通りの結果が出ないという結果を生むという意味がある、と言えばなんとも辛気臭い話だがこれぐらい考え抜いてプログラムを構築するのが指導者の務めだとジョンは言った。ナショナルフィットネスは表向きにはただのフィットネスクラブで、顧客満足度は非常に高いらしいがそれはきっとこういった辛気臭い話と真剣に向き合っている表向きはトレーナー、裏ではナショナル軍の皆がちゃんと仕事をしているからだろうな。
俺のナショナル教育プログラムもつまるところ特異的なわけで、このテキストが俺個人にだけ役立つというのも概念としては同じ話だ。俺に足りないモノとかコトというのは、他の誰かのそれとは違うわけだから、俺のプログラムを他の誰かがこなしたってそれこそいい結果には繋がらない。逆も然りで、俺が例えば石山さんと同じような重量でウエイトトレーニングは出来ないし、長浜さんみたいに器用なことはできないっていうことだ。それなのにTTTとやらはチェーン店みたいにいつでもどこでも同じ様な事を言ってくるらしい。ちょっと神経を疑うよな。
話をすればキリがないのがこのトレーニングの原理原則だが、やはりTTTはツッコミどころ満載だ。ツッコミ担当の俺でもどこからツッコミを入れていいのか迷うほどだ。そもそもトレーニングとは何かということが全く分かっていない。トレーニングとはすなわち俗にいう筋トレということではない。TTTは筋トレだけがトレーニングだと思ってるんだろう。まぁ俺もそう思っていたクチだから偉そうには言えんが、そう思っていたからこそ身に染みて分かる。石山さんは最初からベンチプレスなんかしている場合じゃないと適切な指導をしてくれた。あれがなかったら俺はワケも分からず今頃上半身だけ鍛えてただろうな。
上半身っていう話で言えば、上半身を鍛えるなら下半身を鍛えましょうと言うのは正論なんだが、そうやって全身を鍛えましょうというのが全面性の原則ということではないという話。これはちょっとした落とし穴だったな。あらゆる体力要素を向上させること、これこそが全面性の原則。そして体力要素は身体的要素と精神的要素に分かれ、それぞれが行動体力と防衛体力に分類される。筋力を高めましょうというのは身体的要素の行動体力を構成するひとつでしかない。それなのにTTTは全身こそが全面だと言っているらしい。なんと狭い思考なのだろうか。
ナショナル教育プログラムを受けて感じるのは、精神的要素の重要性だ。健全なる精神は健全なる肉体に宿るという考え方があるが、精神の健全性が現代の我が国において欠落しているのは重大な問題だ。マスメディアやSNSの情報を鵜呑みにし、周りに流される人たちが大半で、そこから常識が醸成される。なんて不健全なのだろうか。ただ精神性のみに焦点を当てても何も解決しない。その精神は肉体に宿るからだ。ということはいつか石山さんが言ったこの国に巣食う病とやらを治すには、健全なる肉体を創出するしかないのだろう。このことは我が国の根幹に関わってくる。不健全なる精神を宿す肉体が国民の大多数だとしたら、我が国は不健全な共同体ということになるからな。
そもそも共同体意識が欠落していることが大きな問題だ。誰だって一人では生きていけないのは明々白々なのに、まったく愛が足りない。そういう概念がないんだ。TTTは指導対象者に対する愛が欠落している。だから狂った概念で指導が出来るんだ。だが受け手にも問題があると俺は思う。おかしいことに気が付けない、違和感を違和感と思えないのはまさに平和ボケ。そういう思考に陥れたのは果たして……まぁかなり長い独り言になったが、闘うならその意義は絶対に持っておきたいから、見直した甲斐があったよ、感謝するぜ、俺だけのテキスト。
「かなりまとまってきたようだな」
『マネージャー!』
「そのテキストはお前の人生そのものでもある。大切にするんだぞ」
『皆さんからの教えが詰まっています』
「それもそうだが、お前が解釈したように文字が起こされるということに気付かんか?」
『え?そうなんですか?』
「そうだ。毎日色々考えていれば、当たり前の様に解釈の仕方も毎日変わってくる。そのテキストはそんな変化も全て反映されているのだ」
『なるほど……』
「しかしそれ故の弱点もある」
『弱点……』
「いまいち自信が持てなくなる時があるということだ」
『確かに!なんだかわけ分からん様になる時があります』
「そうだ。戦闘時においてはその一瞬の迷いが命取りになることだってある」
『迷いが命取り……物騒な!』
「そう、本当に物騒な話だ。だから戦闘時は迷いを捨てろ」
『でもどうやって……』
「TTTの強さの秘訣は分かるか?」
『秘技質問返し!』
「いいから考えてみろ!」
『多分ですけど……無頓着なところですかね』
「いい線行ってるな、まぁ正解としよう」
『よっしゃ』
「奴らは悪い意味で無頓着だ。センスが欠けている。しかしその反面、根拠には乏しいが何故か自信満々だから、戦闘時にはいい意味で迷いがないと言える。これは厄介だ」
『ナルシズムってやつですね』
「そうだ。だから次回の戦闘では我々も一旦迷いを捨てよう。現時点の自分を信じるほかない。そして我々には信じられるものがあるだろう?拠り所はそれだ」
『概念と愛……』
「もう説明する必要はないな。我々が闘う意義、見失うなよ」
『はい、ところでマネージャー……』
「なんだ?手短に頼む」
『あの、マネージャーが闘う理由って何ですか?その国家という大枠は当然なんですけど、個人的なモチベーションって言うんですかね?』
「それはな……あまり他の者には言っていないのだが……」
『お聞かせ願いたいですね』
「モテたいからだ」
『やっぱり軽い!何とも言えない雰囲気がある!!』
「当たり前だろう。男は女にいいところを見せたいもんだ」
『見せたいって……意中の人でも……?』
「現時点で女性の登場人物は三人しかおらんだろう。別所は長浜と、志賀はお前と……」
『まさか……司令!!』
「笑ってくれるな」
『ニヤニヤが止まりません、すみません』
「司令には内緒だぞ!」
『司令に隠し事は無理なのでは!?』
「馬鹿、優れたスパイでも自分の恋心となると分からなくなるもんだ」
『いや、相手方の恋心ではなくあなたの恋心では』
「いいか、空気を読めよ、今回の戦闘」
『え、もしかして俺が和美とパートナーになったのって……』
「私が公認パートナーを降りて、今回の作戦で司令と闘う為だ!」
『やべぇ、当初の軽さがここで戻ってきたか』
「お前は志賀とよろしくやっててくれ。俺はなるべく司令のそばにいる。」
『え?後方支援なのでは!?』
「お守りせねばならんだろう」
『前線はどうしろと!』
「今のお前たちなら闘える。期待しているぞ」
『本当なら嬉しいお言葉なのに、何故だ、嬉しくない!』
「私はお前たちを信頼している、自信を持て」
『いいセリフ用意してんのに、出すタイミング間違ってんだよなぁ……』
「では私は先を急ぐのでここでな。司令と作戦の最終確認だ。るん」
『るんって……』
「馬鹿者、仕事を楽しめないなどもったいないことだ」
『たまに差し込んでくる正論には対処のしようがない』
「多くの人は仕事を楽しいと思えていない。なぜだと思う?」
『何でしょうね、俺、ここでしか働いたことないんで……』
「では何故お前はこの仕事に苦痛を感じない?」
『えっと、そうですね、目標もあるし、なんか居心地も悪くないから?ですかね?』
「そうだ、お前は恵まれすぎている。パートナーが準備してくれる食事、フレキシブルな勤務体系、そして明確な目標設定と、適切な指導、通勤時間だってほぼゼロだ。しかも生活の全てが保証されている」
『人生大逆転でした』
「まぁその分責務そのものは無茶なものなんだがな。しかし多くの国民は、自分で食事を作る時間すらままならず外食だらけで、しかも一食当たりの食費を抑える為に不健康なファストフードばかり食べている。勤務時間も厳格に決められているし、残業なんて当たり前だ。そのくせ明確な目標やミッションが与えられているとはお世辞にも言えず、目の前の仕事をただこなす為の日々。褒められることはないのに理不尽に怒られてばかり。それに賃金だってここずっと横這い。さらには増税によって手取りは右肩下がり。そんな仕事の為に、職場に片道一時間かけて行くとしたら、それは地獄だろう」
『耐えられませんね……』
「しかし耐えねばならんという勤勉な国民性が我が国の今を作ったとも言える。ただあの時は目標があったがな。今は国家全体としての目標もない。あるのは絶望だ。耐えた先に望むものがあるなら多少のことは耐えられるものだが、耐えても何もなく、むしろ絶望に向かっているとしたら、それは拷問と同じだ」
『拷問……ですか』
「掘った穴をまた埋める、その繰り返しをしているのと同じということだ。ある一定の回数を繰り返すと気が狂ってくるそうだ。TTTがやっていることも本質的には同じようなことであるから、断じて許せん。特に意味のないトレーニングを強要するなど……」
『そのモチベーションとは……』
「坂本司令!……は!早く行かねば!!」
『俺がこの展開を作らなかったらどうしてたんですか』
「これは私とお前だけの秘密だからな!」
『相変わらず誤解を招く表現を……』
