第17話:やっぱり襲われた
おはようございます。まさか馬車の中で寝るとは思わなかったんだよ・・・
普通、馬車で移動する時は馬車を停めてテントで野営じゃないの?
「これは要人警護用の馬車だからな」
もしかして、私が護衛対象?
「より正確にいうと、お前さんの使い魔な。そいつを無事に届けるのが今回の仕事だ」
そうなんだよ。なんとノアールと王都に行くだけでお金がもらえるし、ギルド貢献ポイントももらえるんだよ
ちなみに、カエルさんの討伐でなんとランクが上がったんだよ!
人生初のランクアップなんだよ!
しかも、今回の王都への旅を無事に完了するともう1段階ランクアップの予定なんだよ!
このペースだとあっという間に高ランク冒険者になっちゃうんじゃないかな?
「ランクEになると薬草採取じゃ貢献度が上がらないぞ?」
そう言えば、そんなことも言われたね。
「だいたい、本来なら野営の予定なんかなかったんだ。元々は道中の街で宿に泊まる予定だった。経路を変える前まではな・・・」
ごめんなさいなんだよ、私がダージリン領に入れないせいなんだよ・・・
「まあ、仕方がない。安全面を考えると他に方法が無い」
ぽっくっぽっくっぽっくっぽっく・・・
流石豪華な馬車だけあってお馬さんも気持ちよさそうに走ってるね。
「侯爵家の令嬢様だったんだろ?これくらいの馬車なんてしょっちゅう乗ってたんじゃないのか?」
そもそも、お貴族様のご令嬢ともなるとほとんどお屋敷から出ないんだよ。
婚約者だったアストリア様も私に会いにきていたからね。
だから、私から王都に訪ねに行ったことは一度しかないんだよ。
「一度は王都に行ったことがあるんだな?」
5歳の時にお母様に連れられてお城に行っただけだからね。
王都の街並みとかはさっぱりなんだよ。
多分すごく広い街なんだよね?
「でも、ダージリンの領都に住んでたんだろ?そこだって結構な規模の街だと思うが?」
実はダージリンの街も滅多に歩いたことがないんだよ。
基本的にはお屋敷から外に出ないからね。中庭とか裏山には訓練で毎日のように行ってたけど・・・
「本当に箱入りのお嬢様って感じなんだな?」
でも、毎日のように剣術とか魔法の訓練はしてたんだよ。
「てっきり貴族というと、ダンスとかのお稽古かと思ってたぜ・・・」
もちろん、それもやってたんだよ。読み書き計算に礼儀作法や踊りに楽器なんかも・・・
「うへぇ、思った以上に大変なんだな・・・」
そこに追加で、剣術と魔法と弓矢と索敵や罠解除なんかも習ってたんだよ。
「勇者や賢者だってそれ全部は出来ないぞ?」
10歳の時に神託の儀で天職を授かるんだけど、
その前はどんな天職を授かるかわからないから、なんでも訓練してたんだよ。
まあ、実際にはどれもこれもそこそこ程度にしかならなかったけどね。
「で、授かったのがその職業だったから追放されたのか?」
違うんだよ。
白は不吉な色だからなんだよ。
元々私は黒い髪と黒い瞳で褐色の肌だったんだよ。
「今とはまるで違うな・・・」
神託の儀の少し前に虹色の雷に打たれて、この姿になったんだよ・・・
なんでも身体中の色素が破壊されたんだって。
「普通は、雷に打たれて命を取り留めたなら喜ぶべきところだろ?」
そうだろうね。お父様もそう言ってたんだよ。
「じゃあ、なんで追放されたんだ?母親が追放したのか?」
私なんだよ。
この白い姿はダージリンに存在しちゃいけないんだよ。
だから自分自身で私のことを追放したんだよ。
ブリュンヒルデは雷に打たれて死んだんだよ。
だから、私のギルドカードを調べられるとまずいんだよ。なんせ死んだ人だからね。
「そういうことだったのか・・・」
ノアールが寄り添ってくれる。頬に擦り寄ってプルプルしている。
慰めてくれるの?
「それだけ懐いてるんだ、素性がわかるといいな」
別に、正体がわからなくてもノアールは私のお友達なんだよ!
あ、そうそう。言うのを忘れてたんだけど、馬車に乗るとよく襲われるんだよ。
「それはあれか?呪いのせいなのか?」
多分、そうだと思うけど、私には判断出来ないんだよ。
「まあ、護衛にランクDのパーティーが居るからな。大丈夫だろ?」
ランクDなら、強いよね?
ゴブリンの群れや盗賊の集団とかでも大丈夫だよね?
「まあ、その程度ならな、俺もそれなりには戦えるし・・・」
じゃ、じゃあお願いなんだよ。そろそろ何かが襲ってくるんだよ。
さっきから背中がゾワゾワしてるからね・・・
進行方向左側で、距離まではよくわからないけど・・・
「あっちだな!誰か索敵の魔法を使えるか?」
魔法使いの人が呪文を詠唱して、スカウトの人が多分遠見のスキルだと思うんだけど、
私が指示した方向を眺めてるんだよ。
「あ、あれかな?距離1200くらいのところにゴブリンを発見!」
スカウトの人が見つけたみたい。
「凄いな、俺の索敵魔法の検索範囲の倍の距離だぜ・・・」
でも、何かが居るって感じがするだけで、何が居るかはわからないんだよ。
「でも、それを避けたり、それに向かっていって先制攻撃で敵を倒したりと、いろいろ役に立ちそうだな・・・」
多分ダンジョンでボス部屋を探すのには役に立つと思うんだよ。
問題はそこに辿り着くまでに私が死んじゃうと思うんだよ・・・
「でも、荷物持ちを連れて探索するようなものでしょ?メリットの方が大きいような・・・」
私はどんな攻撃でも1撃で死んじゃうんだよ?
「って、そろそろだな、俺の索敵魔法でもばっちり感知した。距離580、ゴブリンが7匹森に隠れてる!」
結構多いんだよ・・・
「森だと炎の魔法はまずいな・・・スタン効果を狙って雷の矢を使うか・・・」
魔法使いの人が呪文を唱えて、雷の矢が4本飛んでいく。
「驚いて出てきたな、狙い撃ちだ!」
スカウトの人が高速で弓矢を連射したんだよ。上級職のレンジャーなのかな?凄いんだよ!
「魔法で4匹、弓で3匹だから、これで全滅か?」
ギルドマスターの問いかけに、魔法使いの人が震えた声で答える。
「何かいる、アンノウンだ。俺の知らない魔物、デカイぞ!」
やっぱりゴブリンだけじゃなかったんだよ・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます