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「心を、反射?」


「そう。反射。たとえば、楽しいことを考えていると、わたしを見て楽しくなります。かなしいときにわたしを見ると、かなしくなります」


 いつも、そうだった。

 だから、ひとりで生きてきたし、これからもひとり。


「あなたがわたしに、たすけて、って思ったってことは。あなたが、たすけてほしいってことかなって」


「カメラさん。私、助けてほしいような何かありました?」


 また、誰かと話してる。たぶん、左耳のイヤホンで会話してるんだな。


「えいっ」


「あ」


 イヤホンを奪う。


「あれ?」


 何も聴こえない。


「特殊通信なので、聴こうとしてもだめです」


「そすか」


 イヤホン返却。


「で、何をたすけてほしいんですか?」


「奇遇ですね。私もなんです」


「え、なにが?」


「私は、ひとの心の動きを聴いたり見たりできます」


「ひとの、心の動き」


「心が感じる、嬉しい、かなしいなどの感情を把握できるんです」


「へえ」


 わたしと似たひとじゃん。


「で、私は助けを求めてません」


「んなことないですよ。だってわたしは」


「あなたは今、ちょっと嬉しそうにしている」


「え、まあ、はい」


「それがたぶん反射です。私の心は今、原因が分かってちょっと嬉しくなっている」


「そうなんですか。でも」


「ひとりで生きてきたの、大変じゃなかったですか?」


「え、いや、べつに。ずっとひとりですし」


「それが、急に私を知覚して。同じタイプだと分かって。無意識に、SOSが出てます」


「いやいや。そんなことは」

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