その後、司令とマネージャーがどんな会議をしたのかは俺には分からない。ただマネージャーが闘う理由は分かってきたし、お陰でどう立ち回ればいいのかも見えてきた。網タイツ作戦の肝は、俺が和美と共に戦闘の全体を整えていくところにある。ある意味では空気を読まねばならんからな。しかしまさかマネージャーが司令のことを……これはちょっとした上層部のスキャンダルだな。まぁこれをリークしたところで俺に何の得もないし、別にそれで業務に支障があるわけじゃない。そう考えれば俺が入隊するまで実家でボサーっと見ていたテレビなんて酷いもんだよな。芸能人の不倫報道とか、誰が得するって言うんだ。もっと大切なことがあるだろう。それで成り立つ業界ってのはどうなんだ?芸能人とは言え普通の人間だろうし、家庭内のいざこざをわざわざ大々的に流されたら不倫した側も不倫された側もたまったもんじゃないだろう。まぁもともと俺も見ていたクチだから偉そうなことは言えんが……。それにこういう話の持って行き方をすると、司令とマネージャーが不倫関係みたいに誤解されるから止めておこう。あれはただのマネージャーの片想いだからな。
ただこうやってナショナル教育プログラムを受け続けていると、世界の見え方はこうも変わってくるもんなんだな。いかにこの世の中の価値観がバグっているかがよく分かる。そんなバグっている世論なんてものはアテに出来ないのに無視できないという矛盾。そりゃまともな奴がおかしく見られるはずだ。この構造ってもしかしてもうどうしようもないんじゃないかと、それこそ絶望を覚えるな。
「でも希望は捨てちゃダメだよ」
『ジョン!』
「力くん、本当に成長したよね、絶望を覚えるなんて」
『え?絶望が成長?』
「そうだよ、頭がお花畑の平和ボケの人は絶望することないから」
『優しい語り口で辛辣なことを』
「ただ僕たちが絶望したとして、歩みを止めてはいけないと思うんだ」
『そりゃそうだよな』
「どんな辛いことがあってもね」
『ジョンって辛いことはあったのか?』
「うーん……この見た目かな?」
『それはちょっと俺には想像が付かんが……ハーフならではか……大変なことがあったんだな』
「まぁハーフの人は多かれ少なかれ悩むことなんじゃないかな?まぁ今は我が国の国籍を選択したし、その我が国への愛が今の僕を作ったわけだから、悩んだ甲斐があったとも言えるけどね。そもそも生まれも育ちも我が国でママの国の言葉はそんなに得意じゃない。それで学校ではちょっといじられたっていうのはある。だから国籍が我が国になったのは必然だったけどね」
『あれ?ジョンって我が国の言葉だけしか喋れないわけじゃないよな?』
「まぁ今は向こうで生活できるぐらいはママの国の言葉も喋れるよ?一時留学もしてその影響で人をファーストネームで呼ぶクセが付いたけど、どちらが得意かって言われたら我が国の言葉」
『英語の論文とかも読んでるし十分凄いと思うけど』
「それは母国語をしっかり習得したからこそだよ」
『へぇ。なんかイメージでは昔からバイリンガルみたいな感じなのかと』
「あぁ最近流行りの早い段階から第二言語を身に着けさせようとするやつね」
『そうそう』
「あれこそ愚民化だよね」
『え?』
「だって考えても見てよ」
『考えるって?』
「力くんはナショナル教育プログラム、つまり力くんだけの辞書は何語で書かれていた?」
『そりゃ我が国の言葉で』
「あれが別の言語で書かれていたら?」
『意味不明だわな』
「ってことは考えようがなくなっちゃうってことだよね」
『そうか!言語によって思考するということか!』
「大正解。“言語によって思考する”という文章を別の言語に翻訳する能力はなくても、母国語をしっかり押さえておけばその意味は分かるよね。でも母国語も第二言語も中途半端、例えば中学生レベルで止まったとしたら中学生レベルの母国語もしくは第二言語でしか思考できない。この場合第二言語というのも少し違うのかもね。だから”言語によって思考する“なんて複雑な文章は意味不明になるだろうね。何はともあれそれは知能指数が中学生レベルってこと。そんな国民が溢れたらどうなる?」
『まさに愚民だらけ。そいつらが常識を醸成するってことか』
「そう、昨今の言語教育に関する風潮は、長期的に見て国力を低下させること間違いなしだね。そもそも島国である我が国において、全国民が第二言語を習得する必要はないんだよ。母国語が分かっているだけで十分。翻訳なんかは得意な人がちゃんとやってくれたらいいんだよ。力くんだってそれで今まで生きてきたわけでしょ?」
『まぁ学校の第二言語教育で第二言語が喋れるようになるとは思えんし、先生らの発音とかも無茶苦茶なもんだったしな。喋れるようになるわけないよな』
「そう、教える側が分かっていないんだから、教わる側が分かるわけない。TTTだってそういうところは一緒かもね」
『確かに、構造としては同じだな』
「そしてTTTは横文字をやたらと使いたがる傾向にある」
『横文字ねぇ。まぁトレーニング用語ってそもそも横文字が多いからなぁ』
「意味が分かっていて使っているならそれでいいんだよ。でもTTTは多分横文字で言った方がカッコいいからって理由だけでそれを使ってる。別に我が国の言葉で言えばいいのにって思う言い回しも多いよ。我が国の言葉にしにくい言葉があるのは事実だから、それはそれでかまわないけど、カッコつける為だけに横文字にしてるなら、愚かだよね」
『またしても辛辣な』
「おかしいことにはおかしいって言っていかないとね」
『それは絶対にそう!』
「やっぱり力くんと話すとスッキリするね、ありがとう。次の戦闘、TTTは強敵だけど、なんとかなる様にサポートするから、よろしく頼むよ」
絶望感があるからこそ希望が持てるというわけか。どうもこういう小難しい話をするのは好まれない様な時代ゆえに大切な概念なのかもしれないな。よく分からんと言えばよく分からんし、そこに答えが在るのかどうかすらも分からない。ただナショナル教育プログラムでも教わったように、そこに在るのは答えじゃなくて概念。絶望と希望の連鎖は螺旋状に連なっていくんだろう。マネージャーが言っていたように、現時点での自分を信じるほかないんだ。それがどういう結果になろうとも必然ってわけか。
それにこういう小難しい話、確かに語彙が少ないと出来ないことだよな。地方Fランク大学卒の俺が言うのだから本当の話だが、現代人の多くは本当にまともに本読みすらしない。読んだとしても薄っぺらい自己啓発本。しかもそこには答えらしきものが書いてあって、どうもわかった気になる。そして虚偽の希望を抱き、絶望する。この場合の希望と絶望には連なりはなく断絶されている。だからまた新たな希望を探しに彷徨う。そう、何冊も自己啓発本を読む破目になるのだ。そして影響力があるとされる人物の発言や行動に影響を受けまくる。答えなどないことに気付けなければ、そんなものいくら読んだり聞いたりしてもこのナショナル教育プログラムの様な気付きは得られないだろう。そして、つまるところ希望を持つこともない。概念と愛の欠落とはまさに個人の能力の低下、その集合体である共同体の能力の低下、すなわち国家の弱体化ってわけだな。しかも母国語のレベルが低下すればそれはまさに負の連鎖。高水準の思考を得ることは出来なくなるというわけだ。今になって地方Fランク大学でテキトーに過ごしたことが逆にいい勉強になったとも思える。
ただ……世直しというにはまだ……
「世直しというのは革命ということかしら?」
『あ、司令、いや革命ってできるのかなって』
「あなた、ついに声を掛けられても驚かなくなったわね」
『さすがにここまで来ると作品の展開が読めてきました』
「革命ねぇ、それしかないのかなって思うこともあるわよね」
『でも非現実的にも思うんです』
「そうね、もし達成しても長持ちしない。革命とはそんなものよ。革命によってもたらされたものは、革命によって倒されるのがオチね。だから教育が必要なのよ。時間が掛かるけどね。でもそうやって我が国は歩んできた」
『だからそれを取り戻すと』
「そういうことね。本当は上の世代から良いものが引き継がれていけばそれでいいんだけど、もう上の世代の思考は軒並みやられてしまっている。だからこうなっているわけだから。教育をやり直すしかないのよ。それは緩やかな革命と言えばそうなのかもしれないけど、魂を取り戻し回帰するだけだから、革命とは言えないわね。自己啓発本を読んで目覚めた気になっているのとは大違い。崇高な行いよ」
『そこまで心の声を読み取られていたとは』
「何より、あなたの思考がまともなものへと成長して一安心。まぁこれを意識改革とか洗脳だとかと言われてしまえばそれまでだけど、ナショナル教育プログラムは答えをあなたに提示していないから、あなたが勝手に考えて辿り着いた境地ということ。だから、別に私たちが何かしたってわけでもないわ。現時点の自分に自信を持ちなさい」
『あの……』
「膳場くんのこと?」
『いや!ハイ!そうです!』
「馬鹿ね、気が付いているに決まってるでしょう。気が付かないふりをするのも諜報員にとって重要なスキルよ」
『マネージャー、かわいそうに』
「いいのよこれで。彼のモチベーションが私によるものなら、国家としては利用しない手はないわ。だから細見くんよく聞いて……」
俺は司令からとんでもない機密情報を聞かされた。これはさすがに心の声としても個々に残すことは出来ない。ナショナル教育プログラムにも反映されてはならない。しかしこれを聞かされていなければ次の戦闘は闘えなかっただろう。
俺しか知らない国家の秘密を胸に、俺は闘う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます