第3話
「交差点脇にベンチがあるので。とりあえずあそこに」
ベンチを指差す。仲間御用達、便利なベンチ。
「あ、ほんとだ。あんなところにベンチあったんだ。しらなかった」
彼女。何も考えずについてくる。さっきの交差点も、何かに追い立てられるように渡っていた。やはり、何か、彼女の心は助けを求めている。しかし、それが何に対しての助けなのかは、分からない。
彼女が、ベンチに座る。
「最近、何かありました?」
「最近?」
「ええ。最近です。人じゃないものを見たとか。たとえば、狐とか」
「いや、いつも通りですけど」
「そうですか」
狐ではない。単純に彼女自身の問題か。通信機器からも、RCCや狐に関する異状は報告されていない。
「あ、もしかして。もしかしてもしかして」
彼女がこちらに顔を近づけてくる。
「わたしを見て、何か思ったんですか?」
「ええ」
「へええ。そうなんだ。なんて思ったんですか?」
会話の主導権をとられた。まあ、いいか。心の状態さえ知れれば、それでいい。
「たすけて、って」
「へええ。たすけて、か」
彼女がふむふむと頷く。どちらが相談相手なのか、分かんなくなってくるような仕草。
「わたしですね。ええと、なんて説明すればいいかな」
彼女。言葉を選ぶしぐさ。
「ひとの心を、反射するんです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます