傍話 彼女は私のヒーローだった



 私はいつも、彼女に助けられてきた。

 私が引っ張って、彼女がフォローしてくれる。どんな困難だって乗り越えられると思ってた。 


 だから私は、前だけを向いていた。


 気付いた時にはもう手遅れで、そんな兆候すら私は見逃していた。彼女はずっと苦しんで、悩んで、そして考えていた。気付こうと思えば気付けただろう。その時の私は、彼女の事を見ていなかった。


 

『さようなら』



 最後に見た彼女は泣いていた。

 涙を流すことが出来ない彼女は、あの時、泣いていた。

 それが分かる程度には、彼女を理解していたつもりだった。


 

 知らない。

 知りたくなかったと目を逸した。


 これは、知ろうとしなかった私の罪。

 いつか見たいつかの夢を、私が見る事はもうないだろう。


 どれだけ私が助けられてきたのか、どれだけ私が救われてきたのか、どれだけ私が頼ってきたのか、彼女は知らないだろう。

 私も、彼女がどれだけの不安を抱えてきたのか分からない。ただ、何時までもこのままだと、何も変わることなどないと、盲目的に考えていた。

 

 その結果が今なのだとしたら、これは愚か者には相応しい。


 誰かの為にと必死になって、大切なモノを見失った私は愚か者。変わらないなんて思っていた私は愚か者。たった一つを手放してしまった私は愚か者。特別に気付けなった私は愚か者。

 取り返そうと足掻けば足掻くほど離れて行った彼女の、苦しみに気付かない私は愚か者。

 

 だから私は目を閉じて、耳を塞いで。

 助けて欲しいなんて思った事もあったけど、結局は私の問題で。


 去って行った彼女を追おうとしたこともあったけど、もう一度拒絶されるのが怖くて足が竦んで諦めた。そんな私だから、また会いたいだなんて言えやしないだろう。

 

 私が、なんてもう言わない。

 私も、なんてもう言えない。

 

 でも、誰か、どうか彼女を救って。

 

 

 

 

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