第三章 小さなズレ

 何事も中空に突然出現しない。問題になることも同様だ。ほんの小さなほころびが気付けば塞ぎようのない大きな穴になる様に、小さな問題は小さなうちに解決しなくてはならない。だがほとんどの場合は何とかなるだろうと放置してしまう。その後どうにもならないことを本当は知っているのに……。


 ナショナルフィットネスの利用者からすれば単なるスタッフを呼び出す館内放送も、スタッフすなわち隊員である俺たちにとっては本部隊からの命令ということらしい。


 「いよいよやな。行くで」

 「え、飯は?」

 「冷めても美味い飯やから大丈夫や。あれは命令や。トイレの次に最優先。火の始末だけしてすぐ行くで」

 「命令……」


 俺と和美は厨房の安全を確認し総本部へと向かった。


 「あれ?あのシュート使わないの?」

 「うちあれ苦手やから階段で行こ」

 「シュートの意味!」

 「あんまり変わらへんのよ!階段でも!」

 「いや何なんだよ、この国防施設!」


 総本部には司令以下、全スタッフが集っていた。


 「志賀和美、ただいま参りました!」

 「細見……」

 「細見くんは別所さんと一緒に行動して」

 「そんな遮らなくても!」

 「細かいことは気にしない、でしょ!」

 「はは……」


 しかしどう見ても司令の顔つきが最初に出逢った時と違う。ただ色気むんむんの胸元に変わりはない。和美は……うん、可愛い。凛々しい顔をしているがどこかあどけなさが残る。別所さんはキリっと美しい。


 「ナショナルチーム、全員揃いました!」


 膳場マネージャーは俺を誘ってきたときと同じような顔つきだが、さすがにちょっと緊張している感じ。


 「急に呼び出したのは他でもないわ。分かるわよね。TND教が攻勢を強めてきたの。少し灸を据える必要があると判断したわ。総員戦闘準備!」


 TND……石山さんが言ってた、食べないダイエット教……。しかし闘うったって、どうやって……。そして俺はどうすれば……。


 「細見くん、今回の闘いを良く見ておいて」

 「別所さん……」

 「今回の闘いはきっと決着が付かない」

 「どういうことですか?」

 「ここ最近ずっと同じことの繰り返しなのよ。膠着状態ってやつよね。負けているわけではないし、むしろこちらが優勢にはなるんだけど、決め手に欠けるのよ」

 「今回もそうなるんですか?」

 「十中八九、そうなると思うわ。支配人もそれは分かっているの。でも闘わずにはいられないのよ」


 俺には何が起こっているのかよく分からなかった。今出来ることは別所さんの言う通り見ておくことだけだ。


 「こちら膳場!搭乗完了」

 「石山だ!いつでも行けるぜ!」

 「長浜もオーケーです。」

 「ジョンです。皆さんがいけるならいつでも」

 「志賀和美、準備できました」


 戦闘員となる仲間が全員例の人型戦闘機に乗ったようだ。緊迫感は先ほどにも増して途轍もないことになっている。司令は胸元だけじゃなくて脚も綺麗だな。別所さんはキリッとしてどんどん美しくなっていく。和美は……そうか戦闘機に乗っているから見えないか、残念。


 「ナショナルチーム!出撃!」


 司令の声が響く。戦闘が始まる!


 「石山!冷静にな!」

 「膳場さん、分かってますよ!」

 「長浜!いつも通りお前が先陣を切るんだ!」

 「ええ、仰せの通りに。それではお先に失礼」

 「ジョン!今回の相手に関して分かることがあればすぐにシェアするように」

 「もちろんです。それが僕の仕事ですから」

 「志賀!今回の敵はお前好みかもな。好きにやれ。俺がフォローする」

 「わっかりましたー」


 いざ戦闘が始まると膳場さんがいかに凄い人かが分かる。これほど周りを見て、的確な指示を出せるものなのだろうか。石山さんはやはり力が凄いし、長浜さんは走りが速くてしかも器用に動いている。ジョンさんの無線から入る敵の情報もほぼ正確。和美も相手の弱点を良く突いているんじゃないだろうか。

 今回の敵はTND教。食べないダイエット……和美が嫌いそうな相手だ。いや膳場さんの言葉を借りれば和美好みってところか。それよりも相手はすこし押されているように見える。食べてないからか?でも信念みたいなものは伝わってくる。どうもその信念みたいなものが奴らを支えているというか、しぶとい……。


 「細見くん、よく見えているわね」

 「別所さん、またしてもあなたは俺の心を!!」

 「分かりやすい顔してるからね」

 「そんなに!?」

 「そんなに。私と指令をエロい目で見てることもお見通し。和美ちゃんのこともね」

 「あ、それは分かりやすかったかも知れません」

 「でも細見くんの言う通りよ」

 「ですよね!皆さんそれぞれ違った魅力があって!」

 「違うわよ。戦闘状況のこと。こちらの方が優勢。でも押し切れないのよ。相手がしぶとくてね。食べないダイエットがどれだけ危険か、それをいくら伝えても、でもだってだからの三D作戦。話にならないのよ」

 「でも・だって・だから!三D!言いがち!」

 「細見くんは使ったら蹴るからね」

 「でもそう言われると言いたくなるし、だってそれはだから……蹴ってください」

 「きもい。キック」

 「別所さんも美しいおみ脚で。ありがとうございます」

 「バカ言ってんじゃないわよ。ほら、もうすぐ一旦停戦よ」

 「え?終わるんですか?」

 「埒が明かないもの。これ以上は時間と体力を浪費するだけ。TND教との闘いはいつもこの調子。ピースが足りないのよ」

 「ピース……」

 「あなたにはどう見えた?この闘い?」

 「え?」

 「さ、戦闘員の皆が帰ってくるわよ、出迎えましょう」


 「ナショナルチーム、戻りました!」

 

 膳場マネージャーが帰還を告げた。


 「ご苦労様。今回も攻め切ることは出来なかったわね。ごめんなさい」

 

 司令は浮かない顔をしている。

 

 「いやー、言葉が通じてんのに通じてないっつうか、弱っちいくせにしぶといぜ」


 石山さんの力をもってしても勝てないのか?


 「こちらの動きはそんなに問題なかったように思いますが……」


 長浜さんは確かに素晴らしい活躍だった。


 「相手には動きの部分だけでない何かがあります。その何かがなんなのかが分からないと闘いきることはできません」


 ジョンさんは困っているように見える。あれほどの活躍だったのに……。


 「どう攻めていいか分からんわ。無茶苦茶していいんやったらそうするけど、それはアカンなぁ」


 和美の動きもよかった。そしてその後方支援に回った膳場さんもよかったんだ。


 「やはり、ピースが足りないのね」


 司令が口を開いた。


 「ピースを集められていないのは私の責任。みんなは今日もよく闘ってくれたわ。ありがとう。せめてものTND教の戦線は少しだけ押し返せたのだから、闘った価値はあったわ」

 「しかし、やはり決め手に欠ける闘いになりました。現場レベルではこれ以上は……」

 「膳場くん、分かっているわ。でもこれでしばらく相手も出てこないでしょうから、その間に足りなかったピースを埋め合わせましょう」

 「鋭意、ナショナル教育プログラムを遂行中です」

 「頼んだわよ。それから、しっかりやるのよ、細見くん」

 「…………俺!?」

 「当たり前でしょ?何の為に今回の戦闘を見せた思ってるのかしら?」

 「でも俺、あんな風に闘えますかね?」

 「闘うのよ。あなたはそういう運命なの。でもこれでイメージが付いたでしょ?」

 「ええ、無茶な要求をされているというイメージがね」

 「そうかしら?私には出来るようにしか思えないけどね。期待してるわよ」

 「は!柔らかいお胸が!俺の二の腕に!」

 「頑張れるわよね?」

 「頑張ります!」

 「素直でよろしい」

 「細見さん?ちょっといいかな?三十分後、僕の部屋に来てください」

 『長浜さん?』

 

 そう言えば長浜さんとはまともに挨拶すらしたこともなかったか。しかしこのタイミングで……。


 「失礼します」

 「あぁ細見さん、お疲れのところ悪かったですね」

 「いえ、今日の戦闘、その、お疲れ様でした」

 「あぁ、ありがとう。しかしモヤモヤする闘いを見せてしまいましたね」

 「いえ、そんな、俺はまだ闘えないので」

 「あなたは今回の闘いを見て、何を感じました?」

 「何をって……別所さんにも聞かれましたけど……初めてだったので何が何だか」

 「別所さんからは的確に分析していたと聞きましたよ」

 「いや的確かは分かんないですけど、皆さんそれぞれの仕事をされていたと」

 「やはり、よく分かっていますね。そうなんです、我々はきっとよくやっているんです。膳場さんの現場指揮能力はピカイチだし、石山さんはさすがの剛腕でいざという時は本当に頼りになる。ジョンさんの分析能力には頭が上がらないし、志賀さんは勢いだけに見えますが実は計算して動いている。そして私はあの人型戦闘機の扱いなら誰よりも優れているという自負があるし、このチームの機動力をアップさせたのは間違いなく私です。もちろん石山さんに力の出し方を教えてもらったし、ジョンさんにはお世話になりっぱなし。志賀さんのご飯がなければここまで動けていないし、司令やマネージャーや……それに……別所さんだって……」

 「別所さんだって?」

 「いや、失礼。素晴らしいチームなんです。でも何故か勝ちきれない。なんでだと思います?」

 「ピースが足りていないんですよね」

 「そう。あと一つ足りないとしたら、それはうまく立ち回れる戦闘員。我々はそれぞれがそれぞれの能力に特化しすぎている。その為に少しだけタイミングがずれることがあるんです。なんというか、それぞれがそれぞれの考えを理解するのに少しだけ時間が掛かるのです。これまでも様々な手法でそのタイムラグを埋める努力をしてきましたが、あと少し、本当にあと少しの、目には見えないズレが我々を苦しめているんです」

 「それを埋めるのが……」

 「足りなかったピース。細見さん、あなたを待っていたんですよ。」

 「だからですね、俺がそれかどうかは分からんでしょうが」

 「いや、きっとあなただよ、細見さん。あなたは入隊して間もなく、この癖の強い我々チーム員の誰とももめていない。」

 「入隊して間もなくもめるヤツいますか?相当な異分子でしょう、それは」

 「いいえ我々の方です、火種は。自我が強すぎて新入りに厳しく接する傾向にあったんです。だからすぐに皆辞めてしまってね。でもあなたは違う、なんだろう、厳しくしても仕方ないという気持ちにさせてくれます。ちょっと注意したら貸与した制服を返さないままトんでしまうアルバイターみたいな」

 「は!バイトの制服実家に置きっぱなし!っていうかなんですかそれ、褒めてます?」 

 「褒めつつ、呆れています」

 「あなたも素直ですね、長浜さん」

 「そう、嘘が付けないんです、みんな。情熱がありすぎてね。だから違和感があればすぐに違和感があると言ってしまう。これまで足りなかったピースを集めていた時はずっとそうだった。だから今回もそうなるだろうなと思っていたんですが……」

 「大丈夫……なんですか?俺で?」

 「戦闘機、明後日に届くんですってね。初期設定が終わったらまた僕のところに来てください。あなたで大丈夫だってことを私が証明してみせますよ、細見さん」


 なんだか長浜さんは他の隊員とは違う不思議な雰囲気をまとっている。クールすぎるのか?影があるのか?なんか読めないな……。そんなことを考えながら宿泊室エリアの廊下を歩いて自室に戻ろうとしていたら、何かにぶつかった。


 「いてっ」

 「ちょっと、ちゃんと前を見て歩いて……あ、チカラホソミくん。」 

 「ジョンさん!すみません。ちょっと考え事をしていて」

 「いえいえ、こちらこそごめん」

 「とんでもないです!あ、今日の戦闘、お疲れ様でした」

 「あ、どうも。今日はちょっと疲れたからもう寝るよ」

 「あ、はい、お休みなさい」

 「……」


 そう言えばジョンさんとはなかなか会話が続かない。まぁ今日は本当にお疲れなんだろうけど。長浜さんの雰囲気とはまた違った謎めいたオーラ……。しかし俺も疲れたな。えっと、休んでいいんだよな?八号室に戻ろう。


 「ちょっとあんた!」

 「和美!」

 「豚汁、残したらあかんで!」

 「やべ!忘れてた!」

 「冷めても美味いんやから早よ平らげて!洗いもん終わらんやんか。いつまで経っても長浜先輩の部屋から出てこぉへんし、もう待ちくたびれたわ」

 「なんか話長くなって」

 「長浜先輩は話長いひとやから気を付けや。悪い人ちゃうけど、こだわりが強いねん。それとさっき喋ってたジョンさん、あの人はただのシャイボーイやからああいうのも悪気ないみたい。あんまり気にしたらアカンで。ほら、早よ豚汁食べてしもて!後それ洗うだけやねんから」

 「その為だけに待ってたのか?」

 「その為だけ?あんたのために作ったその料理、あんたが食べへんのにどないせぇっちゅうのよ?」

 「そっか、頂きます」

 「あんたが頂きます言うてくれんの、嬉しいわぁ」

 「冷めても確かにうまい」

 「せやろ?変なもん入れてへんから素材の味が出てるんや」

 「媚薬も入ってなかったのか」

 「他の皆んなも食べるかも知れへんの入れるかいな!入れるならあんたのそのコップに……」

 「ぶはっ!!」

 「嘘嘘!入ってへんよ。話を戻すとやな、好き嫌いはあるやろけど冷めても旨味が感じられる。そんな風に作っとる。どや?料理ってオモロイやろ?」

 「確かに。そうだ、和美、その、今日はお疲れ様。」

 「なんやー、あんたそんなこと言えるタチかいな!ちょっと照れるやないの」

 「いやいや。でもすごかったよ、積極的に闘っててさ」

 「ホンマに?今日も膳場さんに助けてもろてばっかりやったわ」

 「それでも、いいコンビだったと思う」

 「膳場さんとうちが?」

 「俺にはそう見えたが」

 「せやろな。でもな、これはあんたやから言うけど……」

 「なんで俺だから言うんだ!?俺を信用した理由とは!?」

 「まぁええやないの。膳場さんとうち、ちょっとだけズレるねん。ホンマにちょっとやで?多分外から見てたら分からんと思う。でもそのズレはチリツモやからな」

 「まぁ、確かに、最後の方はちょっと……いや、闘っていない俺が言えることではないが!」

 「よぉ見てんな。だからあんたが埋め合わせをすんねんで。頼むわ、ホンマに」

 「いや、それは無理難題というものであって」

 「あんたしかおらんのや!」

 「可愛い子に言われたい台詞を可愛い子から頂いてしまった!」

 「もう!ごちゃごちゃ言うてんと早よ食べてしもて!」

 「あ、あぁ。でも洗い物なら俺、やっとくけど」

 「……あんた、ちょっと鈍いな。あんたはそういうとこを直し」

 「え?」

 「なんでもない。喋ってんと食べてしもて!」

 「いや、お前がしゃべりすぎなんだよ!」


 そんなこんなで配属初日はバタバタと過ぎ去った。冷めた豚汁を食べ終えた時にはもう二十四時を回っていた。なんでも毎日午前八時には朝礼があるらしいから、今日は早く寝ないとな。

 だがあんな戦闘を見せられちゃ、眠れるわけもない。初めて見る人型戦闘機。そして実際に知っている人がそれに乗っているという世界線。ありゃマンガやアニメの話じゃないのか。

 でも、みんなとても熱い気持ちを持っていた。そしてその熱さはきっと本物だ。チームの皆とひとりひとり喋ったがそこに嘘はなかったように思えるし、みんなが言っていることは間違っていないと思う。

 ナショナル教育プログラムのこと、ナショナルフィットネスのこと、ナショナルチームのこと……どうやら深く関わっていくんだな。そうだ、あのテキスト、もう一度見ておこう……。

 ん???白紙だったページが………なんか書いてあるぞ?


 スクワットは足首から……米とみそ汁……TND教……


 え?なに?今日の出来事?日記?ちょ、気味悪いんですけど……そうだ!別所さんだ、えっと、メッセージアプリ交換してたっけ、こんな時間に申し訳ないけど……


 「夜分失礼します。少し宜しいでしょうか」


 って、こんな時間に送って……


 「細見くん、部屋にいるの?」


 ドアの外から別所さんの声が!


