第6話 ダンジョンアタック
「よし、行ってこい!」
「ギッ!」
龍の剣を携えたゴ治郎が意気揚々とダンジョンの入り口から降りて行った。少し狭そうだが、中に入ると直ぐに穴は広がる。問題ない。
辺りはまだ暗い。つい早起きしてしまって、我慢出来ずに早朝からゴ治郎を召喚してしまった。
裏庭に一人でいるのは如何にも怪しい。さっさと自室に戻ってゴ治郎の視界を共有させて貰おう。
澄んだ空気に背筋を伸ばしながら、家に入って自室へ滑り込む。よしよし、まだ母親も父親も寝ているな。家の中は足元の床の軋む音しかしない。
秘密のダンジョンアタック、スタートだ。
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ダンジョンの中は真っ暗のはずだが、ゴ治郎の視界は真昼のように明るい。流石はゴブリン、夜目がきく。
慣れているのだろう。ゴ治郎は駆けるようにダンジョンを進んで行き、さっそく一体目のゴブリンに遭遇した。
「叩け!」
「ギッ!」
ゴ治郎に不意を突かれたゴブリンは脳天を殴られて昏倒し、更に地面と龍の剣に頭を挟まれる。
ビクビクっと痙攣したあと、ゴブリンは煙となって魔石を残した。
ゴ治郎の視線は魔石に固定されている。なんだ? 魔石が欲しいのか?
「いいぞ。その魔石はお前のモノだ」
「ギギギィ!」
ゴ治郎は魔石を口に放り込み、視界が揺れる。ガリガリと魔石を噛んでいるのだ。
「ギィィィィ!!」
どうやら、ゴ治郎は興奮しているようだ。なんとなくだが、踊っている気がする。
「よし、この調子だ! どんどん行くぞ」
「ギギッ!」
ゴ治郎は走り出した。
#
窓の外はすっかり夕暮れだ。
このダンジョンはゴブリンしか出ないようで、ゴ治郎はもう30体ぐらいのゴブリンを倒している。そしてその度に魔石を食べては踊っている。モンスターにとって、魔石は御馳走なのだろうか? 食べる度に喜びが伝わってくる。
その一方、俺は疲労困憊だ。
ゴ治郎はまだまだ元気そうなのだが、俺はひどく疲れているし何より腹が減って仕方がない。どうやら、モンスターを召喚している間は俺のエネルギーが消費されるようだ。ダンジョン攻略を進めるには自分の体力をつける必要があるな。
「そろそろ俺が限界だ。戻って来い」
「ギギギッギ!」
やり切ったような声を上げ、ゴ治郎はダンジョンの入り口に向かって走り始めた。最初よりも足取りは軽く、景色が速く流れている気がする。
これがモンスターが魔石を食べた効果なのか? ゴ治郎は走り続け、俺は腹が鳴る。もう限界だ。空腹を通り越して飢餓の域だ。
朦朧とする意識の中、ふとあることに気が付いて召喚石を手のひらに乗せる。
「戻れ!」
そう言うとゴ治郎の視界は暗転し、目の前の召喚石に光が灯った。ゴ治郎は召喚モンスターなのだ。戻そうと思えばいつでも戻せる。
反省しながら部屋を出て階段を降りる。腹が減って仕方ない。今日の夕飯はなんだろう。
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