来し方行く末繋ぐもの②
転校初日の昼休み。私、
「凰宮さん、朧月学院ってやっぱりお金持ち多いの!?」
「お金持ちのイケメンとかいたら紹介してよ〜」
「あはは……」
質問の内容は朧月のことばかり。
やっぱり朧月は
「こらこら〜。朧月の質問ばっかりだと凰宮ちゃんが可哀想でしょ。質問するんなら凰宮ちゃんについて質問してあげなよ〜」
私の心を読んだかのように言ったのは、朝の眠そうな女子生徒。
セミロングの髪の毛は手入れが行き届いていてサラサラだ。オシャレが好きなのかな。
よくみると、薄く化粧をしている。化粧は校則違反のはずだが―――、ここは見逃そう。
「ごめんね〜、凰宮ちゃん。てか凰宮ちゃんって呼んでいい?」
「全然大丈夫です。名前は、好きなように呼んでくれると嬉しい、かな」
「おけ〜。あたしは
瀧本……?瀧本しずく……?
その名前をどこかで聞いたことのあるような気がした。
「凰宮ちゃん?」
「あ、うん。しずくさん」
「うんうん!これから仲良くしようね〜」
朝から今まで四時間の授業を受け、瀧本しずく及び、このクラスについて分かったことがある。
それは、瀧本しずくはこのクラスの中では人気者の部類に入っているということ。
このクラスで女子はだいたい二つのグループに別れている。
一つ目は、瀧本しずくさんのいる、オシャレやSNSが得意なイケイケグループ。
このグループがクラスで一番目立っている。
ちなみに、今私の周りに集まっている人のほんとんどがイケイケグループの子達だ。
二つ目は、学級委員の
イケイケグループとほのぼのグループは別れてはいるけれど、仲はとてもいいらしく、一緒に遊びに行ったりしているんだとか。
もちろん、この二つのグループのどちらにも入ってない子もいる。ひとりが好きな子や、二,三人で集まっている子達がこれにあてはまる。
そして。私の憶測だが、瀧本しずくは多分、とても頭がいい。賢いというか、計算高いというか。
授業や休み時間の様子を見て何となく思っただけだけれど。
朝、しずくさんは中学受験で朧月に落ちたというようなことを言っていた。これは逆に言えば、朧月を目指せるレベルの学力を持っていたということ。中学生になってからもさらに勉強し続けているのであれば、高校受験で朧月に受かることもできるだろう。
「そういえば、凰宮ちゃんってなんかすごい名前だよね〜」
しずくさんはすぐに話題を振ってきた。
彼女は人と話すのが得意なのか、初対面なのに気まずい雰囲気にならない。
「そうかな?」
「うん!だって、黒板に名前が書かれた時全然読めなかったもん〜。後から読みを聞いてなるほどって思っちゃった」
「あー、うちも名前読めなかったわー」
「私も読めなかった!!」
しずくさんの友達みんなが、彼女に賛同している。
「私の名前って読みづらいの?」
「「うん!」」
……そんなに私の字って読みづらい?文夜姫の「文」が「あや」って読めるのを知っていれば何となくでわかると思うんだけどなぁ。
でもそう思うのは私がずっとこの名前で生きてきて、慣れているからなのかもしれない。
「でも、なんか
「うんうん。
「なにそれ〜うける〜!」
みんなが慰めてくれるかのようにフォローしてくれた。
少し、あたたかい気持ちになる。
この学校に来て良かったかも。
「てか、このクラス、大層っていうかなんて言うか〜、すごい名字の人多いよね〜」
すごい名字の人?
どういうことだろう。珍しい名字ということ?
「別に多くないでしょー。凰宮さん入れて二人くらいしかいなくね?」
「あれ〜、二人だけか〜」
どんな名字の人がいるのか気になる。
「あの、私の他にどんな名字の人がいるの?」
「あ、えっとね〜。ほら、今あそこで黒板消してる子!」
しずくさんが指を差す方向には、黒板消しを右手に持ち、次の授業に備えて黒板を消している男子生徒の姿があった。
だが、よく見ると、私の右隣の席の男子生徒のようにみえた。
「あ、あの人私の隣の席の人……」
「あぁ!そういえばそうだった!すごい名字二人が隣同士の席なのか〜〜」
私の隣の席の人が珍しい名字の人だったなんて。ますます気になる。
「あの、彼の名前は……?」
「アイツの名前はね〜、
「っ!?!?」
全身に衝撃が
つい、言葉にならない声をあげてしまう。
「鷹司……???」
「そう!すごい名字でしょ〜。雅っていう名前も男の子だったら珍しいんじゃない?」
…………?
何がなんだか分からない。
たかつかさ??本当にあの、鷹司?
「あれ〜、凰宮ちゃんどうかしたの?いきなり真剣な顔になって〜」
しずくさんに顔を覗き込まれる。
でも、この時の私は頭の中がごちゃごちゃで何も答えることができなかった。
そのまま予鈴は鳴り、午後の授業が始まった。
ずっと疑問を抱えたまま、授業も上うわの空。
一度迸った衝撃は、威力を持続し続けながら思考回路を駆け巡ってゆき、気が付けば、もう下校時刻になっていた。
「ねぇ、凰宮さん」
誰かが私の肩を軽く叩きながら名前を呼んだ。
「はい?」
振り向くと、後ろに立っていたのは学級委員の皆方栞さん。
「良かったら私と一緒に帰らない?」
「……うん。私で良かったらぜひ」
とにかく気を紛らわせたかったんだと思う。
だから、皆方さんと一緒に帰ることにした。
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