 「入るわよ」

 「あ、はい」

 「まったく、こんな時間にメッセージ入れてくるなんて、何よ?」

 「あ、早速読んだんですね。でも既読が付いてない」

 「既読を付けずに読むのよ。当然のことよ」

 「いや、あの、その、このテキスト」

 「気付いちゃった?これ、細見くんが体験したことがそのまま反映されるのよ。だから変なことしたら全部反映されるから気を付けてね。例えば……良かれと思って深夜に私にメッセージを送ったこととかね」

 「え?なにそれ?」

 「そういうことよ。つまりね、個人情報は駄々洩れってこと。この部屋はさすがにプライベートな空間だから強固なセキュリティで守られているけど、ネット上はそうもいかないわ。常に監視されていると思いなさい。その上で我々は動かないといけないのよ。まさかこんなに早く私用でメッセージを送ってくるとは思わなかったけど、この通信も傍受されている可能性があるのよ。悪く思わないでね、何か送ってきた時点で注意するつもりだったから。とりあえず不用意にこういったアプリを触らないこと。それから眠れない夜に動画サイトにアクセスするのもの御法度。細見くんの行動パターンが抜き取られる可能性があるわ。もしどうしても暇ならこのDVDでも見てなさい。これはネットには繋がっていないから。じゃあね。おやすみ」

 「お、お休みなさい」


 しっかり目に説教を食らったが、寝間着姿の別所さんを見られただけでも良しとしよう。下着は着けていたのだろうか。暗くてはっきり見えなかったがきっとスッピン。それでも美しい。さてこのDVD、もともと俺にこういうタイミングで渡す算段だったんだろうな。ってことは見ろよってことか。……『我が国の歴史』……子守唄にはなりそうだな。見てみるか。



 我が国は天皇の名のもとに二千年以上の歴史を持つ世界最古の文明国である。天皇の名のもとに世界平和を目指しここまで数々の困難を乗り越えてきた。自国や同志を守る為に闘い血を流してしまったこともあるが、決してそれは我が国の独善的な判断によるものではなく、あくまでも世界平和達成の為の手段として、やむを得ない判断であったと言えよう。しかし歴史はいつも勝者によって作られる。我が国が先の大戦に敗れて以降、我が国の真の歴史は黒塗りにされ、そして嘘の歴史が作られ、それが実しやかに流布されることとなってしまった。学校の教科書、メディア、文献も執拗なまでに検閲され、真実が表に出ることがなくなった。いつの間にか検閲対策としての自主規制が一般化され、自分で自分に嘘をつく様な在り方が当然の態度となった。我が国の誇りはいずこへ。自主規制によって誇りを失った国民は自己肯定感を失う。さすれば自己否定感が醸成され、挙句自殺というあってはならぬ思想を生む。国民一人一人の自己否定感は国家の衰退を意味するのだ。それは他でもない自滅である。我が国の誇りを取り戻す為、我々ナショナルチームは天皇の名のもとに、そしてそれは紛れもなく自分の為に、血を流さずに闘うことである。そして世界を救うのだ。今この瞬間の利己的なビジネスではない。過去と未来を繋ぐための現代を共に創ろうではないか。

 自己肯定感の低さ、自己否定感が生むのは自殺であるが、そこににまで至る者は幸いにしてさほど多くはない。しかし確実に増加傾向である。そして閉塞感に苛まれているのは明らかであり、多くの場合その閉塞感の正体に気付かないまま自身の感性すらも閉ざしてしまう。違和感を違和感と思えず、美を美と感じられぬ感性の人間ばかりで構成される共同体に未来はない。むしろ共同体という意識すらないのだ。浅はかな価値観で国民が分断されていく。浅はかな判断で安かろう悪かろうのサービスばかりが横行する。いつから我が国はこんなに深みも旨味もなくなったのだろうか。

 


 ……まだ続くのこれ?前説だよな。なんかえらく激しい内容にも聞こえるが、言っていることはそんなにズレていない……のかもな。和美もなんか似た様な事言ってたし、石山さんも……。歴史か。大学受験の時にちょっと覚えたけど、特に興味なかったからな。何年にどんな戦争があったとか、忘れたなぁ。でもこの流れだとその辺も抑えて行かないといけないってことか。

 えっと、続きは…………ってこのDVD、十枚組!!なんかケースがでかいとは思ったが!しかも十枚セットで第一章という扱い。ん?第十章まであるのか。ってことは百枚ね。一枚あたりが三時間だから……三百時間!真面目に見たら一か月はかかるだろ!これは……計画的に見ろよってことだろうな。でもちょっとキツイな……。明日早いからやっぱり寝よ。

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