第8話:街に到着
とりあえず気に入った名前があったら返事をしてほしいんだよ。
まずは、ミロン。私の知ってる最強のスライムの名前なんだよ。
うーん、フルフル震えてるね・・・これは気に入らなかったみたいなんだよ。
じゃあ、エリザベート。これは最強のドラゴンの名前なんだよ。
この世界のドラゴンの名前は知らないけど、前の世界では最強だったんだよ!
黒いし似合ってると思うんだよ?
小刻みに震えてるけど、気に入った感じではないね。
前の世界での仲間の名前をつけるのがダメなのかな?
ダメもとで聞くけど、あんころ餅。黒くて甘いお菓子なんだよ。
うん、なんか怒ってる雰囲気なのが伝わったんだよ・・・
そうすると見た目から・・・黒!はダメだよね・・・リズも気に入らないみたいだったし。
この国の古い言葉で黒を意味するノアールはどうかな?
おお!なんかポヨンポヨンしてるね。気に入ったのかな?
ポワァァァ
名前をつけたらまた虹色にぽわっと光ったね。
今まで抱えきれないほど大きかったノアールが手のひらサイズになって私の肩に乗っかったんだよ。
あとはどうやって上に上がるかだね。
ノアールは出口知ってる?
うん、なんか一生懸命ジャンプして上を指してるんだよ・・・
確かにあそこから落ちてきたから、あそこが出口なのはわかるんだけど、私じゃ登れないんだよ。
他の出口はないの?
知らないみたいだね。私の肩に戻って丸くなっちゃったんだよ。
「大丈夫?怪我はない?」
護衛の人がロープで降りてきた。
どうやらこれで無事に上に上がれそうなんだよ。これで一安心だね。
護衛の人が私を抱っこして、ロープを掴む。
「無事確保したよ。引っ張って!」
ゆっくりとロープが引き上げられて無事に地上に戻れたんだよ。
「ああ、よかった。護衛中に怪我人なんか出したら報酬が減らされるからね・・・」
どうやら私を心配してくれたのには黒い裏があったようなんだよ・・・
「ましてや人死なんて出そうものなら賠償金とか違約金とか・・・とにかくよかったよ」
私の救出が成功したから馬車は再び移動するみたい。
今のちょっとした騒ぎで予定を遅れちゃったみたいだからね。
私も馬車に乗って空いた席に座る。
服の汚れはノアールが綺麗にしてくれたから問題ないんだよ。下着も・・・
「お嬢ちゃん、肩に乗ってる黒いのは?」
私がテイムしたスライムなんだよ。ノアールっていう名前なんだよ。
肩に乗ったノアールがプルプル震える。
「もしかしてさっきテイムしたの?真っ黒じゃん。変わったスライムだね」
そう、普通のスライムは中が透けて見えるほど透き通っていて、ほんのり青っぽい。
それなのに、ノアールは真っ黒。中は見えない。
「結構あちこち冒険したけど、そんなスライムは見たことない」
普通のスライムと毒のある緑色のスライム。この辺はよく見かける。
中には弱点のはずの炎を使う赤いスライムとか、麻痺を持ってる黄色いやつとか・・・
最強のピンクのとかね。
この黒いスライムがダークスライムかブラックスライムかは見た目じゃわからないけど、
どっちにしてもとても強いはず。もしかしたら私の知らない黒いスライムかも知れないけど・・・
「あんまりすごいやつだと騒ぎになるかも知れないな・・・」
それは困るんだよ。今回は平穏にのんびりと暮らしたいんだよ・・・
そうだ、ノアール。見た目を弱っちく出来ない?黒いと目立っちゃうみたいなんだよ。
ノアールが頑張ってプルプル震えてるけど変化は無い。
そりゃそうだよね、姿を変えるなら魔法とか変身のスキルとかが必要なはず。
ダークスライムは魔法で攻撃されると分裂するスライム。
ブラックスライムは聖なる力でないと倒せないスライム。
前の世界で私が出会ったスライムだ。
スライムで最強なのはピンク色のお姫様。
なんせしゃべれるし、人の姿に変身出来た。それに弾力も違った。
あれ?そういえばノアールも結構弾力があってモッチリしてるんだよ?
確かピンクのお姫様は弾力があるスライムが偉いって言ってたね。
ブラックスライムやダークスライムはこんなじゃなかったような?
そもそも、触ったら私が死んじゃうような代物だったはずなんだよ・・・
この世界は前の世界と似てるけど少し違う。
もしかすると、スライムの種類や性質も違うのかも知れない。
鑑定出来ないから、正体不明だけど絶対強いと思う。
そんなことを考えてると街に到着した。
乗合馬車に乗ってる人は簡単な確認だけで中に入れる。
噴水広場前で馬車が止まってみんなが降りる。
やっと到着なんだよ!
この街はもちろん初めてなんだけど、だいたい同じ作りになってるはずだから・・・
キョロキョロ
「お嬢ちゃん、何を探してるの?」
あ、護衛の人。冒険者ギルドはどこかと思って。
「もしかして私がスライムから助けなかった報告?」
違うんだよ。冒険者の登録と、この子を使い魔に登録したいんだよ。
普通は噴水広場の近くなんじゃないの?
「ああ、この街は少しハズレにあるの。こっち」
そう言って手を引っ張って案内してくれた。
「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!」
この挨拶はこっちの世界でも一緒だね。懐かしい感じなんだよ。
中に入ると正面が受付カウンターで、右側が依頼書の掲示板。左側が売店。
これも同じ。迷わず受付の新規登録の窓口に並ぶ。
というか誰も並んでないからお姉さんに話しかけられた。
「もしかして冒険者の登録?」
そうなんだよ!あと使い魔登録もお願いしたいんだよ。
「銀貨5枚よ」
値段も同じだね。貨幣価値なんかも変わらないのかな?
巾着袋から銀貨を5枚取り出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます