第7話:名前をつけてください

まもなくトールの街というところ・・・

すでにダージリンの領地は抜けて、ウバの領地に入っている。

昼食のための休憩に立ち寄った大きな木の根元にある開けた場所。

乗合馬車で使用される休憩場所の一つらしい。


なんだか背中がゾワゾワとする。多分悪意を持った何かが近づいて来てるんだよ・・・

それが魔物なのか盗賊なのかも分からないけど、このままだと危険な気がする。

どうする?逃げる?とりあえず護衛の人にはそのことを伝えた。

「危険が迫ってる?気のせいじゃない?」

魔道士の人が索敵の魔法を使ったけどなんの反応も無い。

とりあえずは私の気のせいということになった。


じゃあ、みんなへの悪意じゃなくて私個人への悪意?

より一層不味い予感なんだよ!

街までは歩いても半日くらい。どうする?何が迫ってきてる?


ガサッ


草の陰から姿を表したのは・・・スライム!?

魔物なんだよ!護衛の人!危険が迫ってるんだよ!

「スライムなんて蹴るだけでどうにかなるでしょ?脅威でも危険でも無いわよ?」

私にとっては十分な脅威であって危険なんだよ・・・

そうか、弱すぎるから索敵魔法でも反応しなかったんだね・・・


もしかして、テイム出来るかな?

いざ、尋常に勝負なんだよ!

ところで、テイムってどうやるんだよ?

テイムのスキルを使用!って何も起こらないんだよ?スキルが発動したかも分からないし・・・


まずは自分の装備を確認。

・布の服

・ナイフ

・リュック

これだけなんだよ!ごく普通の旅人風の服に、武器というよりは採取用のナイフなんだよ・・・

もちろん、リュックも普通のリュックなんだよ・・・

そうだ、魔法。魔法はどうかな?スライムは炎の魔法に弱いんだよ!

「森の中で火の魔法なんか使ったら火事になるよ」

それなら護衛の人が脅威を解消してほしいんだよ!


「ねえ、それって襲われてるんじゃなくて懐かれてるんじゃないの?」

そうなの?テイム出来る?

「テイムって自分の血を分け与えたりするんじゃないの?詳しくは無いけど・・・」

血?痛いのは嫌なんだよ・・・


ポヨンッ!


スライムが体当たりして来たんだよ!


ベインッ!ゴロゴロ・・・ドスン・・・


うわぁぁぁん、痛いんだよ・・・!

なんかどこかの穴に落っこちたんだよ。ものすごくデジャブなんだよ・・・

「ねえ?大丈夫?今明かりを出すね!」


ポォッ


明かりがついて目の前に現れたのは・・・


みぎゃぁぁぁぁ!!!

真っ黒いスライムなんだよ!絶対強いやつなんだよ!

鑑定出来ないから、ブラックスライムかダークスライムかはわからないけど、

普通の冒険者なら即死レベルの強敵なんだよ!


じょー


足元に水溜りが出来たけど、そんなものを今は気にしてる場合じゃ無いんだよ・・・

とにかく逃げなきゃ。出口は・・・上なんだよ!落っこちて来たんだよ!

どうしよう・・・こ、攻撃されたらおしまいなんだよ・・・

私に気付いてないのか動かないんだよ・・・今のうちに逃げ・・・


しかし、回り込まれた!

動いたんだよ!目に見えない速さで!


うわぁぁぁん、私は食べても美味しく無いんだよ・・・


のそり・・・ぴと


なんか密着してるんだよ・・・これから溶かされて食べられちゃうんだよ・・・

うぷっ・・・なんか顔に・・・ぷはぁ・・・

身体中に纏わりついて・・・もしかして涙や鼻水をきれいにしてくれてる?下着も?

もしかしてテイム出来る感じ?

念の為、私の血も・・・痛いのは嫌だけどナイフで指の先っぽを・・・ちくっ!

なんかスライムが血を吸ってる感じだね。真っ黒で見えないけど・・・


ポワッ!


ぽわっと光ったね。お薬が出来た時と似た感じだったんだよ。


-名前をつけてください-


名前をつけてくださいってことはテイムできたのかな?

どうしよう・・・名前・・・名前・・・昔から苦手なんだよね・・・

あんことかじゃダメだと思うし・・・

前は頭が真っ白になって名前は自動で付けてくれたんだけど・・・

今回はダメみたいだね。

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