第3話:突然の悲劇

ここはブリュンヒルデお嬢様の寝室。ベッドにはお嬢様が横になっている。

私はお嬢様つきのメイドのベスタ。訓練中もそばに居ました。

虹色の雷としか表現出来ないものがお嬢様に降り注ぎ、お嬢様は意識を失いました。

あれは一体なんだったのでしょうか?

虹色に光る雷なんて見たことも聞いたこともありませんでした。


「一体何があったというのだ!」

旦那様が公務を早退して部屋の中に入ってきた。

おかえりなさいませ、旦那様。お嬢様は落雷にあわれ気を失っています。

「落雷だと!?で、ヒルデは無事なのか?」

そばに控えていた私がすぐにポーションをありったけ振りかけて司祭様を呼びました。

駆けつけた司祭様の診断では外傷は全て治療できたが、高熱で意識不明とのことです。

もう少し治療が遅れたらおそらく命を失っていたと。

現状でも高熱が下がらないため油断はできない状態とのことでした。

数日間は絶対安静で定期的に治癒魔法を施しにいらっしゃるそうです。

「ふむ、司祭にも礼を言わんとな・・・それとベスタもよくやったお前のポーションがなければダメだったかもしれん」

いえ、咄嗟のことでお嬢様を庇うことも出来ず、申し訳ありません・・・

「気に病むことは無い、雷が相手では誰も追いつくことなど出来ん。無論ワシでもだ!」


「しかし、命を取り留めたとは言え、酷い状態だな・・・」

そうなのです、あの美しかった烏の濡れ羽色のお髪も、落雷のショックのせいか真っ白に色が抜けてしまっています・・・

「いや、しかしとりあえずは命が助かったと喜ぶべきか・・・」

それすらも高熱のため予断を許さない状態ですし・・・

熱が下がるまでの間は私が付きっきりで看病いたします。

「すまない、苦労をかける・・・」

いえ、これが私の仕事ですので。



あれから数日。まだ熱が下がらないし、意識も戻らないまま。

褐色だったお嬢様の肌もだんだん色が薄くなっていく。おいたわしや・・・

濡れ布巾を取り替え身体を拭き清める。その間も無反応。

このまま目を覚まさないなんてことはないですよね?

アストリア様も一度お見舞いに来て以来姿を見せていない。

変わり果てたお嬢様の姿を見て愕然となさっていた。婚約破棄とかしないですよね?

お嬢様、目を覚ましてください。また元気な姿を見せてください。


ピクッ


今、お嬢様が動いたような?気のせいじゃ無いですよね!?

お嬢様!お嬢様!目を覚ましてください!

「ふわぁ、ベスタ、おはよう」

よかった、お嬢様が目を覚ました!

お嬢様、そのまま横になっていてください。すぐに司祭様を呼んできます!

「お腹減った・・・」

お食事の用意もしますから、しばらくそのままお待ちください!


厨房で食事の用意を頼み、司祭様と旦那様を呼びに行く。

「ヒルデが目を覚ましたのか!?」

目は覚ましましたが・・・

「どうしたというのだ!?」

お嬢様の黒曜石のような瞳の色が・・・

「髪や肌と同じというわけか・・・」

はい、血のような赤に・・・髪の色と相まってまるで白ウサギのような・・・


「不吉な色の象徴ではないか・・・なんということだ!あの子が一体何をしたというのだ!」

あまりにもひどい仕打ちです。あれほど一生懸命頑張っていたお嬢様なのに・・・

「それでも、落雷にあって命を拾ったと喜ぶべきなのであろうな・・・」

それと、その落雷ですが、妙な雷だったのですが、何かご存じでしょうか?

「虹色の雷であろう?わしも聞いたことがない・・・」

何か関係があるのでしょうか?

「3日後の神託の儀に司教様がいらっしゃいます。その時に聞いてみましょう」

そうですね。まずはお嬢様が目を覚ましたことを喜びましょう。


「おお!ヒルデ!よかった!目を覚ましたか!」

旦那様がお嬢様を抱きしめる。

「父様、痛い・・・」

抱きしめが強すぎたのかお嬢様が困っている。

「アストリア様は・・・?」

やはり気になりますよね?

「王子は忙しいらしく、なかなか来れない・・・」

旦那様も言い淀む・・・やはり婚約破棄なのでしょうか・・・

「まずは体調を整えるのを優先しなさい。3日後には神託の儀も控えている・・・」


「そうよ、まずはこれを食べて元気をつけなさい!」

奥様が食事の乗ったトレーを運んでくる。

病み上がりにもお腹に優しそうな麦粥と果物の果汁を絞ったもの。


そのようなことは我々メイドに任せてください!

「数日ぶりに娘が目を覚ましたんですもの、私も何かしたくて・・・」

トレーに乗った食事を見てお嬢様が呟く。

「母様、りんごが食べたい・・・」

りんごですね!すぐに剥いてきます!厨房に急ぐ。

料理長にりんごをいただいて、お嬢様の元へと急ぐ。

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