第8話


「きみは、もしや「夢の精霊」かい?」


は、はははははははいいい!そうです!

ななななななななんでご存知なんですか??


私は恐怖のあまりまともに返事をすることさえ出来なかった。

すると、何者かがまた話し出す。


「そう怖がるな。私は精霊だ。次の年を連れてくる精霊だ。」


そ、そうなんですか?

精霊さんなら仲間ですね。


と、言った時だった。

また誰か別の声が聞こえてくる。


「そいつの言うことを信じちゃダメだ。そいつは呪いを使って精霊を縛り付ける「精霊呪縛師」だ。私も二年前、そいつの呪いで消えてしまった。今は実体を持てないので声だけをキミに届けている。」


私は我に返った。

恐怖のあまり精霊呪縛師の言うことを鵜呑みにしかけてらいたが、そんな綺麗な話はあるはずがない。


私は逃げた。逃げて逃げて逃げまくった。

草木に足を引っかけられても、コウモリの群れに遭遇しても、止まることなく逃げ続けた。

そうしている内に、山を出ることが出来た。

どうやら、無事に帰ってこられたらしい。


精霊呪縛師はもう追ってきていないようだ。

時刻は午後十一時をすぎた頃だった。


枕はないけれど、「お役目」は果たさないといけない。


私は祈りを捧げる。どうか、どうか今年もみんなが幸せな初夢を見られるように。

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