傍話 彼女は私のヒーローだった
私はいつも、彼女に助けられてきた。
私が引っ張って、彼女がフォローしてくれる。どんな困難だって乗り越えられると思ってた。
だから私は、前だけを向いていた。
気付いた時にはもう手遅れで、そんな兆候すら私は見逃していた。彼女はずっと苦しんで、悩んで、そして考えていた。気付こうと思えば気付けただろう。その時の私は、彼女の事を見ていなかった。
『さようなら』
最後に見た彼女は泣いていた。
涙を流すことが出来ない彼女は、あの時、泣いていた。
それが分かる程度には、彼女を理解していたつもりだった。
知らない。
知りたくなかったと目を逸した。
これは、知ろうとしなかった私の罪。
いつか見たいつかの夢を、私が見る事はもうないだろう。
どれだけ私が助けられてきたのか、どれだけ私が救われてきたのか、どれだけ私が頼ってきたのか、彼女は知らないだろう。
私も、彼女がどれだけの不安を抱えてきたのか分からない。ただ、何時までもこのままだと、何も変わることなどないと、盲目的に考えていた。
その結果が今なのだとしたら、これは愚か者には相応しい。
誰かの為にと必死になって、大切なモノを見失った私は愚か者。変わらないなんて思っていた私は愚か者。たった一つを手放してしまった私は愚か者。特別に気付けなった私は愚か者。
取り返そうと足掻けば足掻くほど離れて行った彼女の、苦しみに気付かない私は愚か者。
だから私は目を閉じて、耳を塞いで。
助けて欲しいなんて思った事もあったけど、結局は私の問題で。
去って行った彼女を追おうとしたこともあったけど、もう一度拒絶されるのが怖くて足が竦んで諦めた。そんな私だから、また会いたいだなんて言えやしないだろう。
私が、なんてもう言わない。
私も、なんてもう言えない。
でも、誰か、どうか彼女を救って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます