　ここの交差点。信号。すぐに渡らなきゃ。

　他のひとと同じように、足早に渡っていく。なんとなく、白線だけを踏みながら。

「うわっ」

　袖。

　進めなくなった。

　左腕の袖。つかまれてる。

　ひとがいる。袖をつかんでる。振りほどけるぐらいの、とらぶるにならない程度のつよさでつかまれてる。

「なんですか？」

「あなたか」

「え、なに」

　信号。はやく渡らないと。

「カメラさん。信号少し長くしてもらえますか。まだ渡りきってない」

　誰かと喋ってる。

「大丈夫です。もう少し信号、青のままですから。ゆっくり渡りましょう」

「あ、はい」

　袖から手を離される。けど、一緒に渡ってくれる。このひとは。なに。誰だろ。

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