第2話:花嫁修行
先日、信託を受けたアストリア様は「水を統べる者」と言う、水の最上級とも言える職業を授かっていた・・・
私も、最上級とは言わないけど、黒の職業を授かればアストリア様に釣り合うだろうか?
一応、婚約者ということになってはいるが、ライバルも無数に居る。
王位継承の順位はそれほど高くはないとはいえ、王子なのだ。本来なら侯爵家の娘など相手にならない。
せめて王子の妃として恥ずかしくないようにとお稽古には励んできた。
剣や魔法だけでなく、弓矢や索敵などもそこそこ出来る。
一流でもないし、一人前でもないけど。その代わり何も得意なものは無い。
何をやってもよくてそこそこどまりなのだ。料理は壊滅だった。鍛冶も錬金術も。
おそらく、音楽や美術もダメだと思う。物を作るのに向かないらしい。
そして、今日も能力の底上げと、得意なものを探すために努力する。
各属性の魔法。
火・水・土・風・光・闇どれも同じ程度の練度。
ごく初歩の魔法が使えるだけ。威力も精度もほぼ同じ。
まんべんなく使えるとみるべきか、やはり得意が無いとみるべきか?
おそらく後者なんだと思う。
精霊魔法は一通りの属性を使えるのに、神聖魔法と暗黒魔法は全く使えなかった。
しかし、それであきらめる私じゃない。
今日は教会に行って司祭様に直接神聖魔法を習う。
一番の初歩のヒール。魔法は一応発動しているのに、かすり傷を治すこともできない。
「神への信仰心が足りないわけでもなさそうなのですが・・・」
司祭様はそう言って慰めてくれる。
毎日神様に祈りはささげている。
しかし、神様の存在を感じたことは無い。というか、普通は感じられない。
神様の存在を感じることが出来るのは、教会でも司教様とか上位の人だけだ。
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今日は斥候のお稽古。罠を発見し、罠を解除し、索敵を行う。
他にも地図を描いたり、仲間が安全に進める手助けをする。
地味だけど、実はすごく重要な役割だと思う。
罠を見つけることはどうにか出来るけど、解除することは出来ない。
どうもそういう才能が限りなくゼロに近いらしい。
しかし、索敵はちょっと見込みがあるかもしれない。
魔物かどうかは分からないけど、何かが居る気配は感じる。
それも、普通の冒険者が感じるよりもはるか遠くまで。
しかし、それが何の気配なのかはさっぱりわからない。
なんとなく、危険なものがあるという感じだけ。
本職の斥候の冒険者なら、範囲は狭いけどそれが何の気配なのかも判別できる。
人なのか魔物なのか野生の獣なのか・・・
さらに練度が高ければ、そんなあいまいなものではなく、種類や大きさまでわかるらしい。
「ここから230メートルのところにゴブリンの気配がします。おそらく上位種でしょう」
そう、こんな感じに・・・
残念ながら、私のはあっちに何か居る。それがわかるだけ。ただし範囲は数キロにも及ぶ。
うまく使えば敵に合わずに進むことができるかもしれない。
感覚をもっと研ぎ澄ませればどこに何がいるかの判別がつくかも知れない。
そう思って練習しているけど、いつまで経っても判別はできないままだった。
索敵の範囲はだいぶ広がったのに・・・
こんなので役に立てるのだろうか?
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もちろん、貴族の娘として、踊りや礼儀作法も学んでいる。
なんだかんだとしょっちゅうパーティーが開かれる。
その全てに私が参加するわけでは無いけど、子息子女のお披露目などには私も出席する。
大概は結婚相手を探すためのパーティーなので、すでに相手のいる私には意味が無いのだが・・・
まあ、そこは貴族同士の付き合いなどがあるのだろう。父様のオマケとして出席している。
そう言ったパーティーでは、会場でアストリア様と出会うこともある。
あまり仲の良い姿を見せてもパーティーの主役に申し訳ないし、
かと言って同じ会場にいながら顔を合わせないのも不仲説が噂される・・・困ったものだ。
貴族ってめんどくさい・・・
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そして、今日も自分で定めた訓練をこなしていく。
来月はいよいよ神託の儀。これまでできる限りのことはやったつもりだ。
今日は剣の訓練をしていたはず・・・
なのに、突然身体が・・・頭が真っ白に・・・
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