火星
「やぁ! 火星くん、こんにちは! 久しぶりだね」
「……こ、こんにちは……」
キラキラがあいさつをすると火星は小声で一生懸命あいさつを返した。
「火星さん、はじめまして。どうしてそんなにモジモジしているの?」
女性がそうたずねると、
「……は、はずかしぃ……」
火星はそう言って赤い顔をますます赤くしていった。
「火星さんが赤かったのは、とっても照れ屋さんだったからなのね」
女性は宇宙の謎が一つ解けた気がした。すると地球が青いのはいつも気分が悪いためだろうか……? そんなことをふと考えていると、キラキラがそっと耳うちしてくれた。
(うん……でもね、火星くんのエラいところはそれでもコミニュケーションをとろうとして頑張ってるところなんだよ)
たしかにはずかしがっていてもあいさつはしてくれたし、こうして会っていると会話をしたいという気持ちが伝わってくる。言葉にしなくても言葉より伝わることはあるものだ。
「ボ……ボク、なにか言おうとするといつも緊張してうまく言葉にできないんだ……」
それでも言葉にしなければ伝わらないことだってあるし言葉にして伝えたいこともある。
「火星さん、あのね、相手に伝えようとするときに緊張するのは、ちゃんと伝えたいって気持ちが強いからなの。言葉足らずだっていいの、緊張しててもOK。大切なのは伝えたい気持ちがあるってことなのよ」
だから女性は火星にそう言葉をかけた。
「……あ、ありがとう……感謝します」
火星はまだぎこちないながら、しっかりとしたお礼を口にした。
「そう! それだけきっと相手を大切に思う気持ちが強いってことだよ。すてきだね! 火星くんはすてきだよ!」
キラキラがうれしそうに星を描くように飛びまわった。火星はまた顔を赤くしたが照れ笑いした顔はもうかたくはなかった。
「ありがとう……えっと、たしかキラキラくんだったかな?」
「そう。忘れないで、ボクの名前はキラキラ。
いつもキミの心で輝いてるよ」
◇◇◇
火星をあとにして再び星空の中を飛んでいく。
「火星さんはとても思いやりのある星だったのね」
「そうだね。でもキミだってそうでしょ?」
「えっ?」
「だって火星くんの気持ちを感じてアドバイスしてあげたでしょ? ボクはそれがとってもうれしかったんだ」
そう言ってキラキラはさらにスマイルした。女性は胸の奥に忘れかけてた光が少しだけ輝いたような気がした。
「つぎはどの星へいくの?」
「う〜ん。じつは木星くんに会いにいきたいんだけど、いいかな?」
「えぇ、かまわないけど、どうして?」
「木星くんは、ちょっとむずかしいやつなんだ。火星くんよりずっとね。まぁ、会ってみればわかるよ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに太陽系で一番大きな惑星、木星の姿が目に飛び込んできた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます